名古屋新名所 ~ ドームの前にテッちゃん
2011/4/17

これが幻の開幕チケット、3月29日、京セラドーム大阪での阪神・中日戦だ。震災でシーズン開始が繰り下げとなり、図らずもこれが開幕戦になった。ところがその後の再延期で結局は紙切れとなったチケット、オークションで入手した上新電機の招待券なので払い戻しなし。まあ、それは仕方ない、恨みっこなしである。それにしても、我がドラゴンズはシーズン早々から打線が湿りっぱなしとくる。こりゃあ捲土重来、名古屋に乗り込んで「喝」を入れなければ。名古屋には震災のためニュースにさえならなかったリニア鉄道館が3月にオープンしている。日曜日、近鉄電車で出かける。全てにおいて自粛ムードだが、動いてお金を使ってこそ経済活性化、ひいては被災地復興支援にも繋がる。

我ながら訳のわからない理屈で名古屋に遊びに行く。リニア鉄道館はあおなみ線の終点、金城ふ頭だ。正式には名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線という長い名前で、元はといえばJRの貨物線だ。旅客輸送に転用というのは大都市圏では多くて、武蔵野線や湘南横須賀ライン、おおさか東線などがそうだ。初乗車でワクワク、もちろん先頭車両の運転席の後ろ。名古屋から24分で終点に着く。片道350円、往復割引はない。

さて、到着した金城ふ頭、名古屋も海までの距離はけっこうある。ここは埋立地、東海地震が起きたら液状化は避けられないだろう。そんなことを思うのも時節柄か。

だだっ広い鉄道館である。広さでは大宮の鉄道博物館に勝るのでは。門司の九州鉄道記念館、京都の梅小路蒸気機関車館、大阪弁天町の交通科学博物館と、てっちゃんはあちこち行っているが、古いものもいいけど、やはり新しいものはいいなあ。リニアと冠するだけに、ここはリニア新幹線の試験車の展示が売りである。エントランスを過ぎると暗い室内にいきなりC62蒸気機関車、300X新幹線試験車、MLX01リニア車両が並んでいるのは印象的だ。かつて世界最高速を記録した車両とのことだ。

続くスペースには0系からN700系まで、新幹線歴代車両が顔を揃える。子供に人気のドクターイエローもあるぞ。と、あれが、ない。居住性はいまいちだがスピードとスタイルでは子供ばかりか大人にも人気の500系が。そうか、ここはJR東海の施設、500系はJR西日本の車両だった。ここに行けば新幹線は全部見られるということにしたら、テツ興奮なのだけど。まあ分社化で各社独自色を出すのも悪いことではない。

もちろん、古い車両もある。SLはもちろん、ボンネットタイプの初代国鉄バスまで。スペースにゆとりがあるので台数も多いし展示もゆったりとしている。屋外の車両は食堂車として開放されていて、家族連れが味噌カツえびふりゃー弁当なんかを食べている。時間があれば、運転シミュレーターやジオラマなのだが、今回は断念。名古屋に戻り、中央線で大曽根に向かう。もちろん、目指すはナゴヤドーム。

昨年の日本シリーズ第一戦以来、どうも私が応援に行くと勝てない。そのうえ、年に一度か二度のことなのに、異様に長い試合に当たる。大阪でのビジターゲームで、延長12回引き分けとか、サヨナラ負けとかがあったし、勝つには勝ったが9回で5時間を超える乱打戦もあった。震災対応特別ルールで今年は延長3時間半がリミットとなり、奈良に戻れなくなることもなかろうとは思ったが、やはり。4時間近いゲームになってしまった。

前日にオークションで入手したチケットは5階席の最上段、ネット裏中央だ。フィールドがすべて見渡せる。こりゃあ、いいや。ナマの野球観戦の最大の面白さは、ボールの動きと野手・打者・走者がすべて視野に入るということ。テレビでクローズアップされた個々の動きの継ぎ接ぎでは絶対に味わえないものがある。もちろん、球場の熱い雰囲気もあるが、今どきの応援はほとんど騒音に近いだけに私はあまり好まない。以前、甲子園球場のライトスタンドで辟易としたことがある。トラキチに囲まれてドラゴンズの応援というのも危険だが、そのとき思ったのは、タイガースファンは野球を観に来ているのか、騒ぎに来ているのかよくわからないということ。極論すればグラウンドのプレーなどどうでもいいというファンの数が多いような気がする。

ネット裏だと投手の球筋が判る。5階から見下ろすので高低は判別できないが、ホームベースのどこを通ったのかは一目瞭然、岩瀬投手のスライダーがベースの一角をかすめ三塁側に逃げるのをこの目で見ると、年俸4億円というのも頷ける。センター側からとらえたテレビ映像では見逃せばボールじゃないかと見えるのに、ストライクだ。こりゃすごい、よほど球威が衰えない限り、判っていても打てないだろう。年間で60イニングの登板として、1イニングあたり20球で計算すると、1球あたり30万円を超える。普通のサラリーマンならひと月の給料だなあ、と訳のわからない計算。

試合は両チーム無得点のまま延長10回サヨナラ勝ち、二死から森野がフォアボールを選び、続く和田のレフトフェンス直撃の二塁打で代走英智がホームを駆け抜けた。まさにグラウンド上の選手の動きという野球の醍醐味が味わえるシーンで幕切れ。いやあ、ライブ観戦での勝利はずいぶん久しぶりだ。ネット裏だと投手戦も面白いが、やはり観るほうにしてみれば打ってこそ野球ということ。

負けたチームの引き上げるのが速いこと、三塁の手前で殊勲打を放った和田を白いユニフォームが囲むときにはもうタイガースの選手はベンチに消えている。1シーズン144試合もやるのだから、彼らも仕事、いちいち悔しがっていても仕方ないということだろう。そこらが年に数回のファンとの違い。
 面白いのはタイガース・ファンにもそういうところがある。彼らは負けても盛り上がる。近鉄特急までの時間、地下街の矢場とんで名古屋名物みそかつで祝杯を上げていたら、来る来る、縦縞のユニフォームを着込んだトラキチたち。別に反省会をするでもなく、楽しそうに盛り上がっている。女性グループまでいるぞ。この格好で新幹線に乗り込むのか。うーん、筋金入り。何しろテレビも地上波でほとんど全試合が放映される大阪のこと、こういうファンあってのことだろう。

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