ええーっ、知らない間に変わってる! ~ 1:25000地形図
2010/1/14

久しぶりに国土地理院から出ている25000分の1の地図を買った。山登りに使うエリアのものは古いものが大概揃っているし、最近は昭文社の登山地図を使うことが多いので、ついぞ買っていなかった。その気になればWeb上の電子国土地図や地図閲覧サービスで必要な部分をプリントアウトする手もあるし。

ところが、印刷の鮮明度や耐久性を考えると、どうしてもご本尊にはかなわない。そこで、先日ルートファインディングに苦労した油日岳が含まれる「鈴鹿峠」を購入した。また、この地域に出かけることもあるだろうし。

25000分の地図「鈴鹿峠」

阪急梅田の紀伊国屋書店で地図の棚を引き出し、「鈴鹿峠」の図葉を取り出したとき、「なんかヘンだな…」と感じた。ついでに南側の「平松」も買っておこうと取り出したら、「あれっ、これは隣接図じゃなかったのかな…」

二枚の地図を眺めて、驚くべきことを発見、一見して「ヘンだな」と思ったのは、紙の大きさは同じだが図幅が拡大していたからだ。

昔の地図と比べて極端に余白が小さくなっている。一定の緯度経度の格子で区切られている各図葉の範囲が隣接図にはみ出している。だから、「鈴鹿峠」と「平松」のどちらにもJR関西線が表示されていて、隣接図同士がオーバーラップしているのだ。

「鈴鹿峠」図葉の範囲

山登りをするときには、何枚もの25000分の1の地図を持参し、周辺部分では隣の図を並べて使うというのが当たり前だった。私は、描画領域の周りに7mm程度の糊代を残してカット、それを折り返し糊付けして縁を補強したうえで、四曲屏風状に折り、上下半分に畳んでコンパクトにする。こうすると隣接図を並べてもぴったりと揃う。そんな使い方をしている人間にとっては、これは大袈裟だがコペルニクス的転回である。

北に行くほど図のサイズが小さくなり、北海道と九州ではずいぶんと差があるのがこれまでの常識だった。このスタイルになると、図の大きさは全国共通で地域によってオーバーラップ部分の大小の差があるということになる。これを従来のように加工すると全国の地図のサイズはピタリと統一されるが、そのサイズは一回り大きくなる。さらに二枚を並べて使う際には、重ね合わせが非常に困難になる。使い勝手としてはオーバーラップ部分の大きさ次第でも、山登りで数キロ先の目標を確認するには単一の地図で無理な場合が多いから、利便性低下の面は否定できない。

なぜこんなことが起きたんだろう。国土地理院のホームページを調べて謎が解けた。少し長くなるが、そこから引用すると次のとおりである。

地球上の位置を経度・緯度で表わすための基準を測地基準系(測地系)といい、地球の形に最も近い回転楕円体で定義されています。経度・緯度は、この回転楕円体(地球楕円体)の上で表示されています。

そして、個々の土地の経度・緯度が精度良く、効率的に求められるように、位置の目印になる基準点を全国に多数設置し、測量によってこれらの基準点の経度・緯度を求めています。この基準点の位置を表わす経度・緯度の数値を測地基準点成果といいます。従来、我が国は、明治時代に5万分の1地形図を作るために決定した回転楕円体(いわゆるベッセル楕円体)を位置の基準としており、測地基準点成果もこの回転楕円体に基づく値が求められ使用されてきました。この、従来使用されてきた測地基準系を日本測地系といいます。

一方、電波星を利用したVLBI(数十億光年の彼方にある電波星から届く電波を電波望遠鏡で受信して数千kmもの長距離を数mmの高精度で測る技術)観測や人工衛星観測により現代の科学的知識に基づいて設定された、世界共通に使える測地基準系を世界測地系といいます。世界測地系の楕円体の中心は、地球の重心と一致するように設定されていますが、日本測地系の楕円体の中心とは一致していません。

また、我が国の測地基準点成果は、明治時代の測量機器や測量技術による制約と過去100年間の日本列島の地殻変動の影響等で基準点網にひずみが生じています。例えば、東京から見て札幌の位置が西へ約9m、福岡の位置が南へ約4mずれていることが分かっています。

GPS(全地球測位システム)及びGIS(地理情報システム)というコンピュ-タシステムによる位置情報の測定・利用技術が出現し、今後急速な普及が見込まれています。そして、両技術に対応する基準として、世界測地系に基づいた、高精度な測地基準点成果及び地図成果が求められています。しかも、近い将来に予測されているGPSやGISの本格的普及を考慮すると、それ以前に、世界測地系に移行する必要があります。

「鈴鹿峠」図葉の注記

早い話が、最新かつ正確な世界標準に移行するということ。それが平成14年に決まったということらしい。ただ、日本全国で4000枚以上ある25000分の1の地形図を一気に切り替えるのは無理、ようやく最近になって世界測地系による地図が出版されだしているようだ。

私の買った「鈴鹿峠」の左余白には「経緯度の基準は世界測地系」との注書きがある。それだけならいいが、他にも気になる記述が。「図郭に付した▼(薄いピンク)は隣接図の図郭の位置、▼(薄いブルー)は日本測地系による図郭の位置」とある。画像では見えにくいので、赤色と青色の大きな矢印で示した。

つまり、従来のように隣接図とのオーバーラップなしで測地系に基づく図郭で区切った場合、世界測地系の図葉と日本測地系の図葉の間に隙間ができてしまうということだ。かなりの年月、両方式の地図が併存する以上、このような図式にせざるを得ないのは当然の帰結とも言える。

その理屈は充分に判るし、他に良い方法があるとも思えないのだが、この大転換を機に、四色刷の味気ない地形図に段彩やレリーフを施すといった付加価値をつけることは検討されなかったんだろうか。慣れたら見やすい国土地理院の25000分の1の地形図ではあるが、スイスの地形図(画像はツェルマット付近)まではいかなくても、せめて20万分の1の地図(画像は由布岳付近)レベルになればというのは高望みなのかなあ。

スイスの地形図 20万分の1地形図
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