一番桜を観る ~ 花冷えの奈良歩き
2011/4/3

4月になっても寒さが残る。東北三県で被災された人たちの我慢強さにはほんとうに頭が下がる。確かに3.11から日本が変わったように思うが、何ごともなかったように花は咲く。日曜日、近場の散歩、奈良公園まで出かける。遷都1300年祭の喧噪は終わったが、そこは観光シーズン、外国人の姿はめっきり減ったもののそれなりの賑わいだ。昨年は敬遠していた地元民が動き出しているのかも。高畑の県営駐車場も満杯、東に50mほどの100円/30分(最大800円)のパーキングに駐める。

パーキングは、「春鹿」、今西清兵衛商店のすぐそばだ。妙な小山が付近にあるのは知っていたが、それが頭塔(ずとう)というもの、重要文化財のようだ。入口が分からず、ぐるっと遠回りしてようやく発見、折しも来合わせた30人ほどの団体と一緒に入場する。いくつもの石仏が周りに埋め込まれていて、それが何段も。まるでビラミットのようだ。整備される前は古墳のような盛り土だったらしいが、発掘したあとは石段と頭塔保護のための屋根がつけられている。神護景雲元年(767年)に造られたとのことだから、奈良には古いものがいっぱいある。今回の震災で貞観の大地震が注目されているが、それが869年ということだから、この100年後、1000年サイクルのことなど人知の及ぶところではないのかも。

隣の奈良公園に入ると、やはり春、桜はあと一週間後の感じたが、鳥が活溌に動いている、四十雀、鶫、そして桜より一足早く馬酔木が満開。はて、読み方クイズのような…。シジュウカラ、ツグミ、アセビである。

そして、枝垂れ桜、仏教美術資料研究センター(旧奈良県物産陳列所)のものと、奈良の一番桜として名高い氷室神社。奈良国立美術館をはさんで北と南だが、人の数が全く違う。氷室神社は東大寺や春日大社に向かうメインストリート沿いだし、他に先駆けて満開なだけに目立つことこの上ない。境内はカメラを構える人たちでいっぱい。もちろん無料の花見である。

そして花より団子、地元の人間は阿修羅を観ることもなく興福寺を抜け、餅飯殿(もちいどの)商店街に下る。入口の角地には、左右に頻繁にメディアに登場する店が並ぶ。観光客御用達のようなところがあって、奈良に住んで長いのに入ったこともない。

左手には麺闘庵、ここの名物は巾着うどん、おでん種の餅巾着の餅の替わりにうどんと汁が入っているという代物だ。リバースきつねうどんというところ。干瓢ではなく葱で縛ってある。アイデア先行の嫌いもあるが、味はまあまあ、カレーうどんバージョンもあるというから、発想の珍奇なこと名古屋顔負けだ。カミサンが食したのは子鹿うどんといって、まん丸の揚げに鹿のマーク入り。これには渋い評価だ。出汁は二種類とかで、私とカミサンのは違っていて、確かに子鹿うどんの出汁は今ひとつだ。味もコストパフォーマンスも、すぐ近くのびっくりうどん三好野のほうに軍配が上がるということで意見は一致、二つの店、客層が全く違うということだろう。それはそれで適切な棲み分けをすればいいだけのこと。

右手には中谷堂の高速餅つきによる蓬餅だ。こちらも全国的どころか、海外にまで知られた店だ。観光シーズンの日曜日、店のスタッフも大忙しだ。餅つきパフォーマンス目当ての人だかりが出来ている。蒸し上がった餅米を臼に入れたら、まず二人でゆっくりと杵を打つ。と、真打ち登場、おっちゃんと若い衆の高速餅つきとなる。このコンビにしか出来ない神業。搗き終わったら即売、いま食べる人と持ち帰りの人に列を整理して、まあ、システム化されている様子を面白く眺める。地元民のいやらしさ、小さな蓬餅が一個130円だと、あほらしい気持ちが先立ち買ったことがない。でも、こういうサービス精神と一体の荒稼ぎならまあ許せるかなとも思う。

なんで食い気に走ってしまうのだろう。避難所の生活をさんざんテレビで見ているので申し訳ない気もするが、せめて関西はふつうにしているのも日本を元気にすることではないかと、言い訳がましくなるのも時節柄である。

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