おおこわ! ~ 「キャッシュカードがあぶない」
2005/1/15

「キャッシュカードは、メチャクチャあぶないみたいだよ。これ読んだら、びっくりするよ」と、上司から新刊書をお借りした。あっと言う間に読み終えられたとか。

ふむふむ、この本は、最近書店の店頭に平積みしているなあ。著者の柳田邦男氏、「マッハの恐怖」など、失敗とリスクに関わるノンフィクション著作で名高い人、この人の本を読むのは初めて。

柳田氏の知人が偽造カードの被害に遭い、銀行預金3200万円を奪われたことがきっかけで、キャッシュカードがらみの金融犯罪についての調査を開始、その結果、あきれるような実態が…。

キャッシュカードのセキュリティの脆弱さ、IT技術を駆使した犯罪の高度化、警察、銀行などの対応の遅さ・拙さ、法制の不備、個人(預金者)がさらされているリスクの大きさ等々。曰く、「銀行は知らん顔で、警察は役立たずの現実。あなたのカードが狙われている!」

「スキミング」と呼ばれるカード情報の読取り、あるいは、超小型カメラと無線による盗み見になどにより、暗証番号の情報を盗む。それさえあれば、情報を転写した偽造カードでATMからさっさと出金、同じ銀行のカードであれば名前のエンボスが違っていてもATMをパスするという。被害者にとっては、カードを物理的に盗られたわけではないから、気づいたときには、銀行の預金はゼロ(ときにはローンの借り越しまで)という事態。空恐ろしい話だ。

代表的な手口は、ゴルフ場のロッカーに密かにカメラを設置し、4桁暗証番号を無線で駐車中の車に飛ばす。その番号でロッカーを開けキャッシュカードを抜いてATMに急行、大概の場合は一致する暗証番号で最大引出額を出金。そして、ご丁寧にカードをロッカーに戻すという寸法。これをハーフ2時間の間に済ませ、別途製作した偽造カードで翌日から毎日、残高ゼロになるまで頂戴するというもの。

まあ確かに、今どき4桁数字の暗証番号なんて、時代遅れも甚だしいものかも。もともとハッキングという危険と裏腹のインターネットのほうが安全対策が進んでいる。ATMのよりどころは、専用回線でクローズドのネットワークということだが、それも回線に細工すれば何とかなるし、カメラやETCのような遠隔非接触の情報読み取り技術を使えば危ういものだ。

昨年、『文藝春秋』に掲載されたレポートを元に加筆出版された本のようだが、雑誌掲載時から大きな反響を呼んだとか。至極もっともな内容で、全く著者の言うとおり。銀行はこれまで犯罪被害の実態について口をつぐんできたようだが、最近ATMを使うたび、暗証番号を変えるようにとのメッセージが表示されるのは、被害が増加していることの証左でもあるだろう。

事ここに至っては、臭いものに蓋をするわけにもいかず、世論に押されて当局や銀行も対策を講ずるだろう。生体認証は既に東京三菱銀行で始まっているようだし、欧米並みに無過失の場合の被害額の上限設定も遠からず実施されそうだ。いったん世の中の風向きが変わったら、対応が速いのは日本の特質だし。

私の亡くなった父親は、暗証番号を書いた紙を部屋の壁に貼ったり財布の中に入れていたので、いつも「こんな危ないことはしちゃいかん」と注意していたが、「忘れてしまう」と言って、一向に改まらなかったのを思い出す。でも、今やそんな牧歌的な時代ではなくなっている。

この本を読んで、私はすぐさま三井住友銀行に。ATMで暗証番号を変更するとともに、キャッシュカードによる引き出し限度額を一日5万円に引き下げ。何しろ初期設定が300万円というのだから、こわい、こわい。UFJ銀行ではATMで暗証番号は変更できても、限度額引き下げはできないようだ。さて、郵便局はどうかな。

まあ、多額の預金があるわけじゃなし、盗られるものがないというのが、一番の安全策と言えなくもない。それに私はゴルフもしないから、ロッカーでの暗証番号盗みにも無縁だなあ。

(2005/2/27追記)

この1か月あまり、動きが急になった。ゴルフ場支配人などの犯人の逮捕。銀行によるカード安全対策強化・被害者補償の前進への気運。予想どおりと言えば、そうなんだが…

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