️よみがえる腕時計 ~ おばちゃんは、すごい!
2004/1/11

携帯電話を持っていると、わざわざ腕時計をするのがおっくうになる。とは言え、チラッと時刻を盗み見するには、やはり腕時計は欠かせない。人と話しているときに携帯電話を取り出して時刻確認というわけにはいかないし…

ここ何年か使ってるのは、カシオのぺラという薄型の時計(写真1)。とても軽くて、身につけているのを忘れそう。心斎橋OPAの時計屋さんで買ったもの。「変わった時計ですね。おしゃれですね」なんて言われると、「これ、いくらだと思う?5000円!」と、安さを自慢するのがいかにも大阪人だ。

たまには、気分を変えてということで、東京単身時代に買った世田谷美術館オリジナルの時計を出してみたら、あまり使っていないのに電池切れ(写真2)。身に着けていなくても時計は動いているから、当然と言えば当然。秒針についた猫がぐるぐる回る遊びモードの時計なので、会社にしていくことはあまりないし。

ともかく、電池を替えなくっちゃと、「有効期限:店がつぶれるまで」という電池交換サービス券(500円)をもらっていた船場センタービルの時計屋さんに。「20分ほど待ってもらわないと…」という返事に、「じゃ、いいですわ」とパス。お昼ご飯の前に持ち込めばよかったかなあ。

二年あまりの東京勤務の間に、大阪の本社は新しいビルに移転、古色蒼然としていた建物から様変わり。でも、以前と変わらないものも、ある。社内の売店もそのひとつ。散髪屋さん、写真屋さん、靴屋さん、時計屋さん…。「本社移転になったら、店じまいですわ」とか言っていたのに、どっこい健在だ。「そう、会社に戻って売店の時計屋さんに頼むか」と、さっそく持ち込んだら、あっさり交換完了。

「これは、やりやすかったから、700円、やりにくいものだと、もうちょっといただきますけど」
 「あ、そうそう、余所の時計屋さんで、電池交換は無理と言われた時計があるんだけど、見てもらえるかなあ」
 「持ってきてください。やってみますよ」

翌日、さっそく持ち込んだのが、山登りで重宝していた磁石付きの時計(写真3)。キャセイパシフィック航空の機内販売で購入したものだ。パカッと時計を跳ね上げたらオイルコンパスが現れるという二重構造(写真4)です。時計裏蓋の切り込みの位置が微妙で、前に持ち込んだ時計屋さんがギブアップしたという代物です。粗大ゴミに出すしかないかと思いつつ、引き出しの奥に眠っていました。

「かくかく、しかじか、そんなことなんだけど、見てもらえますか」とお願いしたら、20分後、「出来ましたよ」と電話がかかってきた。
 「すごいなあ。もうあかんもんやと思てたのに」
 「ちょっと難しかったけど、おばさんであかんかったら、おばさんのせんせとこに持ちこもと思てたん。開けるとき壊してしもたら、弁償しよ思てやったんよ」
 「ほっほっほ、これで山登りにまた使えるわ。で、1000円でええの。安いなあ」
 「娘のころから、ここに長いことお世話になってるんやし、身内やもん。いまどき、手間がかかって、潰してしまいそうな修理、いやがる店、多いけど」

さすが、浪速女の心意気、だけじゃなく、技術も確か。昨今、安売り全盛で、街の時計屋さんにしても、ただ売るだけのような店が増えているみたいだ。時計を使う側にしても、ロレックスあたりなら別にしても、何となく消耗品感覚だし…。そうなってくると技術立国日本もあやしくなってくる。ともあれ、おばちゃんがいる限り、愛用の時計の電池交換は安泰だ。

それにしても、娘のころからとは恐れ入る。確かに、私がまだ新入職員のころからおばちゃん(?)はいたような。ぺーぺーの職員から役員まで、社内の売店のおっちゃん、おばちゃんはたくさんの社員を見ているし、若いころと今なんて比較もできるんだろうなあ。下手すると、人事部長よりもずっと的確な人物評価が出来たりして…

この話、うちに帰ってカミサンにしたら、いっぱい出て来た電池切れの時計(写真5)。それも二つや三つじゃない。どれも近くの時計屋さんで、「ウチでは出来ないので…」となったものらしい。
 「ほな、会社の時計屋のおばちゃんに頼んでみるわ。毎日ひとつずつ持ち込んで」

かくして、おばちゃんの挑戦は続く…

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