️近松、世話物の世界 ~ 灯台もと暗し
2004/1/27

日中、仕事で外出したとき、途中でよく立ち寄る淀屋橋のサテライトオフィス、その同じビルに大阪都市協会なるものがあるのを知ったのは、よそでもらった一枚のチラシからだ。「大阪学講座」のひとつ、「近松、世話物の世界」(大阪市文学センターソフト事業)というのが、それ。なあんだ、ビルのフロアまで同じじゃないか。

近松門左衛門は昨年生誕350年を迎え、いろいろな催しがあったようだが、新年早々、近場で面白そうな教養講座。4つのコースに分かれていて、そのテーマは次のようなもの。

(A) 近松的恋愛……その恋愛観
 (B) 近松と元禄大坂……その人と街
 (C) モダン近松…… 甦る近松の世界
 (D) 近松劇の魅惑……虚実皮膜の近松演劇論

いずれも、興味を惹くが、会社帰りに寄れる時間帯のものは、AとDのふたつ。とりあえずAコースに申し込んだ。午後7時~8時30分の講義が5回で3500円というのはかなりお安い。

短期集中なので、会社を早く抜け出すことが多くなり、ちょっと気のひけるところではある。40人程度の受講者は予想どおり平均年齢はかなり高そう。中に若い人もいるので、私が平均ぐらいかな。おばさまが圧倒的で、おじさまはリタイアしたような年齢層だ。

講師陣は、なかなか多彩。大学の先生が3人で、この方たちもちょっとユニークだ。

以下、聴きに行った4回の講義の感想。

1/13 「恋の手本『曾根崎心中』」 荻田清(梅花女子大学教授)

この方、いわゆる教授というイメージじゃない。野性的な風貌だ。汗をかきかき熱心な講義。

「曾根崎心中」は、その単純化のゆえに、普遍性を持つことができたのであり、傑作の所以であるという論旨。省略と虚実の混交に天才近松の面目躍如ということかな。現代の女子大生にも一番受け容れられる作品とのとの。ただ、それは、短くて読むのに苦労がないという、別の理由もあるようで…

1/15 「心中の比較文学論」 堀江珠喜(大阪府立大学教授)

真っ赤なスーツ、人をそらさない語り口、教授というよりも上方タレントのノリだ。最近の大学は面白そう。女性論のような本を何冊か出されているようだ。

比較文学論の立場から近松を見るということで、対置された西洋の事例、「ロミオとジュリエット」、「トリスタンとイゾルデ」、「うたかたの恋」など、映画やバレエの映像を見せながら解説されるのだが、私にとって新しい発見はなかった。

1/20 「講釈・近松の女たち」 旭堂小南陵(講談師)

一時間半の講義を、資料なしでというのは、ちょっと辛いものが。物語ならともかく、講義なら全体のパースペクティブを示した上で進めてほしかったような。

もともと近松は講釈師であり、その道でも才能があった人とのこと。歌舞伎作者を経て人形浄瑠璃に移ったのは、作者の手を離れ、役者に全てを委ねてしまう歌舞伎には飽き足りなかったからだとの説。自分の表現したいものが歪められることが耐え難い、それは、わかるような気がする。

1/22 「近松・元禄の色と愛」 佐伯順子(同志社大学教授)

「色」「恋」は遊女の世界にしかなく、地女の世界の「情」、その違いは画然としたものとのこと。とてもよくわかる話だった。

この方のお話、引用したテキストを音読するときは問題ないのに、自分の言葉での説明になると語尾の助詞のところに変にストレスがあり、ちょっと耳ざわり。ご本人は気づいていらっしゃらないかも知れないが、近松を語る先生の、声に出す日本語の響きが美しくないのは残念なことだ。

1/27 「歌でよむ近松的恋愛」 彦坂美喜子(歌人)

最終回は仕事の都合で出席できず。残念。

世界無形遺産に認定されたこともあり、文楽、近松への関心が高まっているようだが、先日訪れた尼崎の近松記念館は淋しいものだった。
 仕事の合間に立ち寄ってみたら、入口は閉じられていて、勝手口に回り声をかけると、ややあって、おばちゃんが登場。展示室は真っ暗で、スリッパに履き替えて上がると、おばちゃんが電気をつけてくれる。展示品を眺めていたら、おばちゃんが、これはこうこうで、とガイドしてくれるという珍しい経験。200円。隣の廣濟寺の近松の墓にも寄ってみたが、訪れる人も少ないようだ。

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