こどもの頃の血が騒ぐ ~ 「テツはこう乗る 鉄ちゃん気分の鉄道旅」
2007/12/20

この秋、伊勢崎に出張したときのこと。日常茶飯事となってしまったJRの人身事故でダイヤが乱れた。新幹線から乗り継いだ高崎線の列車が遅れ、仕事に間に合うのかヒヤヒヤものだった。そのとき、大宮の手前で上越新幹線に乗り換えようかと思いながら外を眺めていたら、線路に沿うように立つヘンな建物が目に入った。

あんなに線路に近くちゃ、喧しいだけだし、おまけガラス張り、なのにビルの窓際には人がいっぱいいるではないか。異様な雰囲気、なんだありゃ。

群馬から仙台に回り、帰りの東北新幹線では、またそのビルが目に入る。でも、もうそのときには知ってるぞ、あれはオープンしたばかりの鉄道博物館、あのガラス張りの壁面に群がっていたのは鉄ちゃん、鉄子たちなんだ。そりゃあここなら、次から次にいろんな列車が通るもの、最高のロケーション。

大阪にいると乗る機会もない東北新幹線で、座席ポケットにあった20周年記念「トランヴェール」特別号、周りの座席から一番きれいそうなのを確保し、写真満載のこの無料誌を悦に入って見ている私も、ほとんど鉄ちゃん。

最近読んだこの新書のキャッチコピーは、以下のようなものだ。

今日からあなたも「鉄ちゃん(テツ)」…乗りテツ、撮りテツ、収集テツ、「鉄ちゃん」たちはいったい何が楽しいのか?テツから学ぶ鉄道の楽しみ方。鉄道旅行は好きだけど、いつも目的地までボーッと乗っているだけ。きれいな車窓とおいしい駅弁で、なんとなく満足してしまっている。でも、ホントは、もっと鉄道の旅を楽しんでみたい……。そんなあなた!今からでも遅くはありません。今日から私たち「鉄ちゃん」の一員になってみませんか?まわりの視線なんて気にすることはありません。今こそ自信を持って堂々と「テツです!」とカミングアウトしましょう。そうすれば、生涯楽しめる趣味ができて、人生が豊かになります。本書は、鉄道ならぬテツ道入門――テツの先輩として、みなさんに鉄道の楽しみ方を伝授しましょう。

伝授していただかなくても、こちとら隠れテツとしては本に書いてあることは当たり前のこと、そうか、昔の男の子は誰でも汽車・電車が大好きだものなあ。オッサンになってから、気まぐれに旅行業務取扱主任者の資格を取ったときも、本屋で参考書を立ち読みしただけだったし、時刻表が読めない人間が世の中にいることを結婚するまで知らなかったぐらいだし。

もっとも、最近は鉄子も増えているようで、「チザルピーノでアルプスを越えてミラノからチューリッヒへ行ったの」なんて言われて、鉄ちゃんもタジタジ。それが「あずさ」や「しなの」と同じ振り子型電車特急のこととはすぐに判らず、この本にあるように、「鉄ちゃんがガールフレンドを持つためには、ドメスティック一辺倒を脱する必要がある」と強く感じる次第。

マニアなのに、自身を客体化して、マニアでない人にも鉄ちゃんは面白そうだなあと思わせる点で、これはとてもよく書けている本だ。もちろん、オタクに近い域に達している人には物足りない入門書だが、私のように眠っているテツ分を活性化させるには楽しい本と言える。
 ちょうど、そこそこ出張もある仕事に替わったことでもあるし、この際、鉄ちゃんに復帰してみるかな。

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