南限のスズランを観る ~ ここも奈良市
2011/6/6

行こう行こうと思っているうちに季節が移ってしまうことが何年続いただろう。私の生まれ故郷がスズラン南限の地であることを知ったのはずいぶん若い頃だ。地図に表示された天然記念物の記号、こんなところが、という驚き。しかし、そのときには故郷を離れていたから、頭の片隅にはあっても訪れることはなかった。

そして、ようやく実現、休暇を取って、人も少ないだろう平日のドライブ、名阪国道を経て自宅からわずか1時間ほどの距離だ。

昔、地図で発見したときは一か所だけの表示だったが、隣接して二つの場所がある。奈良市都祁吐山町、宇陀市室生向淵、前者は都祁村、後者は室生村だったが。平成の大合併で行政区画が変わって今は市となっている。いずれも難読地名、「はやま」、「むこうじ」と読む。

私自身は記憶がないが、故郷の榛原は冬の積雪がかなりのものだったと親から聞いた。そこから北に峠を越えたこのあたり、標高は500mほどになる。冷涼な気候、落葉広葉樹の森、それがスズランの自生南限地となった要因のようだ。地図上では向淵の1kmほど南にあるから、吐山のほうが南限である。両者は直線距離にしても3kmほど、まず向淵を訪れる。

案内板がなければ乗り入れるのを躊躇するような狭い道に県道から入る。酷いガタガタ道の訳はすぐに判る。少し入ったところに牛舎があるのだ。牛乳を運ぶトラックがこの道を走るのだと思うが、路肩からはみ出しそうだ。さらに奥まで進むとスズラン群落50mの看板がありその草原が4台ほどの駐車スペース。これは週末には無理、県道との分岐に駐めるしかなかろう。歩いても大した距離じゃない。

当たり前とはいえ群落地の周りには柵が設けられて立入ができない。週末はどうなのか判らないが、そんなに広いわけではないので同じことだろう。柵の外から覗き込むようにしてもスズランはほんの少しだ。今年の開花は遅れ気味と聞いていたから、ちょっと早かったか。

もとよりスズランのはしごのつもり、車を吐山に向ける。こちらは国道369号線に立派な木製の標識が立っている。向淵よりもずいぶんしっかりした車道がついている。長閑な田園風景のなかを抜け谷間に入ったところが群落地だ。なあんだ、こっちはいっぱい咲いているぞ。群落地自体も広い。柵の外側から眺めることは同じだが、斜面に咲くスズランが見やすい位置にある。こちらも平日のこととて誰もいないから、ゆっくりと楽しめる。下を向いて咲く花なのでカメラに収めるのが一苦労だ。毒のある植物なのに、姿かたちはあくまで可憐で清楚だ。

念願の古里のスズランを観て帰宅、週末には渋滞する名阪国道もスイスイである。早く戻ったので、近所の霊仙寺に寄り道。こちらもこの季節の週末は駐車場が満杯となる。数日前には地元テレビ局でバラ園を取材していたようなのでなおさら。梅雨の中休みの平日は花を見るには最適だ。しかしまあ、同じ花でもここまで違う。もっとも、あちらは毒、こちらは棘、似ていないこともないか。

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