️加賀のおもしろドライブイン ~ 籔内佐斗司の世界
2003/8/13

いつも行き当たりばったりの夏休み、そのうえ今年はお盆週間に休暇が固定されている。これでは、どこへ行くにしても高いし、人出も多い。となると逆張り戦術、カミサンがインターネットで格安シティホテルを検索。即決、金沢へ向かう。

ホテルはほんとに街中、香林坊、カミサンは城下町の散策と陶器・塗物のお買いものに、オヤジと子どもは郊外のアクアリゾート施設に。昼は別行動、夜は一緒に食事。さすがに百万石城下町ともなれば、適当に目星をつけた店でも、ハズレがなく美味しい。これは、文化度が高いということかな。

さて、三日目、これも逆張り、この日がピークの帰省ラッシュと逆方向の帰宅。午前中に犀川左岸の寺町の中の妙立寺へ。別名を忍者寺と言うらしい。こりゃ確かにお寺の拝観じゃなく、忍者屋敷のガイドツアーそのもの。いろいろな仕掛けも面白いが、お客のさばき方の要領の良さに感心。もともと観光客が多いからか、先年のNHK大河ドラマ「利家とまつ」で見学者が急増し、ノウハウが確立したのか…

「加賀市って、近い?」
 「帰り道だよ、何かあるの?」
というやりとりで、寄り道することになった「うるし蔵」なる場所。

高速に入ることもあるまいと、金沢から国道8号線で福井方面へ、小松を過ぎればほとんど信号もなくスイスイ。加賀温泉あたりで渋滞になったので、恒例「けものみち」迂回となる。県道を走り、大聖寺あたりで国道305号線に。あったあった、「うるし蔵」というドライブイン。北陸自動車道の加賀インターからだと5分もかからないところ。

どんなところか知らずに行ったが、カミサンは籔内佐斗司の作品を観るのがお目当てだったよう。帰宅してから見たホームページには次のようなコメントが。

石川県加賀市にある観光施設「うるし蔵」は、籔内佐斗司作品が常時公開されている国内最大の施設です。今年が開館10周年になるのと「平櫛田中賞受賞」を記念して、全館を挙げて「籔内佐斗司展」を開催中です。
 「うるし蔵」は美術館のほかは入場無料で、名物「胡麻うどん」の和風レストラン「醐喰(ごくう)」や漆塗りのカップで香り高いコーヒーを楽しめる喫茶店「三蔵」、ショッピングセンターも備えたお楽しみどころです。この夏、北陸観光にいらっしゃる方は、是非お訪ねください。

そろそろお腹も空いてきた時間だし、まずは「醐喰」で「ごくらくうどん鍋」なるものを注文。1000円と、うどんにしちゃ高めかなと思いましたが、なかなかの充実。一人用の大きなお鍋に胡麻を練り込んだ太めの手打ちうどん、野菜がたっぷりのお出汁は、うどんの後で、ご飯を入れて雑炊にするとの説明。それで生卵も付いてくる。他に、茶碗蒸し、それとコーヒーゼリーまでセット。すっかり平らげると満腹。大阪に松葉屋という老舗うどん屋があり、そこの名物が「おじやうどん」だが、それよりもずっと美味しい。正解、正解。

食べ終わって裏手の庭に出ると、猫が、と思えば、それはブロンズ、あれっ、店の壁にはブロンズのヤモリが…。あれあれ、あっちには犬がいっぱい。並んだ犬たちの先頭は、壁にめり込んでいるぞ。かと思えば、あっちの壁からは上半身がにょきっと…。川にはブロンズのなまず、こっちの龍はオシッコを飛ばして。何だ、こりゃ。

まず食欲ということで、そんなところに目が行かなかったが、籔内佐斗司の作品の屋外展示なのだ。まあ、いろいろあること。

屋外の展示だけでも、子どもも大人も楽しめる。併設美術館には、ブロンズだけでなく檜寄木に乾漆、顔料を施した作品が並んでいる。これは仏像製作と同じ、長い歴史のある技法を継承しているもののよう。童子をテーマにした像が多いが、表情が大変に豊か、「かわいい」という言葉でもいいのだけど、とても日本人らしい顔をしている。

これも知らなかったことだが、籔内佐斗司、現代の仏師と言われているらしい。むべなるかな。童子はもちろん、鬼の表情を見ていても不思議に心が和む。私もいっぺんにファンになってしまった。

大仏開眼1250年に東大寺で展覧会があったそうだ。カミサンは見逃してしまったらしいが、そのときの写真がいい。東大寺のあちこちに配置された童子像が見事に場所とマッチ、大仏と並んだ童子なんて、まるで親子のよう。

思わぬ長居をしてしまった「うるし蔵」。美術館は入場600円、ただし茶房のコーヒー(お菓子つき)が無料だから、実質200円。そう考えると、安いものか。ホームページを見ると、「籔内佐斗司のおもしろ世界、うるし蔵、日本で一番アートなドライブインを目指して」というキャッチコピーが…

ジャンルのトップメニューに戻る。
inserted by FC2 system