️やぶこぎ御破裂山 ~ 聖林寺から談山神社へ
2004/11/28

変な名前の山だ、御破裂山(ごはれつざん、607m)。紅葉で名高い談山(たんざん)神社の裏山になる。ここには藤原鎌足の墓があるらしい。今年の天候不順のせいか紅葉は遅く、師走の声を聞くころになって、ようやく見頃という感じ。ならばと、思い立って出かける。

土曜日の様子では、日曜日もお天気はよさそう。11月最後の日曜日、ちょっとしたハイキング程度の山登り…のはずだった。

談山神社へは、桜井駅から臨時バスが何本も出ているが、それじゃ山登りにならない。桜井駅から歩いて山越えで談山神社を目指す。
 登山地図のカバーするエリアじゃないので、昔の25000分の1の地図を引っぱり出す。昭和52年のもの、と言うことは30年ほど前、田舎のことだから大きな変化はないだろうけど。

地図を仔細に読めば、桜井駅から南に旧街道や集落をつなぐ道を辿っていくと、交通量の多い県道はほとんど歩かなくて済む。聖林寺に立ち寄って、横柿に向かい、そこから沢沿いの道に入り、いくつかの社を経て御破裂山に至るだろうと推測。地図上では、奥の社で歩道の表示は消えているが、そこから先も踏み跡ぐらいあるだろう。山頂までたかだか1km、道がなくてもこの季節、藪もうすくなっているし、何とでもなると踏んで、勇躍わが家を出発。

桜井駅から南へ、商店街は日曜の朝でシヤッターは閉まっている。この道がやはり旧街道だった。川沿いに県道と並行して多武峰(とうのみね)へ向かう。途中、ちょっと脇に逸れたところが聖林寺(しょうりんじ)。中国の武道で有名な寺ではないし、アメリカのハリウッドでもない。ここには、国宝の十一面観音がある。ちょうど午前9時、山門を入ると拝観受付のおばさんは境内の箒がけの最中、私が最初の参拝客かな。

静かなお寺で、国宝と一対一で向きあうという贅沢さ。早起きは三文の得。聖林寺は少し山手にあるので、本堂から奈良盆地の眺めがいい。裏の山が小倉山とか。万葉集に詠まれたのは京都だと思っていたが、どうもこちらのようらしい。平安遷都のあと、京都にも同じ地名をつけたのだそうな。

夕されば 小倉の山に 鳴く鹿は 今宵は鳴かず いねにけらしも

さて、いよいよ山登りと靴を履いていたら、先のおばさんに「どちらへ」と尋ねられた。
「談山神社まで歩いて、そこから吉野か明日香に抜けるつもりです。今井谷から御破裂山を越えて」という返事に、びっくりした様子。おばさん、そんな道は知らないとのこと。そりゃそうだ。地図にもない道だもの。
「このお寺の裏山の向こうが今井谷ですけど、今は奈良県最大の産廃処理場になっているんですよ。山の中に道が通って目端の利く業者が谷ごと買い占めたんですよ。お金をいっぱいバラ撒いたみたい。風向きによっては臭いがここまで来るんです。奈良県は世界遺産がいくつもあって、観光しか売り物がないのに、なんでそんな施設を認可したのか、知事に抗議したんです」
 へえー、そんな風になっているんだ。確かに歩き出すと大きな体育館のような建物とトラックが何台も駐車出来る運動場のような場所がある。そこで廃棄物を降ろすのか、あるいはおばさんの話にあったように、他府県から持ち込んだ廃棄物を積み替えるのか…

産廃処理場はひとつ隣の谷のようだ。地図のとおり、道の終わりは山中の淋しい社、祠にもどこにも名前が書かれていない。境内に木で作られた斧、鎌、鋸などがぶら下がっている。きっと、このあたりの杣人の鎮守なのだろう。

さて、そこからは、予想どおりの藪漕ぎ。と言っても山仕事の人が通ることもあるのだろう、踏み跡らしきものが見え隠れする。しかし、高度を上げるにつれて、だんだん厳しい状況に。踏み跡は消え、倒木と茨で行く手を遮られ悪戦苦闘。手袋を忘れたので露出部分はひっかき傷だらけ。急な斜面をひたすら上を目指してガサゴソ、我ながら酔狂なこと。まあ、昔やった越美国境の藪漕ぎなんぞに比べればママゴトみたいなものだけど。

一時間あまりの藪漕ぎだっただろう。稜線に出て少し歩きやすくなったかなと思ったら、向こうの方から人声が。そう、そこは御破裂山、道に出たところには真新しい墓石があった。平成16年建立の藤原家の墓というのは何だか妙だ。ここは、談山神社から登り20分で到達する展望台にもなっている。確かに、盆地の大和三山が見渡せる。その遊歩道を神社に向かう。

なるほど、神社の周りは紅葉真っ盛り。山の上は全然なのに、ここだけ赤や黄色に染まっている。見事なものだ。ここに来るのは何度目かな。小学生のときの林間学舎がここ。神社の向かい側の旅館に泊まったのかなあ。十三重塔の前でラジオ体操したり、本堂で昼寝したりの記憶が微かに残っている。あれから何年…

新春にNHKで歴史ドラマ「大化の改新」を放映するそうだ。駅にポスターも貼られている。となれば、年が明ければ談山神社も人が溢れる(?)。ここは中臣鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿打倒の謀を巡らしたところ。裏手にはその名も談山(かたらいやま)がある。これは御破裂山から神社への途中。そこには「御相談所」という石碑が建っている。林間学舎のときにはここまで登った記憶はない。

あれっ、なんかヘン。そう、入山料500円が要るはずなのに、道のない御破裂山の北側から談山神社の境内にそのまま入ってしまったからゲートもなし、出るときに払うのもヘンだし、そのまま失礼してしまった。まあ、これも藪漕ぎごくろうさん代と、勝手な解釈。

おべんとう食べて、さて、どうしたものか。このままバスで桜井に戻ってもいいけど、それじゃつまらない。かと言って吉野方面、大和上市まで歩くのも大儀、明日香村に下ることにする。この辺も遠足やサイクリングやらで何度も来ているところだ。これは普通のハイキングコースで変な石がいっぱいの道。大は石舞台古墳、聖徳太子生誕の地と言われる橘寺には二面石、そして亀石、鬼の俎、鬼の雪隠、猿石。

亀石の隣の野菜販売の店、白菜200円、大根150円、里芋100円、思わず買ってしまう。台風の後、高値が続いた野菜も値段は安定してきたようだが、新鮮・格安となれば、荷物になるのに買ってしまう私、「大根の葉っぱは落としてちょうだい。それも持って帰るから、袋に入れてね」と。これを胡麻油で炒め、醤油で味付け、花かつおを振ると最高のお酒のおつまみ。美味しいんだから。でも、重いっ。

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