坊ちゃん列車、道後温泉、松山城
2009/10/31

高校生のころ、佐田岬半島を何日かかけて歩いたことがあり、そのときは松山を通過、目的地の八幡浜まで一直線だった。それから40年あまり、仕事で訪れた松山で慌ただしく観光。定番は道後温泉と松山城だが、私の場合そこにテッちゃん趣味が加わる。

松山駅前から伊予鉄道の市内線に乗る。これが仕事と観光の足、早速一日券を運転手さんから購入、400円で乗り放題とお得。これに追加100円を払えば特別仕様のレトロな坊ちゃん列車にも乗車できるのだ。大阪にも阪堺電車のような路面電車はあるが、普段乗ることはない。なので、市内を隈無く走る路線は物珍しい。ウィーンやチューリッヒなど、ヨーロッパの都市では路面電車に大変お世話になる。地下鉄もいいけど、人に優しいスピードと眺め、もっと日本でも復活すればいいのにと思う。

市内の環状線をぐるっと一周、これで何となく街の雰囲気がわかる。市の中心、松山市駅が坊ちゃん列車の始発駅だ。外観はSLだが、もちろん石炭を焚いて走るのではなく、気動車である。松山市駅も終点の道後温泉駅も終端型の造りなので、人力で機関車の付け替えが行われる。テッちゃんのみならず、普通の観光客もカメラを向ける。この列車の乗務員は制服もレトロ調、イケメンのおにいさんを揃えているのが面白い。きっと意識してやっていることなんだろう。伊予鉄道は市内線のほかに郊外線もあるが、黒字経営とのこと。

終点の道後温泉駅から少し歩くと、木造三階建ての道後温泉本館の前に出る。ほう、これが、道後温泉なのか。宿泊したのはすぐそばのホテルだが、お風呂はこちら、食事は近くの海鮮料理店と機能分化していて、浴衣下駄履きで回れるのが嬉しい。街外れとはいえ、中心部からチンチン電車で20分もあれば天下の名泉を銭湯感覚で利用できる、こんな県庁所在地は他にないだろう。松山出身の人の持つどこかのんびりした雰囲気や人なつっこさが、こんな土地柄と結びついているような気がしてならない。額田王の名歌にある熟田津(にぎたづ)という港はこのあたりらしいが、それにしては海からは距離がある。諸説入り乱れているようで、いずれにせよ古代の海岸線は違っていたのだろう。

お風呂は銭湯感覚のものと、お茶とお菓子(坊ちゃん団子)が付いて座敷で休憩できるコースとに分かれる。初めての私は先ずは観光コース、翌朝は銭湯だ。夏目漱石の使った部屋だとか、天皇家専用のお風呂だとか、館内の案内もしてくれる。もっと豪勢な温泉はいくらもあるが、歴史を感じさせる雰囲気という点では最右翼だろう。向かい側のホテルの窓から見ると、建物にそぐわないような赤と白のイルミネーションが目に入る。なんだか怪しい雰囲気である。これは鳥のようだ。もともとの道後温泉発祥の謂われとなっている鷺が屋根のてっぺんにいるのだ。昼間は気付かなかったが、夜のど派手なライトアップにはびっくり。

松山城、ロープウェイがあるぐらいなので、けっこう小高い山の上だ。もちろん、ちょっとした山登りということで、私は徒歩にて登城。いくつかのルートがある。なかなか綺麗なお城だ。眺めもよい。天守閣には鎧兜の試着コーナーもあって、ちょっと試してみる。緑茶飲料か何かのコマーシャルで、メタボの武将が鎧の着用に難儀するというのがあったが、あれを思い出しては苦笑。

市内にはこの秋から3年がかりで放映されるというNHKの「坂の上の雲」のポスターが目に付く。記念館もあるぐらいなので、ご当地にとっては気合の入りようが違うのだろう。そちらの観光にまで回る時間はなく、空港に向かう。大阪空港までは30分ほどのフライトだが、訳あって羽田に飛び東京経由で戻るという迂回ルート。空路は表定普通運賃こそ違え、各種ディスカウントを利用すれば、日本国内どこに飛んでも距離ほどの料金差がないのが不思議である。

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