車窓の山に登る(播磨編)~ 高御位山
2009/5/30

大阪からJR山陽線で西に向かうと、姫路の手前で右の車窓に奇妙な山容が現れる。高さはないものの、緑に覆われた里山の風情ではなく、露岩が目をひく。それが高御位山(たかみくらやま、304m)の山塊である。

都市圏との乗り継ぎになるので1000円高速の恩恵はないが、休日割引もあるので西に車を走らせる。ゴルフ場に向かう中国自動車道を避けたのはよいが、阪神高速も京橋インターあたりで工事中の一車線規制、ただでも混む場所なのに。とは言え、7時台には高砂市の鹿嶋神社に着く。

竿池という溜池のそばの大きな駐車場に車を駐める。ここは公園の駐車場のよう。向こう側がゴルフの打ちっ放しになっていて、ここで池ポチャの練習をするらしい。そんなものよりギョッとするのは巨大な鳥居、チタン製らしい。耐用年数1500年とか。参道には店屋も多く並んでいて、ここは播磨の名だたる宮の模様。お参りをしてから背後の岩尾根に取り付く。百間岩との呼称らしいが、そのような標識は見あたらなかった。こんなところで、雷でも来たら大変。この日、雷雨もという予報だったし、それが外れても暑さ回避のために、早めの出発をした訳だし。

標高300mの山だけど、スニーカーじゃなくて山靴にしたのは正解。乾いた岩盤にビブラムのフリクションが快適。結果的に、この日の行程、足許はほとんどが岩、鎖場こそないが、樹林帯でも登山道はクラック伝いだったりと、退屈しない。地元の人にはよく知られた山のようで、朝も早いのに思いのほか登山者の姿がある。コースはよく踏まれていて、岩ばかりとはいえ危険なほどではない。

鹿嶋神社の裏手から登り鷹ノ巣山を経て高御位山へと時計回りの縦走コース。前半の行程は高砂市と姫路市の境界であり、尾根筋からは目を凝らせば世界遺産のお城も確認できる。ともかく眺めのよい山歩きだ。人気があるのも頷ける。海をまたぐ大橋や臨海部のコンビナート、海を挟んで淡路島に家島諸島。頻繁に行き過ぎる船舶。山道には今がシーズンなのか清楚なササユリ、「高御位山の笹ユリを増やそう会」なる団体があり、保護活動をしているようだ。かと思えば、北側の谷間からはパンパーンという銃声、石切場の発破の音かと思ったら射撃場があるらしい。姫路の街からも近いこんなところにと訝ったが、家に戻って調べてみると今年9月で閉鎖になる予定だとか。ゴルフ場と同じく無粋、目の前の瀬戸内海の無人島にでも作ればよい施設だ。

高御位山のてっぺんも巨岩が林立する。その岩の裏手に狭いところを整地して立派な神社が建てられている。昔から信仰の山なんだろう。歩きごたえのある縦走の最後に降り立った北山集落にも鹿嶋神社がある。こちらのほうは、西の大社に比べたらこぢんまりとしたものだ。

このあたりの山塊、播磨アルプスの別名もあるようだ。確かに周りの山も露岩が目立つ。この季節、晴れたら真夏並みだが、そこまでには至らず。もっとも午前中に縦走完了ということもある。稜線上の眺めはいいのだけど、クマバチがやたらと多くて閉口する。まあ性格温厚なやつだし、そういう季節だからしょうがない。おっと、大きさは同じだが縞模様、獰猛なスズメバチの姿も一匹、これは危険、接近は避けるにしくはない。

アップダウンを何度も繰り返し、駐車場に戻った頃には日も高く、汗だく状態。下手すると熱中症、あわてて立て続けに水分補給。いっぱい汗をかいて、爽快でもあるし、早朝出発での疲れも少々。これからの季節は要注意だ。若くもないし。

あとは戻るだけ。時間もあることだし、こんな時ぐらいしか訪れる機会はなさそうな明石の天文台に寄り道。正式名称は明石市立天文科学館。プラネタリウムの上映時刻までは間があったので、14階の展示台へ直行。

うーん、ここも絶景。南側、眼下の山陽電鉄人丸駅、ここはテツの名所のひとつ。ホームに引かれたラインは言わずもがなの東経135度線。日本標準時の子午線の上にある唯一の駅ということ。JRの快速電車、市街の向こうの明石海峡を進む貨客船、そして淡路島。なかなか絵になる光景である。
 地上に子午線などあるはずもないのに、それを描いてみせるは万国共通のことのよう。500年前に、このラインがスペイン・ポルトガル国境にならずに済んだ僥倖を日本人としては喜ぶべきなんだろう。

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