加賀温泉、陶器めぐり ~ お財布、空っぽ
2005/5/4

一泊二日の家族旅行、直前に楽天トラベルで連休にしては安い旅館を予約したのはいいが、やはり安いだけのことはある。どうも温泉旅館は二極化の傾向にあるようだ。それなりの値段で内容充実、お客もいっぱいという人気旅館と、安いのはいいが内容はちょっとということろと。今回、後者にあたってしまったようで…。この時期、リーズナブル価格で満足度の高い宿を探すのは大変。

加賀温泉郷のひとつ、片山津温泉。団体旅行が盛んなころならいざ知らず、家族やグループの旅行に移ってきた世間の流れに取り残されたような感じ。会社でも毎月積立てて親睦旅行に行く所属も珍しくなった時代だ。江戸時代のお伊勢詣り以来の伝統も消えつつある。

金融機関の貸出先のうち、温泉旅館は不良債権の代表格だった。経営破綻したご当地の銀行の名前もまだ記憶に新しい。この温泉街にも営業を休止した旅館が何軒か荒れ果てた姿さらしており、侘びしさが漂う。資金かないから設備投資ができない。設備投資がないので、旅館が老朽化するし、人件費はじめコストを削減するからサービスが低下する。その結果、客足が遠のき、収益はさらに悪化する。依然、そんな悪循環のまっただ中にあるようだ。

でも、人が来ない訳ではない。到着した日に出かけた寺井町の陶器市は夕方の時間でもたいそうな人出。ここは、九谷焼の本場、会場には陶器商と食べ物屋がずらりと並んでいる。「あまり、ほしいのがないわ」と言いつつ、カミサンは値切って茶碗をひとつ。

翌日、大聖寺の石川九谷焼美術館に。公園のなかに新しそうな美術館ができている。1階が展示で、2階にはミュージアムショップ兼コーヒーショップ。朝の開館直後のせいか、とても静かでゆったりと鑑賞。色づかいによって分けられた展示室のほか、書院には九谷の器に料理を盛りつけた往時の復元展示もある。

旅館の従業員の平均年齢はたぶん60を超えていたが、こちらは20代かな。藪内佐斗司の作品を見るため再訪したうるし蔵の従業員もそんなもの。同じ、サービス業とはいえ落差が大きい。逆に言えば、旅館経営に若い感覚を導入すれば、再生の可能性もあるということか。

母の日も近いし、何か買ってあげるとの約束だったので、藪内佐斗司のブロンズかと心配でしたが、幸いこれはというものが見あたらず。ほっ。
 それではと、次に向かったのは山中温泉。ここも連休のイベントか、街中では漆器市が開かれている。しかし、いくら探しても漆器の店ばかりで、九谷焼の店はない。漆器市の警察のブースで婦警さんに聞いてみた。
「須田菁華の九谷焼を扱っているお店って、このあたりに?総湯の近くと聞いたんですけど」
「山代には菁華の焼物の店があると思いますけど…」
あっ、間違った。山中と山代ちがい。と言うことで踵を返して山代温泉に。

山代温泉の中をぐるぐると車で回り、それらしい一角に、その建物は魯山人寓居跡とか。街角の地図で須田菁華窯をようやく発見。温泉地に付きもの、ストリップ小屋の角を折れてすぐのところ。

靴を脱いで畳敷きのお店に上がる。カミサン、いろいろあって目移りしてしまう様子。あれこれ、ためつすがめつ、1時間以上。ようやく絞り込んだのが二枚の皿。そのころには、何人かいた先客も買い物を済ませ我々だけ。奥から出てきたおじさん、カミサンによれば、その人が作家の須田菁華さんらしい。店の女性は、そうすると奥さんなのかな。

「山中温泉と勘違いして、あっちに行ってしまって。ここの場所も判らず、だいぶウロウロしました」
「そんな方が時々いらっしゃるんですよ」
そうか、私だけじゃなかった。

あこがれの作者とご対面で、カミサンは興奮気味。お願いして先生と記念撮影まで。クレジットカードが使えず、手元現金はスッカラカンに。とほほ。

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