稲荷山に登る ~ こちらも1300年
2011/9/18

9月の三連休、遠出も考えたがお天気もすっきりしないので、やめた。それで行ったことのない伏見稲荷へ。電車の駅があるぐらいだから平地のイメージなのだが、地図を見てみたらこれはお参りと言うより山登りに近い。いわゆる東山の一角、伏見稲荷大社の裏山がご神体で、奥がずっと深いのだ。といっても稲荷山は233m、まあ大阪には天保山山岳会なんてのもあるぐらいだから、これだけ標高があれば立派なものだ。

最近はやりのパワースポットというのだろうか、京阪電車伏見稲荷駅から神社に向かう参道は結構な人出だ。老若男女、京都のこととて外国人も多い。蒸し暑くてあまり快適とは言えない天候なのに。駐車場があると思って車で出かけたが、境内にはそんなスペースはない。仕方なく駅近くのコインパーキングに駐める。一日最大800円なのでまあまあか。

境内はあちこちで工事中、楼門は修理が終わったようで綺麗に出来上がっている。派手なものだ。本殿は工事中で横に仮本殿なのでいささか格好が悪い。おいなりさん鎮座1300年の記念の年だそうで、記念事業としての改修が大がかりに行われているようだ。来月には大祭があるようで、それまでには間に合わせるんだろう。それもあってか、この人出。

伏見稲荷とくれば朱塗りの千本鳥居、大社の裏手の稲荷山へ向かう参道は朱いトンネルだ。あまりに密集しているので風通しが良くない。登り道、汗が滴り落ちる。稲荷山を一ノ峰と言い、その山頂に至るまで随所に社がある。どことも狛犬の代わりに狐である。千本鳥居の抜けたところの熊鷹社、池の畔の社にはミニサイズの鳥居、その上で昼寝を決めこんでいる狐、じゃなかった猫、1300年など知るものかというのんびりした姿がなんとも良い。

大鳥居からミニサイズまで、もちろん信心深い人たちの寄進だ。30cm級の太い柱だと、初穂料は100万円を超える。細くなるにつれてお値段も下がり懐具合との相談だろう。大きなものは法人の名前がほとんどで、宗教法人に対する寄付ということになるのだろうか。控除対象になれば税金を納めるよりもマシという判断なのかも。稲荷は商売繁盛祈願が売りの神さんだし、挙がった利益の圧縮にも繋がり一石二鳥、神社も潤う、鳥居屋もウハウハ、いいとこずくめ、国税庁一人負けの図式か。1300年の一稼ぎに鼻息も荒くなろうというもの。そう思って見ると、目新しい今年建立の鳥居が目立つ。

山頂を巡る周回コースの起点となる四ツ辻、茶店が並び多数のベンチも置かれた展望スポットだ。ポンポン山あたりの西山の連なりを遠景に京都市街が広がる。茶店の定番は当然いなり寿司、京都観光価格そのものなので目もくれず、行きがけに買ったコンビニ弁当でランチタイム。

ぐるっと一周すると結構なアルバイトだ。どこかのラグビー部か、トレーニングらしい若者もいる。毎日ここを駆けていたら足腰だけでなく心肺機能の強化に繋がること間違いない。ご神体の山に登るのに入山料も不要だ。どこでもがっちりまきあげる京都らしくない。大神(おおみわ)神社はしっかり初穂料を徴収しているのに、これは意外なことだ。

四ツ辻からは伏見稲荷大社には戻らず、京都一周トレイル東山コースに入る。大神神社を起点とする山辺の道をまねたハイキングコースで、道の付き方もよく似ている。もっとも、歴史の長さは比ぶべくもないが。

この道に入った途端にそれまでの喧噪が嘘のようだ。急な坂道を下りきったところは住宅地の外れ、すぐに泉涌寺(せんにゅうじ)。おっと、こちらは拝観料500円、さらに境内の別施設は別料金という京都の寺のいつものパターンだ。こちらも初めてなので、いちおう入山。有料ということもあってか、境内の人影はまばら。大阪人よりもケチな京都人だから当然か。

泉涌寺の山内にある戒光寺、ここには10mもある釈迦如来立像が本尊として祭られている。ご丁寧に山門前にはその旨の客引き(?)の掲示がある。しかも、拝観料はいただきません、蝋燭と線香(各50円)だけで結構という。ここまで書くのは他の京都の寺の悪辣ぶりが偲ばれるが、それはともかく立派な仏様である。鎌倉時代の運慶・湛慶父子の合作、首の辺りに血が流れたような痕があり、「身代わり丈六さん」とも呼ばれているとのことだ。堂内内撮影禁止だが、置かれていた京都観光の無料広告誌に写真があった。

予定ではさらに北に進み清水寺の裏山、清水山に登って三条か四条から京阪電車で戻るというつもりだったが、いったん下ってしまうとこの暑いなか低山に登りなおす気にもならず、東福寺からの戻りとなる。いちおう格好は山登りでも、そもそも心構えが違うから気合の入り方も違う。ゆえに、この程度でくたびれるということになってしまうのか。低山あなどるべからず。

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