️スローなフードにしてくれ ~ わが家の味噌づくり
2003/12/6
小学校の社会科か家庭科の時間に、先生が「家でお味噌を作っ ているおうちは、何軒ぐらいかな?」と訊いたとき、手を挙げたのは私一人だったことを、未だに覚えている。
当時は高度成長期のはじめの頃、スーパーマーケットに行けば何でも売っているという生活にそろそろ移っていく時期だった。だから、味噌もビニール袋入りのものが、もう当たり前になっていたようだ。
家では自家製の味噌しか食べたことがない私だが、カミサンもそういう家の娘だったのを、結婚してから知った。性格など、あまり似たところがない夫婦なのに、こんなところで一致とは、類いまれな偶然か。
この時期になると、カミサンは実家に味噌づくりの手伝いに出かけていたが、数年前から代替わり、わが家で作って実家に届けるというスタイルになった。
前日、カミサンが一日がかりで煮込んだ大豆、それを濾して準備が完了、土曜日、私は朝から奈良の街中の麹屋に。近鉄奈良駅に近い路地を入ったところのお店は、いかにも古色蒼然、間口は狭いが奥行きのある昔風の造り、入ったところにある土間には注文していた米麹三枚がすでに用意されている。
「寄り道しないで、真っ直ぐ帰って来ること!」「はあい」という具合で、以降の手順は写真のとおり。
(1) 買ってきた米麹三枚分、結構な量だ。
(2) 米麹のほかの材料は、かために炊いたごはん五合と大豆一升。
(3) 塩を加えて、材料をよく混ぜる。
(4) 混ざったところで、とっておいた大豆の煮汁を少しずつ加えていく。
(5) 耳たぶくらい、ちょうどよい固さになったところで、壺に味噌を移す。底に少し塩を敷いて、空気が混じらないようにボールを投げ落とす要領。
(6) 移し終えたら、上からよく押さえて、完全に空気を抜く。
(7) 表面に塩を少し撒く。
(8) 和紙を味噌の上にぴったり貼り付ける(キッチンタオルで代用)。
さあ、これで三家族分の味噌出来上がり。とは言っても、これから半年は寝かして、いただくのは来年後半となる。これぞ、究極のスローフード。昨今、健康食品ブーム、なかでも大豆食品は注目されていて、味噌づくりを始めるおうちも増えているようだ。わが家でも、オヤジの単身赴任中に、昨年、一昨年と、カミサンが講師となって、友だちが集まって味噌づくりをしたそうな。
昔いたオフィスの社員食堂の味噌汁が不味くて、一口も飲まずに残していた。定食に自動的についてくるので仕方ないが、いつももったいないなあと思いつつ、食器返却口で捨てていたことを思い出す。食堂にマイ醤油持参の人を知っているが、さすがにマイ味噌というわけにもいかないし…
私にとっては、母親の味が、カミサンの味に取って代わった訳だが、お家によって、微妙な味の違いがある。カミサンの味噌は、お米を混ぜることで、味がかなりマイルドになるようだ。不思議なもので、作りたての味噌汁も美味しいが、朝の味噌汁を夜に、夜の味噌汁を翌朝に、しばらく寝かせると味がこなれるというのも面白い。