阿蘇から高千穂 ~ 天孫降臨の地へ
2010/1/24

出張で福岡や小倉に行ったことはあっても、それ以外の九州と言えば、高校生のときに甑島に行ったことぐらいか。あっ、そうだ、奄美大島もあった。でも、どちらも九州本土じゃない。そんなことで、仕事で熊本に出かけた週末、阿蘇に向かった。季節は冬、それでも九州のこと、寒さは思ったほどじゃない。

阿蘇山麓に宿をとり、登って行くにつれ景色は白くなっていく。快晴、夜間の放射冷却による霧氷だ。遠目には雪と見まごう眺めである。日が昇れば消えていく白装束、束の間の絶景。

草千里と言うのだそうである。名のとおり。草をはむ牛の姿はのどかなものだ。ほんとうに広いカルデラだ。鉄道も道路もその中を通っているのは地図では判っていても、実際に眼で見るとその広さに圧倒される。阿蘇山公園道路のゲートが開くのを待って中岳噴火口へ。火山ガスの濃度による入山規制があるのは、活火山なのでどこも同じ。湯気を上げるお釜を釜の縁から覗き込む図である。物見遊山とはよく言ったものである。まさに、そのもの。フニクリ・フニクラじゃなくとも、万国共通かな。

お手軽登山である。中央火口丘群と呼ばれる根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳と並ぶ阿蘇五岳、個別に登ればそれなりの山登りになるのは判っていても、そんな時間もないので大展望で私は満足する。それでも充分お釣りがくるほどの景色だ。登りは西からだったが、下りは南へのルートをとる。高森から外輪山を越えて宮崎県に入ろうという算段だ。265号線の峠に向かう道から振り返る中央火口丘群は見飽きない。

全国47都道府県、通過を含めても全く足を踏み入れていないのが大分県と宮崎県、外輪山の向こうは高千穂だ。国鉄時代には高森線と結ぶ計画があった日之影線、それが高千穂まで延びて高千穂線となったものの、第三セクターに移行し高千穂鉄道となる。そして水害被害からの再興の望みが絶たれて廃線、その終点の高千穂駅には寄らねばと思っていたら、いやいや、その手前にも鉄道遺跡があった。高千穂から高森に向かって線路は建設されていたのだ。葛原トンネルというところ、道の駅のようになっていてSLが展示されている。途切れた線路が向かう先は何とトンネル貯蔵庫、中を覗いてみたら焼酎の樽がずらりと並んでいる。なかなかの転用、ここなら温度変化が少ないはずだし、お酒を寝かせるのには最適かも。高千穂駅にも車輌が一台駐められたまま。長閑だけれど、ちょっと淋しい光景だ。

高千穂神社、高千穂峡、天岩戸神社と、このあたりに点在するパワースポットを巡る。九州の脊梁山脈の中にぽっかりと存在する盆地、海沿いの町からの距離は大きく、椎葉、五木などとともに、山深く伝説の地となることも宜なるかな。高速道路はないけれど、今は国道も整備されて熊本側からも楽々往復できるにしても。

帰途、南阿蘇鉄道高森駅に寄り道する。こちらは第三セクターとして健在、カルデラの底の平坦地を走る鉄道だから、高千穂鉄道ほどの自然災害の脅威はないし、何と言っても阿蘇という一大観光資源とともにあることが強みだろう。

西日をまともに受けながら熊本空港への道を行く。熊本市街の向こうの山は島原半島の普賢岳だろう。そういう位置関係のはず。地図で想像するのと、この目で見て実感するのには大きな違いがある。広さ、それに空気、五感を通して伝わるものの大きさはそこへの旅でしか味わえない。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system