さてもそののち ~ 350th anniversary
2003/12/20

「さてもそののち近松展」なる催しが尼崎であることを、夕刊の文化欄に載っていた記事で知る。何のことはない、仕事の関係で尼崎に出かけることが多いのだから、そのついで。ちょっと寄ってきた。

阪神尼崎は猥雑な街。駅の南側、尼信博物館までの道は、駅裏の風俗店街、それに隣接する寺町を抜ける。北側にしても、再開発が進んでいるとはいえ、大手都銀の裏はファッション何とかだったりする。オペラをよくやるアルカイックホールまでの道からしてそれだからなあ。

尼信博物館(新聞には尼新博物館と書いていたのがご愛嬌)、これは尼崎信用金庫本店の裏にあって、2階は常設のコインミュージアム、展覧会は1階と3階だ。見に来ている人はちらほら程度、昼休みの時間、ゆっくり鑑賞。照明が暗くて展示品がよく読めなかったせいもあり、命日に印刷されたという、ほんの数日前に出た図録を兼ねた「近松門左衛門 三百五十年」という本を買ってしまった。この尼信会館、1階のロビーは快適なベンチから庭を眺めることができる。休憩にはもってこい。でも、ちょっと昼寝は難しいかな。

会場に置かれたチラシ類を見ると、生誕350年の今年は、これまでに近松関係のいろいろなイベントがあったようだ。私が初めて見た文楽、11月の国立文楽劇場の近松作品集もそのひとつ。これからのもので興味を惹いたものは、「大阪学」の特別講座というもの。よく見れば、淀屋橋のオフィスと同じフロアではないか。大阪都市協会というテナントが入っているのは知っていたが、こんなこともやっているんだ。
 翌日、行ったついでにさっそく申込み。「近松、世話物の世界」4コースのうち、Aコース「近松的恋愛…その恋愛観」なる講座、申込みが締切日だったのに、定員50名に余裕のもよう。5回短期集中で、講師陣は大学教授、講談師、歌人とさまざま、面白そう。

さらにもうひとつのチラシ、12/20に大阪市立大学で、レクチュアを兼ねた公演(曽根崎心中・天神の森の段)があるとのこと、しかも無料。奇しくも、そこは長男のセンター試験の会場なので、下見と称して誘ってみる。次男には人形劇を見に行こうよなんて(嘘じゃないけど、どう見ても子供向きじゃない)。カミサンは高校生のころに鑑賞教室で観たことがあるらしく、こちらは乗り気。かくして家族四人、慣れない天王寺の乗換でモタモタしたながらJR阪和線に。
 まあ、阪和線に乗っている高校生のレベルの低いこと。車内で飲むわ喰うわ、会話の内容もバカまる出し。まさか、大学生ではないと思うけど、どこの学校なのか。

杉本町の駅前の大阪市立大学、えらく立派な建物ができているのにびっくり。図書館などの文化施設だけでビル一棟、その10階が今日の会場だった。
 出演者は竹本津駒太夫、鶴澤清介、桐竹勘十郎、吉田玉女ほかとなっていて、聞くところによれば若手のホープたちらしい(と言っても、私と同年配)。予想どおり、曽根崎心中の上演は最後で、講演、シンポジウムが先立つ。2004年に開講する「上方文化講座」の開設記念のイベントだから仕方ない。太夫、三味線、人形遣いの三氏の話は、文楽の基礎を面白く説明するもので、私たち素人にはちょうどいい。そのあとのシンポジウムは冗漫かな。
 簡素な舞台で演じられる曽根崎心中、天神の森はなかなか見応えがあった。人形の動き、人形遣いの手の動きも前の席なのでよく判る。三人で動かすことは、とっても大変そう。

さて、次は、またまた仕事のついで、JR尼崎からほど近い近松記念館に行ってみるか。

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