宍道湖・中海てっちゃんツアー
2011/11/19

土曜日に米子での仕事、日帰りできなくもないが、駅前の格安ビジネスホテルに前泊する。空気を泊めるよりはマシとはいえ、一泊3000円を割る料金で大丈夫なんだろうかと心配になるほど。それで、酷いかと言えばそうでもない。しばらく前までは女性専用だったとかで、部屋も小ぎれいである。これはお得。
 そして、ゆっくり朝寝をすればいいのにテツは早起きである。まだ明けやらぬ米子駅から出雲市行きの普通電車に乗り込む。宍道湖・中海てっちゃんツアーの始まりだ。JR山陰線、一畑電鉄、松江・境港直通バス、JR境線で米子に戻って午後の仕事に間に合わせるという算段だ。果たして、これを観光と言っていいのか。

松江を過ぎて明るくなってくる。玉造温泉までは以前に乗ったことがある。木次(きすき)線が分かれる宍道駅の次、荘原駅に奥出雲おろち号が停まっているではないか。はて、この駅に留置しているのか。慌ててシャッターを押す。この季節列車は11月23日までの運行だ。この列車は山間部の木次と備後落合の間の運行なのだが、週末は区間が延長されて出雲市から8:45の発車だ。それまでここに待機ということか。トロッコ列車、紅葉の見頃は12月初めまで続くのに、寒くなったら客足も遠のくということなのだろう。出雲市駅はもうすぐだ。

廃止になった国鉄大社駅の写真で見るイメージがあるせいか、高架ホームになった出雲市駅は何だか拍子抜け。乗り換えと朝ご飯の買い出しで駅前に降り立つ。出雲大社の屋根を摸したファサードだけが妙に浮いた感じだ。これなら一畑電鉄の駅のたたずまいのほうがすっきりとする。松江しんじ湖温泉行きの電車までには少し時間があり、待合室でサンドイッチを頬張る。このローカル私鉄は映画RAILWAYSの舞台になったから、あちこちにその名残がある。私は見ていないが、中井貴一演ずる49歳で電車の運転士になったサラリーマンが主人公の映画だったはず。

うっかりしていて一畑口のスイッチバックの写真を撮り忘れてしまった。平地なのにスイッチバックとはいかに。これは松江方面、出雲市方面から来た線路がここで合流し、一畑口から北へ一畑薬師方面に伸びていた名残だ。先は廃線になってしまったから線路をまっすぐに繋いでもよさそうなものだけど、そこまで設備投資する必要も資金もないのだろう。かくしてテツ好みの駅が残る。

約1時間、宍道湖のほとり、のんびりした田園地帯を2両編成の黄色い電車が走る。このあたりで作っているのだろう、前に食べた島根産コシヒカリの美味しさを思い出す。松江市街に近づき温泉旅館の建物が目につきだしたらもう終点の松江しんじ湖温泉駅だ。隣には大社行き直通電車が停まっている。意外、ガラス張りの洒落た駅舎、駅前も綺麗に整備されていて、浸からなかったが足湯まである。
 小雨の中しばらく待つとボディにゲゲゲの鬼太郎のキャラクターがペイントされたバスがやってくる。中海の大根島を経由して境港まで40分。ジェットコースターを思わせる傾斜の江島大橋を渡ると鳥取県。東洋一のPCラーメン橋ということだが、英語とドイツ語のチャンポンなところが可笑しい。
 境港駅は遠目にはダムの擁壁のように見える。でも近づくとこれは駅ではない。その隣の小さな建物がJR駅で、こっちはフェリーターミナルだ。隠岐への航路はここと島根側の七類(しちるい)港から発着する。

バスが境港に着いたのは10時過ぎ、そろそろ観光客が増える時間だ。まだ雨は残っていて水木しげるロードも閑散としている。格別妖怪に興味はないので、道ばたの妖怪像をちらちらと見ながら早い昼ご飯の場所を探す。名物の海鮮丼でもと思ったが、店はあるものの開店までには間がある。仕方なく開いていた鬼太郎マグロらーめん本舗に入る。普通のラーメンにマグロの刺身がのっているという奇妙なものだ。味は可もなく不可もなくというところか。マンガひとつで観光客がやって来てお金を落とす。この町の人は水木しげる氏に足を向けては寝られない。

米子からの折り返し電車が到着。これは目玉おやじ列車だ。外装だけではなくシートのデザインも目玉おやじである。かつて廃線かという騒動のあった境線だが、鬼太郎のおかげか鉄道ブーム再来のおかげか、生き残りに成功したようだ。歴史をさかのぼれば、ここは山陰地方で一番早く開通した鉄路、境港から米子を経て御来屋までの間である。米子駅前には記念碑もある。

かくして境線完全乗車、午後の仕事に向かう。米子駅から歩けなくもないが、そこはテツ、再び折り返し電車で二駅、富士見町駅に戻る。この富士見町は当然のことながら伯耆富士、大山のことである。と、大きなスロープは望めるものの雨は上がっても山頂付近はまだ雲の中だった。

数日後、自宅でテレビを見ていたら件のRAILWAYSを放映していた。「おお、これ、こないだ乗ってきたで」とカミサンに言うと、「この電車、そんなとこにあるの」と地理音痴まる出し。まあ、地元でもなければ一畑電鉄なんて知らないし、読み方すらわからないだろう。テツのなせるわざか。その映画の途中に挟まれるCMではどうもRAILWAYS2が近日公開されるらしい。鉄道ブームで二匹目のドジョウを狙った企画だろう。今度は三浦友和が運転士役らしい。その映像の電車と遠景の山並みですぐに判ってしまった。今度の舞台は一畑電鉄じゃなくて富山地鉄だ。ああ、山屋のてっちゃん。

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