取立山ふたたび
2011/5/4

マイカー登山者の福音、1000円高速も6月で終わりとなる雲行きだ。震災復興財源ということだから仕方ないことだけど、ちょっと足を伸ばして日帰り登山という芸当は難しくなりそうだ。ゴールデンウィーク後半、最後の片道1000円の遠出、北陸道を北に。

当初の心づもりは銀杏峰(げなんぽう)だった。昨年の取立山に続き白山の展望を満喫するというつもりで調べてみると、今年の残雪の多さで林道の奥まで車が入れない。行程は2時間以上も増す。これじゃ日帰りにはちと苦しい。長く歩くと足指のしびれの不安があるカミサン連れなので安全第一、去年と同じ取立山にあっさり変更。融通無碍なマイカー登山である。

奈良を5時過ぎに出発、この時間だから渋滞もなく9時には勝山に着いた。ここから国道157号を金沢方面に北上、勝山市東山いこいの森キャンプ場が登山口となる。ゴールデンウィークの直前の情報ではキャンプ場の先300mまで除雪されているとのことだったが、予想どおり上の駐車場まで除雪が完了していた。人出が予想される時期だし勝山市としても観光資源を活かさないとということだろう。キャンプ場から先は車一台500円の協力金を収受するのだし。

それにしても今年は雪が多い。冬の北陸豪雪のニュースはその後の大きな自然災害でどこかに飛んでしまったが、駐車場にもまだ雪が残るぐらいなので、登山道はほぼ雪に埋もれている。週間予報を見て連休中のこの日を選んだのだから天候は言うことなしのはずが黄砂が多い。花粉は終わったはずなのに、症状が消えないのはそのせいか。

去年と同じ大展望だ。違うのは雪の量、半月ぐらい季節の進みが遅い感じだ。白山は黒い部分がずいぶんと少ない。さすがにスキー登山をする体力はもうないが、こういう斜面を見るとあの爽快感を思い出す。風もなく頂上でのんびりと人がたまっているのも去年と同じ。人数が少し少ないのは子供連れの姿が希だということによる。今年の場合、雪が残っているという山登りじゃなくて、雪の上を歩く山登りになるから、足許の準備も違ってくるからだ。

足許の準備と言えば、登山靴だけで十分とは判っていたが、カミサンには簡易アイゼン、私はワカンを準備、下りの稜線歩きはスタスタと、つぼ足の登山者を横目に踏み跡を離れて進む。と、調子に乗りすぎたのがいけなかった。北側の谷筋の斜面にそれてしまった。こちらはいちおう滝谷という名が付いているところだし、大滝を経る登山コースは入山禁止となっているのだ。たぶん危険なエリアまで入り込むことはなかろうが、崖で進退窮まる愚は避けたい。5分ほどの藪こぎで小さな尾根を乗っ越し、緩い斜面をトラバースして登山道に戻る。よくあること、私にすれば何でもないことだが、地図も磁石も持たずに山歩きする中高年は危険と隣り合わせだ。谷筋には前にも後ろにもそんな人影が見えただけに、自己責任とはいえ気に掛かる。

そして、ここまで来たら去年と同じ寄り道、石川県に入り山代温泉に。去年は永平寺町から国道364号で山中温泉を通ったが、今年はキャンプ場からそのまま157号で白峰を経て小松に抜ける。能郷白山の肩、温見峠を越えるあたりの157号は道の上を川が流れる名にし負う酷道だが、この加越国境越えは立派な道、越美国境とは大違いだ。手取川の電源開発でダムが出来て整備されたのだろう。このダム湖は取立山からも見えていた。

山代温泉は三度目になる。泊まったことはなく、カミサンの陶芸品漁りのお供である。去年工事中だった明治時代の姿を復元したという総湯が完成していた。さっそく500円払って湯につかる。昔の温泉スタイルということで、中央に浴槽があり脱衣場は浴室の中、浴槽の周りには洗い場はなく、腰掛けるところもない。タイルの上にべちゃっと尻をついてということで慣れないものがある。かなり湯の温度は高い。そうだ、熱さといい造りといい、鯖湖湯がこんな感じだった。あの福島の飯坂温泉も客足がばったり途絶えているのではないかしら。

湯上がりは上層階にあがって休憩する。新しく、木の香りがして快適だ。開けはなった四囲の扉からは心地よい風が通る。ん、これもどこか既視感、怪しげな色ガラスが嵌め込まれているところも道後温泉とそっくり。こちらは坊ちゃん団子がついているわけではないが、冷たくて美味しい水が備えられている。

カミサンは温泉に入らず陶芸店を冷やかしていたが、やはり行き着くところは須田菁華窯、余所の店とはモノが違うということのよう。初代須田菁華の弟子、北大路魯山人は山代温泉の旅館の看板をたくさん彫っているが、値打ちが出すぎたせいか、今も無造作に表に掛けているのはここだけらしい。畳敷きの店に上がりあれこれと眺めたあげく、もうすぐ還暦だからということでぐい飲みの馬上杯、近所の酒のディスカウントショップで買った一升瓶10本分以上だ。器も味のうち、安物の酒がこれで大吟醸になる。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system