明るい暗峠(くらがりとうげ) ~ 国道308号線を歩く
2004/1/12

今年最初の三連休、初日はお見舞い、二日目は仕事+α、そして三日目。センター試験を間近に控えた長男は仕方ないにしても、マンガやゲームで、ちょっと運動不足気味の次男、「歩きに行こうよ」なんて誘っても、「いやだ」とにべもない。オヤジの趣味を押しつけるのもよくないが、小学五年生、距離を置きたがるのは反抗期かな。

年明け早々、よくないことが重なって、気分も今ひとつ。「行ってきたら」と、カミサンの暖かいお言葉。「それじゃ」と正午近くになってから出かける。遠くに行ける時刻じゃないし、暗峠越えの奈良街道を歩いてみることに。

ここは、古くから踏まれた浪速と大和を結ぶ最短の道、遣唐使もここを通った。大阪側の山の麓の小学校だったから、そんなことを社会科の授業で聴いたことがある。でも、山登りを長くしているのに、この路は歩いたことがない。車も通行する峠、中部山岳などに目が行っていた頃には山歩きの対象にもならなかった。

スタートは近鉄奈良線の枚岡駅。駅の前は枚岡神社、そうか今日は成人式、初詣にしちゃ遅いが、新成人のお詣りもあるのだろう。パンパンと手を叩いて私も厄払い。
 山麓に広がる枚岡公園は大阪では屈指の桜の名所、冬枯れの木立の間から大阪平野が一望。こんなにいいお天気、次男も来ればいいのに。
 公園のまわり、「マムシ注意」の立札はよくあるが、「イノブタ注意」にはびっくり。そんなの、いるの。

公園を抜けると、いよいよ山越えの道に入る。ずっとコンクリート舗装の道なのに、何とも急。いちおう国道なので車も通れるが、4WDとまでは行かないにしてもローギアでないと無理だろう。

さりげなく道ばたに芭蕉の句碑があるのも、古い道だけに、それらしい。芭蕉が死の直前に奈良から大阪に暗峠を越えたとのことだ。「菊の香に くらがり登る 節句かな」、これが重陽の節句のとき、それからひと月あまりで没することに。この険しい峠道を歩いて日もおかずに身罷るとは、今どきのことを思えばかえって幸せなことかも。

登り、暗峠までは2時間弱というところだろうか。先週の山歩きで膝の痛みを感じたので恐る恐る、何ともないかと確かめながらのハイキングになる。全行程が舗装道とは承知の上、平地じゃ判らない膝への負担を気にしつつ登っていく。でも、問題は下りだ。

慈光寺への道を左に分け、弘法堂で一休み。昔は喉を潤す清水だったにしても今の水質検査では飲用不適とか。峠に近づくと傾斜もゆるくなり、こんな山の中に田んぼが出現する。暗峠は標高455m、名前のイメージとは違って明るく開けた峠という感じ。往時はうっそうとした木立の中だったのか。それは千年以上も前のことなので知る由もない。

府県境の暗峠のところだけが昔ながらの石畳になっている。ほんの数十メートルぐらいだが、古い峠道の面影が残っている。府県境から少し奈良寄りには信貴生駒スカイラインという有料道路が走っており、暗峠越えの道はその下を潜る。この峠道で何人か遭遇したマウンテンバイクのおじいさん、一方でオートバイクの若者、果たして、これでいいのだろうかと思ってしまう私。若者よ、体を鍛えておけ。

峠を越せば、そこは奈良。しかし、平城宮までの間にはもう一山ある。矢田丘陵という竜田川と富雄川の間の丘陵地帯。もっとも、近鉄生駒線(昔の信貴生駒電鉄)が走っているのは、手前の竜田川沿いなので1時間ちょっとの下りで、南生駒駅に着く。
 この狭い道が国道308号、道脇に逆三角形の「308」の表示があるから間違いない。まあ歴史的には奈良時代からの由緒正しき国道だけど、現代のマイカーでは対向もままならない山道同然。暗峠の奈良側わずかの部分だけが国道らしい広さだが、それだけ。そもそも、この道に車を乗り入れるには、入口がわかりづらい。したがって、ここを走るのは地元の人か酷道マニアぐらいだ。変な道が奈良にはいっぱいある。

なお、膝の調子は問題なし。一気に下らず、休憩をとりながらが、下りていくのがよいようで…

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