怪我の功名 ~ 高岡福信のわらび餅
2003/7/4

阪急百貨店のお中元カタログを眺めていたカミサン、「うわっ、これ美味しそう!」と指さしたのは、わらび餅のセット。それは、高岡福信という御菓子屋さんの品物。わらび餅と言うにはお値段が張る。
「伏見町なら、いつも仕事で行くあたりだし、一度買ってきてあげる」

所番地をきちんと調べずに行ったものだから、御堂筋から堺筋まで伏見町を歩いても、それらしい店は、なし。家に戻ってGoogleで検索したら、何のことはない、いつも行く取引先の隣ではないか。伏見町じゃなく道修町、阪急のカタログはウソを書いている。

さて捲土重来、取引先に出かけたついでに、立ち寄る。間口一間ほどの小さなお店、見かけ田舎の駄菓子屋と言ってもおかしくない。ビルでL字型に囲まれた一角を占めている。寛永通寶と染め抜かれた暖簾だけが老舗風。すぐ近くに鶴屋八幡という有名和菓子店が立派な店を構えているのとは対照的だ。この「大阪最古の御菓子の老舗(創業寛永元年)」で求めた6個入りわらび餅、淀屋橋駅近くのオフィスに立ち寄って用事を済ませたのはよかったが、夕方自席に戻って気がついた。
「あっ、忘れた!1450円もしたのに!」

こんなとき、生ものは困る。取りに戻るのも大儀、仕方ないので、淀屋橋のオフィスに電話する。
「そっちのOAコーナー脇の棚に御菓子の袋を忘れてきちゃった。悪いけど、取りに行ってくれないかなあ。中身はわらび餅なんだけど、生ものだし、みんなで食べちゃって」
「いいんですか、じゃお言葉に甘えて、いいだきまーす」

数日後に立ち寄った、その淀屋橋のオフィス、私の姿を見るなり、女性職員3人が口々に、「このあいだはわらび餅、ありがとうございました!」「とっても、おいしかったです!」
 「いや、あれは忘れ物で…」とも言えず、「あそこは、大阪最古の和菓子屋さんらしいよ」「色が黒かったでしょ」とかなんとか。どうも、女性陣が二つずつ食べて、野郎どもはありつけなかった模様。行くなり、サッとコーヒーが出てくるなんて、"怪我の功名"ならぬ"わらび餅の効用"か。

わらび餅は再び仕切直し、翌週に出かけたときに再購入、ところが今度はカミサンのともだちに大好評で、子どもたちには当たらず。そして、三度目の購入で、めでたく私もいただくことに。毎週のように買うので、店の人にも顔を覚えられて、「毎度、ありがとうございます」だもの。でも、お店のおにいさん、きれいな船場のイントネーションだったなあ。

能書きに曰く、「このわらび餅は、厳撰しました蕨の根茎より精製した非常に高価な蕨粉を原料として作りましたお菓子でございます。その風味は巷の甘藷澱粉使用のものと到底較ぶべくもなく、独特なものでございます。これぞ正真正銘のわらび餅の風味をお楽しみ下さい」
 確かに、そう言うだけのことはある。甘いお菓子は滅多に食べない私だが、納得。

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