THE BIG ISSUE ~ ホームレスはサラリーマンのフロント
2005/2/25

日中、仕事で歩いているとき最近気になるのが、街角で立ち売りしている"THE BIG ISSUE(ビッグイシュー)"という薄い雑誌。どんなことが書いてあるのか、いっぺん買ってみようと、22号を手にした。

購入場所は地下鉄・京阪の淀屋橋駅、大阪市役所方面への出口、エスカレーターを上がった人通りの多いところ。ここのビルの1・2階にあるヴェローチェという喫茶店は、安くてロケーションもいいので、いつも大繁盛だ。

それで、『ビッグイシュー』、ホームレスを応援するという趣旨なので、どちらかと言えば左翼っぽい内容、行政批判の記事が載っているのかと思えば、さにあらず。けっこう柔らかめの内容。

特集「告白なんて怖くない-失恋のすすめ」というのは、女性誌かと間違いそう。そういえばずっとハリウッドスターが表紙を飾っていたし、今回の巻頭インタビューもメリル・ストリーブだし。

それに続く記事が「イラク、民営化された戦争 - 急成長を遂げる民間軍事企業(PMF)」、「水がくる、水がくる - インド洋大津波、被災地の子どもたち」と、Newsweek風になって、件の特集に続く。

特集のあとにはポップ・ミュージック、クッキングなどの記事、"テレビを見ない人のためのテレビ時評"というコーナーがあって、「テレ朝が切り開く『言い訳』という新ジャンル」という題でコケにしているあたり、あのマスコミとは一線を画しているようだ。

最後の記事に「帰ってきたカリスマベンダー」として、元そば屋のホームレス大川さんが"今月のひと(販売員)"として登場。職人から築き挙げた自分のそば屋が経営不振に陥り閉店、借金返済のために職人に戻りニューヨークのそば屋で働いたことも。帰国後、50歳を超えてからリストラにあい、再就職もままならず中之島でテント生活。そのとき始めたのが『ビッグイシュー』の販売で、その後東京での販売の立ち上げに尽力し、今は関西に戻り京都四条河原町交差点に立っているらしい。

淀屋橋で私が『ビッグイシュー』を購入した相手は年格好は60歳ぐらい。でも、ホームレス生活だから外見より実年齢は若いのかも知れない。
「これ一冊、200円で売って、なんぼの儲けになりますのん?」
「ワシら、90円で買うてきますんや、せやから110円ですわ」。
そうなんだ、するとカリスマベンダーの大川さんは日に200冊売るらしいから、一日2万円。ウィークデーだけ月間20日実働として40万円。立ちっぱなしの仕事できつそうではあるが、悪い実入りではなさそうだ。ただ、雑誌にも掲載されている販売員の行動規範は、いったん生活態度が崩れたホームレスの人だと、かなり厳しいものがありそう。雑誌のホームページには、次のように書かれている。

『ビッグイシュー』は英国で大成功し世界(24の国、50の都市・地域)に広がっている、ホームレスの人しか売り手になれない魅力的な雑誌のことです。ビッグイシューの使命はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく彼らの仕事をつくることにあります。
 例えば大阪の野宿生活者の約8割は働いており、過半数の人は仕事をして自立したいと思っています。『ビッグイシュー日本版』は彼らが働くことで収入を得る機会を提供します。

わずか200円といっても、他人の財布からお金を出してもらうのは大変なこと。私は仕事で取引先を訪問するとき、手土産代わりに会社で作っている月刊誌を持って行くが、もちろん無料。話題の本の紹介で構成した雑誌で、毎月の発行は20万部。お客さんには好評なのだが、さて、街頭で立ち売りしたら、どけだけの人が買ってくれるだろう。
 「ベストブック、いかがーすか」

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