比良山系・堂満岳 ~ 喜ばしき復古
2005/5/21

5月の山登りはまだだったなあと、べつに月一ペースと決めている訳じゃないけど、やはり出かける。今回は車を使うこと罷りならぬとのカミサンのお達し。じゃ、電車で行けるところ、比良山系が浮上した。連休の終わり、びわ湖ホールから眺めた新緑の山へ。

まだ登ったことがなく、アプローチが短いところで、堂満岳 (1057m)に決定。JR湖西線の比良駅から歩いてもいいし、山麓までバスに乗ってもいい。ところが…

土曜なのに山登りの客が誰も降りないなあ、9:47に登山リ フト乗場行きのバスが出るはずなのに。狐につままれたように改札口を出たら、観光案内看板には平成16年3月で比良登山リフト・ロープウェイは廃止とあるではないか。へえーっ、そうなのか。採算がとれないんだなあ。隣の志賀駅からアクセスするびわ湖バレイスキー場には高速のゴンドラがあるし、スキー場としても押されっぱ なしだろうし…(後で調べたら、地元自治体が京阪電鉄から提案された設備運営移管を拒否した結果、廃止に至ったようだ)

まあ、バスをあてにしていた訳じゃないので、田んぼの中を堂満岳に向かってどんどん歩く。バスがあったところで、乗車時間は10分もない。国道161号とそのバイパスの湖西道路を横切り、だらだら登りを30分ほどで堂満東稜道の登山口。そこからは、ひたすらの登り。湖西線が走るあたりが標高100m、山頂まで単純な引算で950mの高度差。これは結構ある。途中、あまり眺望も得られないので、高度計つきカシオ・プロトレックの表示が変わるぐらいしか楽しみがない。

時計の表示が445mのころに、稜線上の沼、ノタノホリに出る。陰気な感じの場所、沼の中には怪しいものでも棲んでいそうな雰囲気。そこから残り標高差600m、750mに到達したら休憩をとって、後は頂上までの計算どおり。ところどころ、振り返れば琵琶湖が見える場所がある。

登山リフトやロープウェイがなくなったせいか、この季節、このお天気なのに、登山者の少ないこと。最近多い中高年初心者も見かけない。登り下りがきついし、危険箇所も皆無ではないから、当然ではあるけど。
 この辺り、冬の積雪量は半端じゃないので、登山道の要所にはレスキューポイントの標識がある。そして、ガレ場の危険度も高そう。金糞峠には、下りは青ガレの最短コースはとらず、別ルートに迂回するようにとの看板があったが、そんなことを真に受ける登山者などいない。リフト、ロープウェイを利用してやって来た人ならいざ知らず、もともとの登山者は自己責任、こんな看板は撤去するのが妥当だ。

下山路から少し脇に入った沢の隠れ滝でミネラルウォーターを補給、明日は美味しいコーヒーがいただけそう。下りも一人、ゴロゴロの岩で緊張するところもある。登りの高度計の代わりに下りはラジオをイヤフォンで聴きながら歩く。滋賀県まで来るとCBCラジオがよくはいる。ロッテ・中日のデーゲーム、ぶっちぎり首位のドラゴンズがセパ交流戦になった途端の大不調、どうなっちゃったの。イン谷口の出合山荘にたどり着いたときに、ワイルドピッチでサヨナラ負けとは、トホホ。

出発点の比良駅に戻る。ここは、いまだに駅前が田んぼです。これが、新幹線も走らせることができる高規格の鉄道の駅前です。JR湖西線になる前は、江若鉄道の路線だった。そのころ、比良に登ったのが最初だと思う。そのときには登山リフト、ロープウェイがあった。40年ぐらい前のことになる。

すると、機械力なしで登らなければならない比良山というのは、何年前に遡るのだろう。私の知らない時代だ。今日登った堂満岳から、1時間あまりで山上の八雲ヶ原の一角にたどり着く。近畿では珍しい高層湿原、ここは冬はスキー場になり、件の登山リフトとロープウェイでスキーヤーが沢山やってくるところだった。冬はゲレンデの下になる湿原もどんどん狭くなってきていたとか。

八雲ヶ原に私も知らない大昔の静けさが戻るなら、大変に喜ばしいことだ。登山リフト、ロープウェイだけでなく、八雲ヒュッテ・比良ロッジ・キャンプ場・スキー場の営業が1年前に終了・閉鎖され、遠目に見る限り、リフトやロープウェイの設備はきれいに撤去されているようだ。誰でも楽に行ける山が、登山者しか行けない山に戻る。多くの人が大自然を味わえる場所はあったほうがいいが、どこでもそうである必要はない。八雲ヶ原や武奈ヶ岳が、その品格に相応しい山登りの領域に復帰したことを喜ばずにはおれない。こんな動きが全国に波及すればいいなあ。さて、6月には湿原探索に出かけて見るか。

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