納涼、奥多摩半日観光
2010/9/3

夏休みの一日、夜には楽しみなコンサート、さて日中をどう過ごす。街中にいてもつまらないし、とは言え大阪と大差ない東京の暑さ、都内を脱出、JRの電車で西に向かう。涼しいはずの奥多摩へ。

青梅線直通の電車で青梅、奥多摩行きに乗り換えて沢井駅で下車。駅前の急な坂を下り、青梅街道に出たところに清酒「澤乃井」の小澤酒造がある。ここの酒蔵見学をしようという算段だ。国道の反対側にはこの酒造の直営料亭「まゝごと屋」と、多摩川を見下ろす庭園「澤乃井園」がある。製造販売の各種のお酒が売店に並び、食事のメニューもある。早い話、なかなか予約が取れないらしい有名店で食事をするもよし、酒造見学のあと心ゆくまで飲んでいくというお手軽な飲んべ向き施設も用意されているということだ。

先ずは見学、毎時の実施ということで週末には満員になるようだが平日のこと、私の組は他に夫婦連れだけのごく少人数である。売店のところから青梅街道の下をくぐる通路を経て、向かいの酒蔵に入る。醸造酒と蒸留酒の製法の違いに始まる基礎知識のおさらいのあと、蔵に入って製造過程を見る。入口には神棚、酒蔵にはよく似合う。

酵母の活動を止め品質を一定にする火入れは、アルコールに対し従量課税する国税局の要請によるところであるとか、かつて田中角栄が地元新潟の公共事業で雇用を増やしたため越後杜氏の出稼ぎが激減し機械化を余儀なくされたこととか、ベテラン職員の解説は語り口も滑らかで内容も興味深い。

見学コースの最後はお待ちかね利き酒コーナー、この日提供されたのは純米吟醸「蒼天」という銘柄だ。よく冷えてすっきりとした口当たり、芳香が口の中で踊る。なかなかの味だ。車で来たという夫婦連れの旦那のほうが、ここでは飲めないので何かと質問している隙に、ふふふ、こちらおかわりの連発。酒蔵見学は公共交通機関利用が基本です。そして、お土産に一本購入。

後ろ髪をひかれる思いで川縁の四阿での延長戦を断念、駅に戻って奥多摩行きの電車に乗る。終点からバスに乗り換え鍾乳洞へ。青梅街道とは違い、狭さもカーブの多さも、山登りのときに車を走らせる奈良の山中の道に匹敵する。前方の警戒とすれ違い誘導のためなんだろう、運転手のほかに車掌が乗車、ワンマンじゃないこういうバスに乗るのは久しぶりだ。

前に友人と雲取山に登ったときに前泊した日原を過ぎ、鍾乳洞への分岐の手前がバスの終点。観光客の車の渋滞のない平日にはここまでバスが入る。橋を渡って左にとれば雲取山方面に向かう道、右に10分ほど登れば鍾乳洞だ。この分岐のことはよく覚えている。あのときは東京都最高峰への長い行程で先を急いだし、鍾乳洞に立ち寄ることなど思いも及ばなかったが、終わらない夏、洞内はいつも11℃とかに惹かれてやって来た。

確かに涼しい。と言うよりも寒いぐらいだ。鍾乳洞の入口に立つと中から冷風が吹き出してくる。何と。上着を羽織ってちょうどいいぐらい。小一時間の鍾乳洞探検に出発。狭いところ、広いところ、平らなところ、急な傾斜のところと様々、8の字状の回遊コースの随所には命名された岩や鍾乳石が点在する。もっと白いものかと思っていたが、照明に浮かぶ岩石は鈍い色だ。外との気温差は20℃以上だから、もっと涼んでいたいところだが、帰りのバスの時刻も気になるしお腹も空いた。

帰りのバスの車窓から眺めると、日原トンネルを出た岩松尾根というバス停あたりに大規模な採石場がある。地図で確認すると奥多摩駅からここまで専用軌道が延びている。ほとんどがトンネルだ。これの終端が奥多摩駅のホームの横の工場ということになる。昔は工場への引き込み線があったのだろう。それだけのスペースが奥多摩駅のホームの横にある。関東の駅百選の一つということらしい。裏手は鉱業、表は奥多摩登山口という趣きだ。

奥多摩駅を出た電車が次に停まる白丸駅、往きに気になっていたホームをドアから身を乗り出してもう一度チェック。やっぱり。無人駅のようだが民家とホームが直結している。まるで路地と門口が繋がっているような感じ、あるいは勝手口の外はホームならぬ庭という感じ。これでも東京都か!山に囲まれた自宅の裏庭に新宿行の電車が停まるなんて!

たまたま目にした光景だが、どうもこれは鉄道名所になっているようで、ネットで検索するといろいろな記事がある。それにしても羨ましいお宅である。東京は広い、今まで知らなかったとんでもないものがある。

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