高野山素通りで ~ 伯母子岳
2009/9/21

世間ではシルバーウィークとか言うらしい。いや、敬老の日を含みシルバーじゃイメージが悪いとかで、プラチナウィークという言い方もあるらしい。そんなことはともかく、ちょうど中日に日帰りの山登りに。今回は1000円高速どころか、無料高速を乗り継いで奥高野へ。

奈良の自宅から京奈和道の郡山南~橿原北、橿原バイパス、国道24号を経て再び京奈和道の五条北~橋本、以前の抜け道づたいの走行からは信じられない速さだが、奈良県内の全線が開通するのはいつのことやら。繋がったときには民主党政権の高速道路無料化方針の下、この高速道路が有料化される日は来ないかも知れない。
 考えてみれば奈良は無料高速の先進地域、阪奈道路、名阪国道、それに京奈和道の南半分だ。地元選挙区から出ている馬淵澄夫議員がこの政策の提唱者というのも故なしとしない。当地では社会実験で効果が立証済みということかしら。

高野山は二度目、前に龍神温泉に出かけたときも今回も素通り、そう言えば有料道路だった高野龍神スカイラインも無料化されている。世界遺産登録に備えた措置でもあったらしい。今は国道371号である。秋晴れ、標高1000m山地を縫う二車線道路はライダーの姿が目につく。

護摩壇山の少し手前で東の尾根に分かれる伯母子林道に入り約6km、林道が稜線を離れ南側の谷に下り始めるところが登山口。そこで1250mぐらい。目指す伯母子岳(1344m)とは標高差100mそこそこ、これが登山と言えるのかというところだが、距離はそこそこ、片道2時間はかかる。まあ、膝の具合に不安があるので選んだコース、下りの負担が少ないのが何より。

遊歩道というぐらいだから、車高の高い小型四駆なら走れなくもないが、部分的には危険な箇所もある。いくつかの小さなピークを上下し、途中一度の休憩で山頂に立つ。山頂の手前600m地点までが幅のある遊歩道で、そこからは山道。

途中の牛首山1331mから伯母子岳が見えたと思ったら、それは手前のピーク、ガイドブックに牛首の峰と出ている1341mの独立標高点だった。同じような高さで並んでいると紛らわしくて仕方ない。もっとも、それも家に戻ってから25000分の1地図で確認したこと。写真に映っている頂上付近の小さな崩壊で特定できる。このピークについては、前記の国土地理院の地図でも、山と渓谷社のガイドブック(「マイカー登山ベストコース[関西周辺]1996年)でも、登山道(遊歩道)のルートが誤っている。実際には遊歩道はこのピークを通っておらず、北西側を捲いている。昭文社のガイドブック(「関西の山あるき100選」2002年)の記載は正確である。これは、実際に踏査した人が図版をチェックしているか、別人が適当に記入したままかの差だろう。このコースでは手前の鞍部に来るまで伯母子岳は姿を見せないのだ。

いちおうコンパスは身につけたが、地図もガイドブックも車に残して歩いたので、困ったのは遠望の大峰山脈の山名同定ができなかったこと。奥高野の山は初めてなので、歩くルートは記憶したものの、広域の位置関係が頭に入っていない。はて、あの目立つピラミダルな高峰はどの山だったろうと悩む。登ったことがあるのに遠くからだと見え方も違うので気付かない。後で地図で確認すれば、何のことはない、釈迦ヶ岳だ。

登山口に駐まっていた車は3台、みんな伯母子岳の往復だろうから、戻りの人とすれ違うのと、自分が戻るときにこれから往復の人にすれ違うぐらい。林道は伸びているものの四囲の峰の連なりに山深さを実感させる頂上、賑やかなおばあちゃん四人組が立ち去った後は静かなものである。

