堺、うまいもの巡り ~ 当たりとハズレ
2003/9/15

敬老の日、一家でカミサンの両親宅を訪ねた。カミサンの実家は中世自由都市で知られた大阪府堺市、出身高校は、あの与謝野晶子、沢口靖子を輩出した泉陽高校なので正真正銘の堺の子。市域はとても広くて、海から山まであるが、中心地はやはり、昔は堀で囲まれていた狭い地域だ。ここには古くからの店が多く、義父母と一緒に懐かしの味探検に出かける。

お昼を食べたのは古い蕎麦屋「ちくま」、堺の人間なら知らないものはいない、というくらいのお店らしい。河内(八尾)育ちの私は、そんなん、知らん。
 率直な印象、これは「もんじゃ焼き」と同じ。つまり、馴染んだ人にはたまらない味かも知れないが、そうでない人には「お好み焼き」のほうがずっと美味しい、というのに似ている。
 蕎麦のコシというものが全くない。せいろ蒸しでほかほか状態で、鶏卵を混ぜた熱い付け汁で食べる。蕎麦の香りや味は悪くないにしても、いかな麺喰い男の私も、二斤(大盛)の最後のほうは、もういいやという感じ。
 店内には関東のアクセントのお客さんもいて、そば通の間では名前の通った店なんだろう。内部も年月を感じさせる造りだ。でも、もう二度と行くことはないだろうなあ。味覚というものは、ほんと、地域差、個人差が大きいもので…

そして、夕食に求めたのは、「深清」の「あなご寿し」。ここは海岸に近い出島という辺り。庶民的な町だ。店構えも、どこにでもありそうな何の変哲もない寿司屋だが、店内はいっぱいばかりか、持ち帰りの寿司を頼む人が引きも切らない。店の前の道路の縦列駐車は全てそういう車だ。ご丁寧に、店の前に用意された椅子の脇には蚊取り線香。私たちも20分ぐらい待ったかなあ。早く食べたいけど、お腹は蕎麦でいっぱい。奈良に戻ってからとなる。

食習慣は変わりにくいものだが、それでも食べ物の嗜好は歳とともに微妙に変化する。私の場合、代表的なものが穴子。同じ長い魚なら、鰻や鱧のほうがずっと好きだし、敬遠していた。
 ところが、この数年、プリプリした穴子をグリルしたイタリア料理、挙げ句は薄造りまで食するに及んで、美味しい穴子は格別ということを知った。
 そして、この「深清」の「あなご寿し」。前に一度カミサンの実家で買ってきて食べたのが病みつきに。穴子の柔らかさ加減とすし飯が渾然一体、どこまでがネタで、どこからがご飯か。まろやかな舌触りと、甘すぎないタレ(これが甘すぎてネタの味を殺すことがいかに多いことか!)。一人前が六個、二人前ぐらいなら軽く食べてしまう。
 穴子の押し寿司もあるが、これは普通の味、ちょっと大阪にしては濃いめの味付けで、私はあまり好みではない。まあ、この「あなご寿し」のために車を走らせる価値は確かにある。

古い街には、長年生き続けてきた味があるということだろう。

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