紅白なんて目じゃない、ぶっ飛びBS2
2009/1/1

大晦日恒例、紅白歌合戦ははじめのほうだけ観て、10時過ぎには除夜の鐘も聞かずに就寝。奈良のこととて、自宅でも何か所かの寺の鐘が聞こえてくるのだが、その頃には夢の中。その分、早起きなので、元旦のテレビを観る。

NHK-BS2の「日本の名峰」という番組で山登り気分に浸り、それが終わって、チャネルをそのままにしていたら、とんでもない番組が。いやあ、最近こんなに面白かったテレビ番組は、ない。「日本ナンダコリャこれくしょん 今度は俳句だ!」

いとうせいこう、金子兜太、假屋崎省吾、高橋源一郎、冨士眞奈美、吉行和子、明川哲也、大宮エリー、なぎら健壱、南海キャンディーズ、箭内道彦、この顔ぶれだけでも、いったいどんなことになるのかという感じで、もう、その内容と来たら。家族みんなで笑い転げてしまった。

それぞれ二句ずつナンダコリャという俳句を持ち寄り、第一印象で全員で採点、そのあとで推薦者がプレゼンを行い、ああだこうだと皆で突っ込んだり、金子センセイがありがたいコメントをのたまう。その上で再投票して最終得点となる趣向。

どれもこれも、ナンダコリャというものばかりで、ほんとにこれが著名な俳人の手になるものとは思えないものばかり。季語なし、季語だらけなんて序の口、字余り字足らず、なんでも来いという寸法。50字を超すものまで登場する始末。しかも、内容は、いったい何のこっちゃというものばかり。

全部は覚えていないが、いくつかを示すと。

「露人ワシコフ叫びて石榴打ち落とす」
 これは高橋源一郎が持ち込んだ句。これは絶対ワシコフでないといかん、プーチンだったら俳句にならないとか何とか、糞真面目に訳の判らない能書きのプレゼン。このシュールさ、つまらないバラエティ番組の比ではない。

「戦争が廊下の奥に立ってゐた」
 これはとてもシリアスな俳句かと。左翼系の俳句運動が盛んだった京大の建物の中に憲兵が入り込んでいるという状況下の作品と聞いて、なるほどと思う。もちろん季語はない。

「足の裏洗えば白くなる」
 えっ、こっ、これが俳句、と、家中爆笑。もちろん字足らず。いったい、どこで切るんだろう。そんなことより、何が言いたいんだろ。小学生が国語の授業でこんなの作ったら、先生もガックリしそう。

「ワタナベのジュースの素です雲の峰」
 これはなかなか佳かったなあ。「日本の名峰」を観たあとだけに、夏山の情景が鮮やかに蘇るよう。中年の山男山女には共感するものがあるのでは。それにしても、引用率70%だと著作権の問題はないのかなあ。

その昔、仏文学者の桑原武夫による「第二芸術論」という俳諧批判があり、これに対し俳壇からはついにまともな反論はなされなかったはず。このNHKの番組は、必ずしも「第二芸術論」に与するというものでもなく、日本語の表現力という点にも光を当てているところでニュートラルだ。

NHKは、ときどき、民放ではあり得ないような、毒含みの面白いバラエティをやる。年末のスポーツ振り返りでの大相撲の部もそんな感じだった。やくみつるや、デーモン小暮閣下もメンバーに加わりディスカッション、協会批判がポンポン飛び出すので、これNHK、と耳を疑ったほど。

いつもと違う、お正月休みのゴロゴロ生活、普段見ないテレビも意外と…

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