復路には二人の登山者にすれ違う。
 登山者1 「頂上まで、どれぐらいですかね」
 私 「ここまで20分ですから、30分みておけばいいですね」
 登山者2 「頂上まで、どれぐらいですかね」
 私 「ここまで休憩一回で1時間20分かかっていますから、1時間40分はみておいたほうが」

なんで全く同じことを訊くのか。理由は簡単、まわりに目を遣ればブナの自然林が美しいのだが単調な尾根歩き、そのくせ目指す山の姿は見えず、小さなアップダウンをくりかえすだけ。登山者1は、足取りも元気になったようだが、登山者2はげんなり感が漂う。きっと途中で引き返すだろう。往復すると17時近くになるだろうし…

さて高野山からの下り、往路の国道370号で戻るよりも、東側の谷沿いの国道371号のほうが距離も短そうだし、こっちにするかと酷道マニアは当然の選択。下り車線側だけに柵があり、橋本方面は370号九度山経由でと標識が誘導していたが、気にせず突入。対向困難な箇所はあっても、通行量が極端に少ないから何の問題もなし。ところが…

急な下りが終わったところが河合橋というところ、丹生川本流との合流地点。ここに崩土による国道371号通行止の表示、丹生川沿いに九度山に出るのが迂回路ということだ。なあんだ、これならかえって遠回りだ。引き返すともっと遠回り、まあ、迂回路ということだから通れるんだろう。
 しばらく進んだ分岐に一軒家、人の気配がするので、ちょっと確認。人の良さそうな地元のおばちゃんだ。

「この道を行ったら、橋本に抜けられますかね」
「どっちから来なさった。山から下りてですかい。しばらく先で右に分かれる橋本に行く国道は柵していて通れんようになってる。丹生川沿いずっと九度山に出てもいいし、河根から峠を越えて橋本に出る道もあるわ。30度にぐっと折れて登って行くんやけど。川沿いに行ったほうが判りやすいかな。この車やったら大丈夫やわ」

これは、おばちゃん、つまり女性の説明ではない。カミサンなら「マクドのあるとこを曲がって」とか言うから、交差点名などで説明する私と話が通じないことが多いのに、このおばちゃんは男の説明の仕方だ。もっとも山中のこととて、目印になるようなものがないということもある。

おばちゃんの説明が的確だったことをすぐに知る。後で調べたら、丹生川沿いの道は県道102号宿九度山線(やどりくどやません)というらしいが、ずっと1.5車線ぐらいの幅、谷側のガードレールはなく、短い赤白のポールが並んでいるだけ。対向時に谷側になる私は左側ドアミラーを下向きにして路肩をチェックしながらヒヤヒヤの後退、相手側も山側の岩に擦らないかとジワジワの前進。デミオを見ておばちゃんが言ったことはこれだったのか。これからの紅葉はさぞやというほど渓谷沿いの景色はいいのだが、それを眺める余裕もあったものではない。川までの高さは知れているので命の危険はないにしても、落ちたら大破は免れないし。

狭隘部を抜け、ちょっと落ち着いたら、対向車から下りた若者が手を広げてストップの合図、車には友だちらしい3人ぐらいが残っている。何かこの先トラブルでもと訝ったら…
「すみません、ドームビレッジキャンプ場という場所をご存じありませんか。この川沿いということなんですが、来られた道にはありませんでしたか」と。
「途中に鄙びた温泉みたいなのはあったけど、キャンプ場は見なかったなあ。あっ、そうだ、ナビのデータに入ってるかも」と、目的地入力。
「あった、あった、なあんだ、通り過ぎてるよ。1km戻るんだよ」

対向車なんて滅多に来ないので、地獄に仏ではないが、感謝されることしきり。車中の若者も声を合わせて「ありがとうございましたあ」

おかしな一日だった。山登りでは二人に尋ねられるし、帰りの道では、こっちが尋ね、また尋ねられる。まあ、世のなか助け合いだし、これでいいのだ。と何故か、バカボンのパパ。

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