1000円高速・第二弾 ~ 冠山
2009/7/5

支持率最悪の宰相が記憶に残るとすれば定額給付金と1000円高速だけというのは寂しい限りだが、山登りの人間にとっては、普段なら満足度と交通費がバランスせず検討俎上にも登らない山まで足を伸ばせるようになったことも事実。とは言え、それが選挙の票に繋がるほど世の中甘くないし、国民をナメてもらっても困る。

とか何とか言いながら、先の能郷白山に続いて越美国境の山登りに出かける。4時起床で5時出発、最後の林道の走行も途中休憩も含め、登山口に8時半に着いたのだからちょっと暴走気味か。休日だけど、梅雨のさなか、学生は期末試験の頃だし、行楽客も少なく、1300円で奈良から武生インターまで快走。そこからは山岳ドライブの定番、400番台国道、今回は417号だ。

目指したのは冠山(1257m)、能郷白山の西にある山。標高は400mほど低いし、大阪の金剛山と大差ない。だけど、ここは冬場は豪雪、植生も高山に近いものがある。伊吹山ほど種類は多くないが、キスゲの群落が花盛り。晴れ間さえ狙えば登るのにいい時期かも知れない。残念ながら遠望は得られず、白山はおろか、ずっと近い能郷白山の姿もガスの中、まあ、いつものことだし、雨男の割には降られないだけでもよしとする。

越美国境の山は深い、高くはなくても麓の村からも町からも遠い。しかし、山越えの林道が通じてアプローチは劇的に短縮、名の通った山なら奈良からでも日帰り圏内に入った。信じられないことである。未だに国境稜線には踏み跡もない部分も多いのだから極端な落差だ。峠に車を置いて片道1時間あまり、そのせいか、どんどん駐車スペースが埋まっていく。遠距離登山者にしては極めて朝早い到着の部類。近い人は慌てないということか。

峠に着いてあたりを見回すと、あっ、あれが冠山。特異な山容ですぐにそれと知れる。烏帽子岳ぐらいの名前のほうが相応しい気もするが、意味は同じ、岐阜県側は切り立った崖になっているようだし、福井県側もかなりの勾配。峠からの距離もありそうだが、物の本によると1時間あまりで到達できるとある。いまひとつパッとしない天候だが、贅沢を言っても仕方ない、尾根伝いで暑くないだけ幸いと歩き出す。実は気懸かりなことがあったのだが、汗をかいて体が軽くなるとともに忘れてしまった。

大したアップダウンもなく1時間、最後の三角錐の底辺部分、冠平に着く。そこから先は10分ほどの急登、ロープが張られた岩場を攀じると呆気なく山頂だ。見晴らしは抜群のはずだが、霞んで遠くは見えない。岐阜県側から風が抜ける。心地よし。登りも下りもそこそこの数の登山者と行き交う。

冠平はお花畑の様相だ。ちょうどこれからひと月ぐらいが高山植物のシーズンだろう。笹原の中に遭難碑がある。伝えるのは半世紀あまり前のことだ。

高度成長の前、戦後間もないと言ってもいい時代だ。職場の行事なのか、ずいぶん大人数での登山だ。温泉旅行でもなく山登り、質実剛健というか、戦後日本がまだ貧しかったことが偲ばれる。11月上旬、気圧配置次第では夏にも冬にもなる時季、当日の天気図はどんなだったんだろう。ネットで調べても無い、これほど昔だと図書館の紙情報か新聞の有料検索サービスに頼るしかなさそう。降雪をみたということだから、低気圧通過直後の疑似的な冬型気圧配置か。ここは中部山岳の一部、日本の裏と表の分水嶺だから、疲労凍死に至るほどの激しい気象変化だったのだろう。

山頂と冠平でゆっくり過ごしてもまだ11時前、ぼちぼちと往路を引き返す。天気が崩れる気配はないし散歩気分。峠のあたりに駐車する車の数が増えている。すれ違う人の数からすると当然か。福井銀行の人たちが登った頃には峠越えの林道などなく、長い道のりを麓から辿ったのだろう。今どき車でアプローチが短縮されるのはいいが、この日の私にはひとつの心配。ガスがない!

週末の山登りは大概が土曜日、翌日ゆっくり休んでということだが、今回は土曜日に別のところに出かけたので日曜日になった。そうなんだ、日曜日、田舎のガソリンスタンドは閉まっている!高速を降りて補給すればいいやと思っていたら休日なのと朝早いのとで国道沿いの店はどこも開いていない。微妙な残量である。いちおうインディケーターの目盛りは二つ点灯しているが、それが何リッターなのか不明。峠の手前5kmではとうとう目盛りが一つになった。

単純に計算すると4リッターはあると思うが、それで復路、武生インター近くまでもたせなければならない。リッター23kmのデミオの燃費からすれば、下りなら公称数値に近いとは思うけど、往路とは打って変わってエコドライブに専心。クーラーはつけない(山中なので必要ないが)、登り勾配のときだけドライブ、あとは一貫してニュートラルという徹底ぶり。取扱説明書で見れば、インディケーターが一つで点滅しだしたら早めに給油、インディケーターが消えてE表示が点滅したら速やかに給油ということだから、最後の一目盛りは単純に満タンの1/8ではないはず、それがフェイルセーフの設計というものだ。とは言え、途中でJAFのお世話になるのも嫌だなあと思っていたら、なんのことはない。最後の一目盛りも点滅しないまま今立の役場前のガソリンスタンドに到着。アルバイトの地元高校生の純朴なこと、好感持てるなあ。それにしても、いかに下りとは言え、こんなに走るのか。めでたし。

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