続・もったいない、もったいない
2011/10/16

ホームページに書いたことに思わぬ反響をいただくことがある。コアな音楽ファンや音楽家自身ということが多いが、予想もしなかったのは「どこで修理されたのか、是非教えてほしい」というBOSEオーディオの一件、問い合わせは一人や二人ではなかった。メーカーの部品切れ修理打ち切りで、同じように困っている人の多さに驚いたものだ。古くなったら買い換え、使い捨て同然という風潮は、少しはエコ指向に舵取りの気配もあるが、大勢は変わってはいないようだ。そこで、「もったいない」を世界に広めたワンガリ・マータイさんを追悼して、第2弾はテレビ1台と電池2個というお話。

中日ドラゴンズの連覇が近づき、帰宅するとすぐにスカパー!の放送を見るのが日課になっている。ところが、我が家にはテレビは1台、ゴールデンアワーともなれば、おとうちゃんはCSチューナーからNECのSmartVision経由でのパソコン視聴である。これだって友だちから貰ったものだが、Windows2000の頃は問題なかったのに、XPになってからは調子が悪い。ええい、この際、専用テレビだ、アナログ放送終了で不要となったのが山ほどあるはず、郊外のリサイクル業者にはブラウン管テレビが都市鉱山よろしく夥しく野積みされているぐらいだ。

オークションを覗くと、案の定、選り取り見取り状態だ。製造年が比較的新しい14型液晶で1000円~2000円という相場だ。状態の良さそうな2005年製のSONYを購入、都市伝説となったソニータイマーの心配はあるが、新品でもなし、2050円なら気にすることもなかろう。

さっそく届いた小型液晶を我が家の37型液晶と並べる。必要なときに出して、使わないときは大画面の裏に格納、これはなかなか具合がよい。ブラウン管テレビの奥行きがこんなところで役に立つ。さて、視聴のほうでも、どちらも観たい長居スタジアムの日本代表ワールドカップ予選とナゴヤドームの天王山ミルミル戦を二元で観るとか、ナゴヤドームの読売戦と同時に神宮球場のヤクルト・阪神戦を観るとかの芸当が可能になったのは副次効果だなあ。もっと早く買えばよかった。

次は電池2個の話。それは、止まってしまった腕時計の電池交換を自分でやっただけのこと。道具はマイナスドライバひとつ。これで裏蓋を開けたら単純極まりない構造が露出。なんだ、小学生でも出来る作業じゃないか。硝酸銀ボタン電池はオークションに多数出品があり、バルクセールなら一個10円ぐらいのものだ。こちら商売じゃないし100個買っても仕方ないので単価60円で手を打つ。2個120円、送料60円(郵便書簡)で180円なら百均よりも安い。はじめ近所の家電量販店で尋ねたら、ひとつ525円と宣う。「そりゃないでしょ、高すぎ、やめとくわ」と憎まれ口をたたいて帰ってきた嫌な客だ。もちろん品質との兼ね合いだが、ロレックスじゃあるまいし、完全防水でもなし、3000円ほどの時計の電池交換に500円、1000円かけてどうする。

職場の近くの時計屋のおっちゃんがときどき路上でティッシュを配っている。電池交換は当店にということで、私は一度持ち込んだことがあり、1000円というお値段だった。
 それが相場だとは思うが、限りなくゼロに近い材料費、実際にやってみると判る素人でも1分もあれば完了する作業だ。売上原価率にすると1%、とんでもない数字だ。こりゃ数をこなせばボロ儲け、街頭でティッシュを配りたくもなるのも判る。

このおっちゃんの技術のほどは知らない。螺旋式の時計の分解掃除で動かなくなった時計を復活させる技量があっても、悲しいかな、それを活かす場面は少ないだろう。モジュール化されたムーブメントのパーツ交換などプロ・アマの差など全くない。それがいいのか悪いのか、ありきたりの技術者の生きる道は少なくなっているのだと実感する。掛時計と違って、辛うじて腕時計は裏蓋がブラックボックスを守っていても、ポンと開けられたらお終い、板子一枚の地獄がそこにある。パラダイム変換、産業構造の変化なんてそんなものかも。とまあ大袈裟なことで、早い話が自分がケチなだけ。もっとも、それは大阪では褒め言葉の一種なのだし。

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