取立山 ~ 1000円高速で白山大展望
2010/5/3

受験生を抱えているとGWも家族で遠出ということにはならず、とは言え自宅でゴロゴロもつまらない。「日帰りで山登りのつもりだけど、行ってみる?」とカミサンに声をかけると、先日の堂山が面白かったのか、「行く!」との返事。かくして塾通いの息子を残し両親は行楽、まあ普段お世話しているのだから罰はあたらないだろう。

「5時出発、大丈夫?」と、ちょっと心配。1000円高速日帰り登山は早立ちが大原則なのだ。30分の遅れが1時間の遅れになる。カミサン、なかなか気合が入っていて、きっちり5時に車を出す。それにしても今年の連休、とてつもなく天気がいい。

行先は福井・石川県境の取立山だ。宇治西インターから福井北インターまで、ずいぶんと乗りごたえがある。3時過ぎに起きたものだから眠気がきて、敦賀の先の杉津でカミサンと運転を代わる。これは二人のメリット。勝山を経て金沢に至る国道157号を東山いこいの森まで辿る。このキャンプ場から先、しばらく車道が延び、取立山登山口には大きな駐車スペースがある。林道管理のための500円が徴収される。

さて、身支度を調え歩きだそうとすると、予定していた大滝経由の登山道は通行止でロープが張られている。5月中旬までクローズしているようだ。連休、キャンプ場も賑わっていたし、ここの駐車場には福井県外のナンバーもかなり多い。谷筋には雪も残っているから、山の初心者を想定した安全対策ということだろう。ブロック崩壊や滑落のリスクはあるにせよ自己責任で登ってもいいところだが、運動靴のカミサン連れでは止めたほうがよさそう。案の定、尾根道にもすぐに残雪が現れる。春に入ってからの降雪の影響だろう。振り返る大日山の谷筋にも白い部分が多い。あれは1365m、これから登る取立山(1307m)と大差ないのに。

標高差にすると400m強、大したことはない。1時間あまりの行程だ。最初の200mほどは登山道らしくない道の付け方だ。道幅も広いが、車を通すという付け方でもない。水芭蕉の季節には遠足とかで大勢で来るのかも知れない。アプローチの容易さ、行程の短さのわりに、稜線上には避難小屋まであるのは、そういう背景があるのだろう。

1200m近くになると等高線は緩み、稜線散歩モードになる。山頂が近づくと白山が姿を現す。思った以上に下のほうまで白い。4月に冬の戻りのような時期があったから、そのときに積もったのだろう。

三角点の東側のピークが取立山の山頂、白山の主峰で双耳峰のような姿は御前峰と大汝峰だ。その手前の雪原は弥陀ヶ原、右に稜線を辿ると別山も頭をのぞかせている。快晴無風、白山大展望にはこれ以上ない条件だ。双眼鏡を持ってこなかったことを悔やむ。

普通は風があるから湯を沸かすにも風下の岩陰でとなるが、この日ばかりは正真正銘てっぺんでも大丈夫。みんな長居で山頂の賑やかなこと、子どもの姿も多い。まるで遠足のお弁当タイム。地元の人にしてみれば、お手軽で安上がりの連休の一日だろう。1000円高速の御利益、奈良からも日帰り白山大展望なのだ。

今回登った取立山の周りには、白山を望む山登りに魅力的な山がいくつかある。取立山から尾根続きの赤兎山(1629m)、こちらはより白山に近いし標高もあるので、展望もよさそうだ。そして経ヶ岳(1625m)、こちらも眺めがよさそうだし頂上直下の火口原という異形の山だ。燃費のよいエコカーなら1000円高速は据え置きという話もあるし、次の候補になるかな。山頂ではみんな白山のほうを向いて腰掛けているが、右手に目を転ずるとそんな山がすぐそこに見える。

この雪ではミズバショウはまだまだ先、群落地への往復は止めにして、もと来た道を引き返すことにする。カミサンは例によって足下の花に関心、ピンク色の小さな五弁の花、とりあえず写真に収めてネット図鑑で調べる。トクワカソウというのがその名前、イワウチワとも言うのだそうだ。学名は同じだが、北陸のほうではトクワカソウと言うらしい。

私のほうは双眼鏡代わりにデジカメのズームで白山を撮る。今回は無料パノラマ写真ソフトの優れものMicrosoft Image Composite Editorにずいぶんお世話になった。繋いでみると弥陀ヶ原あたりにはサンスクリット文字のような雪形がある。順調に融ける年ならともかく、今年のように春に積雪が多いと例年とは違う形かも知れない。もっとも雪形というのは山麓の農耕地で言い習わされるものだから、山頂からの眺めとは見る方向も角度も違う。

周回コースをとらず往復となったので、山頂でゆっくり過ごしても午後1時には車に戻る。ところが、ここからは往復じゃなくて寄り道となる。永平寺町から北に国道364号で県境を越える。山中温泉は素通り、山代温泉に達する。

温泉街のど真ん中、山代温泉総湯で汗を流す。入浴料420円、うちの近所のスーパー銭湯よりも安い。観光客は旅館で趣向を凝らしたお風呂に入っているのか、総湯は地元のお年寄りが大半、湯船は大きくて深く、なかなか気持ちがよい。カミサンはお風呂に目もくれず、総湯のすぐそば魯山人寓居いろは草庵に向かう。

さっぱりして風呂上がりの散歩、朝は涼しかったのに気温は上昇、もう30℃に近い。背番号6、誕生日が同じドラゴンズ井端選手の半袖Tシャツ、これでちょうどよい。「なんちゅう格好やの」と、ミュージアムから出てきたカミサンに言われてしまう。

魯山人と来れば、その師匠の須田菁華の窯元に足が向く。今は四代目、魯山人に陶芸を教えたのは初代である。魯山人の看板が掛かる畳敷きの店に上がると、もう年貢の納めどき。製造直売・流通マージンなしとはいえ、手許不如意の私は温泉街の郵便局ATMへ。
 総湯の周りは町並み整備が進んでいるが、歓楽街は閉まった店がやたらに目に付く。団体で来て羽目を外してという旅行は過去のもの、昔から名の通った温泉ほど再生は大変だ。加賀温泉郷の三つの温泉、山中は上向き、片山津は下降線、山代はどちらに向かうのか微妙な位置にありそう。ただ、温泉ブームに加え、陶芸という文化資産があるだけに、山代は盛り返す可能性がありそうだ。

予想どおり、寄り道が長引いて、一足早い母の日のお印となる。たぶんこうなるとは前回の信楽のこともあって判っていたのだが、「取立山から加賀市って近い?」と尋ねたカミサンの作戦勝ち。

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