笠置山 ~ 住職は嘆く
2008/7/5

家から電車で一時間ちょっと。車でもそのぐらいの時間で着くところなのに、何と乗り換えが4回。大和西大寺、新祝園(祝園)、木津、加茂、近鉄二路線とJR二路線、最後は電車から単線の気動車に乗り継いで一駅、まあテツには堪えられない。
 それで、たどり着いたところは関西線笠置駅。ここから線路の南側にそびえる山に登ろうという算段。一時間もかからないだろう。梅雨明けを思わせるような真夏日、この高さの山登りは、それ以上歩くと熱中症の危険がある。

登山路は笠置駅周辺のハイキングコースの一つになっており、南へ柳生方面に抜けるルートもあるようだ。登山口には竹の杖が置かれていたので一本拝借、良く整備された道を小一時間で山門前、頂上一帯はお寺の境内と言うか、行場になっており入山料300円。

胎内くぐり、平等石、蟻の戸渡りと言ったお決まりのポイントが続く行場巡りは小一時間ほどのもの。スタートしてすぐに巨石の磨崖仏、弥勒菩薩ということだが、度々の火災で傷んだらしく形もはっきりしない。ところが、それに続いて現れる磨崖仏は圧巻、大きさ、鮮明さ、線の美しさ、こんな素晴らしい磨崖仏があったのか。長く山登りをしていて、これほどのものを見たことはない。しかも、こんなに家から近いところにあるなんて。

笠置寺の略記では、1300年前に東大寺の良弁(ろうべん)僧正による作との謂れらしいが、真偽のほどは詳らかではない。この山には多くの寺があったと言うが、後醍醐天皇を匿ったために時の幕府により全山灰燼となった歴史があるとのこと。

紅葉の季節にはライトアップされたりするようだが、あまり知られていないのか、普段は訪れる人は少ないようだ。線路の北側、木津川の広い河川敷は有名な川遊びのスポットになっており、私も家族で来たことがある。これからの季節、休日ともなれば、車を乗り入れてバーベキューに興じる人たちで大盛況、カヌー教室も開催されており、笠置大橋の上流、巨石群で川幅が狭まったあたりでは何艘ものカヌーが浮かぶ。このあたりは毎年のように(禁止されているが)遊泳中の水死者の出るところでもある。

年間の観光客が70万人、そのうち笠置山まで(徒歩または車で)登る人が5万人、さらに磨崖仏まで足を運ぶ人はわずか1万人とのこと。お寺の境内には、住職の書いたものなのか、そういう貼り紙があった。これだけのものがあるのに、どうして、との住職の嘆きが伝わってくるようだ。

まだ梅雨明け宣言は出ていないが、もうすっかり夏模様、日向ではジリジリと。ベタベタと塗った日焼け止めもすぐに流れてしまった。一時間に一本のディーゼルカーを駅で待つ間に飲む缶ビールの喉ごし、干天の慈雨のよう。

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