山と海、若狭まで ~ 野坂山
2006/5/4

京都から特急で1時間、でも少し遠い感じがする敦賀、大阪からJR新快速が走っていても不思議じゃないのに、それは湖西線の永原止まり。なぜなら、そこが直流区間の終わりだから。その先、北陸方面へは、特急など一部の車両しか走らせることが出来ない。同様に、湖東の北陸線も長浜から北は交流区間。つまり、琵琶湖の北部から日本海方面へは交通が分断されているのが現状だ。

敦賀の南、眺望絶佳と評判の高い野坂山を目指したのはいいが、朝早く出ても最寄りの小浜線粟野駅にたどり着くのは11時前という連絡の悪さだし、県境を越えるには特急雷鳥を使わざるを得ないというもったいなさ。近江今津までなら新快速でもほとんど時間が変わらないのに。

ローカル線を利用する以上、それも仕方ないことだが、敦賀駅に着いて、「そうだ、この手がある」と気づいたのはレンタカーならぬレンタサイクル。1時間あまりの連絡待ちをするぐらいなら、小浜線で二駅、自転車で行けば粟野駅から先の登山口まで歩かずに到達できるではないか。

駅構内の観光案内所で電動サイクルを借りようとしたら、「4時間ぐらいしか電池がもたないので、大丈夫かしら…」と、係のおねえさん。気比の松原とか、敦賀市内の観光地を巡る分なら、それで大丈夫なんだろうが、何しろ私は登山のアプローチに使うというヘンな客。

今年のGWはほんとにいい天気、自転車で狭い市街を抜けたら、田んぼの向こうに野坂山がすっきりと。敦賀市内のどこからでも望める山だ。1000mにも満たないのに、稜線近くの沢筋には雪が残っている。なんとまあ、もう5月なのに。この冬の雪が多かったせいか、日本海から押し寄せる雪雲がまともにぶつかる山だからか。

粟野駅からは車道も勾配がきつくなって、電動サイクルの御利益も程々という感じ。1時間も走っていないのに、はやバッテリーのランプが点滅、要するに充電が必要ってこと。上り坂でパワーを消費すれば4時間ももたないようだ。とにかく行けるところまでと、なんとか野坂いこいの森のキャンプ場に到達。少し先が登山口のはず。やれやれ、小浜線に乗り継ぐよりもずっと早く登山口に着いたものの、久しぶりの自転車で普段使わない太股やお尻の筋肉に堪える。まあ、下りの爽快サイクリングに期待(電池残量が心配だけど)。

地元の人たちにはよく登られている山のようだ。登山道はしっかりしているし、連休ともあって、遅い時間からの山登りなのに、私が行く山にしては登山者・下山者も多い部類かな。
 途中の敦賀の名水と言う栃の木地蔵の水場、そこから振り返れば敦賀湾に浮かぶ船の姿も認めることができる。それにしても、いい天気だなあ。

栃の木地蔵からは、沢筋を離れ尾根に取り付き、一の岳、二の岳、三の岳と連なるピークを過ぎ、野坂山のてっぺんに。当たり前のことながら、遠景で眺めたとおりの形だ。
 今は残雪とブナの新緑がちょうど交代する時期のよう。そして、道ばたにはカタクリの花がちょうど盛り。

山頂(913m)は気持ちのいい草原になっており、まさに360°の展望。ここまで来ると、小浜のほうの若狭湾、美方五湖も見える。そして圧巻は東の眺め。くっきりと残雪が残る山の連なり。あれは越美国境の山並み、能郷白山だ。その左手、ずっと向こうには、雪がたっぷり残った加賀白山。どちらも30年以上前に登った山だけど、いまだにその時のことを鮮明に覚えている不思議さ。

南の方角には琵琶湖が望めるはずだけど、そちらは霞んでいて、遠くまで確認できない。二つのうみを振り分けに見ることは叶わず。頂上の一角には避難小屋があって10人ぐらいは泊まれそう。

さて、下山。途中にルートから少し離れて、行者岩という目立った露岩がある。ロープを伝って岩の上まで登ってみる。狭いし、平らじゃないので、ごろりと横になるには危険。
 登りは電動とはいえ苦労した自転車だけど、スイッチオフで軽快に坂道を下る。駅に戻る途中、柴田氏庭園に立ち寄る。国指定名勝とか。ここには庭掃除のおじさんがいるだけで、入場料100円は門を入ったところにある木箱に。庭園の南半分はきれいに整備されているが、北半分は荒れはてているのが何ともアンバランス。書院造りの屋敷と池に築山、庭越しに野坂山を借景として取り込む設計のよう。山の呼称は、ガイドブックや駅でもらったハイキングのチラシでは野坂岳だが、この庭園での説明では野坂山、どうも地元の言い方は後者のよう。したがって、ここでの表記も野坂山という次第。

やっぱり帰りも特急雷鳥で京都まで。連休の真ん中なので自由席もガラガラだ。発車した途端に車内販売がやって来て、思わず「ビール!」。お土産に買った若狭名物「小鯛のささ漬」を開けたいところだが、そこは我慢して非常食のナッツでグイッと。暑いぐらいの一日だったから、喉ごしが格別。

この秋には敦賀まで直流化されるらしいので、姫路あたりから新快速がここまで乗り入れることになるのかな。さらには、敦賀、京都を結んだ琵琶湖環状電車が走るかも。そうなると、気軽に来られる反面、旅情は薄らいでしまいそう。

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