金剛山で霧氷を観る
2010/2/13

金剛山、と言っても日本海の向こうの半島の山ではない。いまどき、大阪の最高峰より北朝鮮の観光地だと思う人のほうが多数ではないだろうか。大阪の人間なら金剛山は誰でも知っていると思っているが、それは日本の常識ではない。

かく言う私、何回登ったんだろう。10回にも達していないと思うが、さりとて2回や3回ではない。それで、恐れ入るのは頂上広場にある登山回数の掲示板、会員登録をして登頂のたびにスタンプを押してもらうというシステムのよう。それぐらいなら遊園地でもやりそうなことだが、ここの回数は半端じゃない。

100回以上なんて駆け出し、500回、1000回というところも沢山の名前が並んでいる。個人情報保護なんてクソ食らえ、住所・氏名併記だ。驚くべきは10000回を超えた人がいること。まてよ、毎日登ったとして、10000÷365、台風の日に登っている訳じゃないだろうし、閏年とか細かいことは別として、30年近くかかる。普通の勤め人だと無理な話で、日課の散歩で最短コースを辿るにしても、登り下り健脚で2時間はみないといけないだろう。でも、毎日登ればもはや自宅の庭も同然、考えようによってはカネもかからずに贅沢な話だなあ。

今回は初めて奈良県側から登る。真東の高天からの通称郵便道、頂上は奈良県御所市大字高天字葛木岳ということなので、これが本来のメインルートなのか。郵便局の所管も大阪府側の千早赤阪村ではなく、こちら御所のほうなんだ。それで郵便道。確かに、最短、一直線、郵便局の職員だったら、登頂回数上位にランクインしたかも。今は大阪府側からロープウェイも架かっているから郵便道を使うこともないだろうが。

高天というからには天孫降臨伝説、小さな社である。変わった字体で「神霊」と大きく書かれた新しい石碑が神社前に建っている。「…正に蓬莱仙境の如し森厳荘厳霊気地に満ち森羅万象総てに霊気を帯ぶ…」とある。奈良の田舎ならどこにでもある風景だけど、地元出身の書家、中野南風氏にとっては思い入れも強いということだろう。

参拝のあと、神社の左手に続く道に入る。細いが舗装されており、四輪は無理だが50ccバイクのおっちゃんが追い越していく。滝のところまで乗り入れできる。このおっちゃん、滝のところで山登りスタイルになったかと思うと、さっささっさと登って行く。そうか、こういう地元のおっちゃんが登頂回数を競っているのか。

古くからの道、沢から尾根に取り付き、そのまま稜線を行くのでもなく山腹を捲くでもなく、微妙なルート設定で効率的な登高である。郵便道というのも頷ける。この一週間、暖かい日が続いたから、積雪はない。とはいえ、夜間は氷点下の冷え込みだから、登山道は硬く、脇には霜柱がびっしり。主稜線に近づくと、足下だけでなく立木に付着した霧氷が現れる。山頂部一帯は氷の花盛りだ。暖かさで積雪が融け、そのあとの雨で湿度が上昇、そして晴天の放射冷却と、狙って登ったわけじゃないが霧氷が発生する条件が揃っている。ちょうど1000mあたりが霧氷の限界線になっているようだ。水越峠の向こう、大和葛城山のてっぺんは白くない。

コースタイムでは2時間で山頂の一角である一ノ鳥居、でもそんなにかからない。ゆっくり歩いて1時間半というところ。多回数登山者なら1時間そこそこで大丈夫だろう。まあ、トレーニングとしては最高の部類、内蔵脂肪が溜まるはずがない。メタボ健診でひっかかった人たちを山麓に一週間合宿させて、食事療法とセットで毎日登らせたら効果てきめんだろう。大阪に近いことだし、そんなパッケージを考える人がいてもよさそうに思う。

葛城岳頂上、標高1125m地点は神域になっており、立ち入りできない。葛城神社の裏手、5mほど高くなっているところがそれだが、何度登っても金剛山最高地点に足跡を印すことはできない。同じ神域でも三輪山は初穂料を払えば登れるのとは違っている(大神神社と反対側から無料で登ったことがある)。賑わっているのは神社ではなく、ちょっと下の転法輪寺の前の山頂広場、ロープウエイ山上駅から等高線沿いの遊歩道を辿ればここに出るので、手軽に霧氷見物という家族連れも多い。子ども向けだろう、積雪を集めてかまくらまである。寒波が緩んだせいで、ちょっと痩せたのだろう。この日のお昼の気温は-3°。風はないが、じっとしていると寒いので、お湯を沸かしてカップ麺を食する。ウェストポーチだけで駆け上る人もあれば、屋外のテーブルとベンチに陣取り半ば宴会というグループもいて、登山者もさまざまである。

そろそろ花粉情報が新聞にも掲載されだした。となると、花粉あけまで山登りはお預けということに。雪の残ったところなら大丈夫にしても、山登りで遠くに足を伸ばすのが億劫になったから、しばらく我慢ということかな。

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