安芸の宮島に登る
2011/11/26

一週間前は山陰、そしてこの金曜日は瀬戸内に、広島での仕事だ。そして週末は居残りで山登りを目論む。新幹線なら大阪まで1時間半かからない悠々の日帰り圏内だが、折角の機会、二度目の宮島、もちろん弥山に登るのは初めてだ。中学生の頃、広島に来たときは夜行急行ななうら号で呉線回り、それを思い出すと新幹線のスピードは圧倒的だ。

JR山陽線のほうが速いのは判っているが、ここは広島電鉄だ。市内のホテルのすぐ近くに路面電車の停車場があるし、全線乗り放題に宮島への乗船料込みで一日券840円というのはお値打ちと言える。さすがに市街地の路面区間はゆっくり、最初に来た頃は己斐(こい)という駅名だった西広島からは専用軌道に入りスピードアップ、それでも市内線の乗り換えを含め1時間以上はかかったかな。昔は各地のお下がりの車両が走っていたように思うのに、今は二両連結の新鋭車両が増えている。またしても路面テツをしてしまう。

お天気はよく、車窓からの眺めの中に海峡越しの宮島が入って来る。弥山の姿もはっきりと判る。宮島行きの船は10分毎のピストン運航、今日は一日紅葉狩りの観光客で島は賑わうのだろう。午前の満ち潮の時間、厳島神社の鳥居も本殿も水の中だ。

弥山にはいくつかの登山道がある。船着場からは一番遠い大元コ-スを登る。ここが一番静かだろうということと、山頂部の大岩壁を眺めることができることで選択。「宮島の山は、海抜0mからの登山です。低い山だからと甘く見ないで下さい」と観光案内に書かれているのは百も承知、海抜530m、まあ六甲山だって900m以上の標高差があるのだから、やはり大したことはない。神社周辺の雑踏を離れて山に入る。紅葉は残っているがそろそろ終わりの頃だ。

さすがに歴史のある山だから登山道も立派なものだ。石段が多いのが難点と言えなくないが、登る人が多いから必然の結果なんだろう。道の途中には大きな岩が随所にある。雨露を凌げる岩小屋になっている場所も多い。その最大級が岩屋大師だ。少し背を屈めなければならないが、20人ぐらいは優に寝泊まりできそう。大峰山系にはこういうところがいっぱいあるが、ここも同じく山岳信仰のルーツがあるのだろう。

2時間足らずで辿り着くのが弥山の西側、双耳峰の片割れ駒ヶ林だ。すぱっと切れ落ちた断崖を回り込んでてっぺんに着く。露岩の上には日向ぼっこよろしく登山者の一団が休憩している。広島の市街もすぐ近くに見える。南側は大小の島が点在するいかにも瀬戸内の眺め。もうすぐ12月というのに暑いぐらい、のどかな山登りだこと。普通ならここでお弁当というところだが、行程が短いので食べ物は蜜柑とお菓子だけ。下ったら穴子飯が待っている。

隣の弥山山頂の展望台が見えている。双眼鏡で眺めるとずいぶん人がいるような気配、混雑した山は願い下げなんだが、やはりそちらに向かう。双耳峰の鞍部で大聖院コ-スが合流すると登山者で大賑わいだ。ここからは山登り姿ではない人たちも混じってくる。子どもも犬も、それに外国人の姿も。日本三景、世界遺産とくれば当然のことか。近くに岩国基地もあるからその関係もあるのだろう。

山頂はほとんど雑踏状態、巨岩の回りでは弁当どころか大宴会風のグループもいるぞ。展望台で四囲を見渡し時間を過ごす。ここからだと江田島が近い。弥山本堂、霊火堂といったスポットを回って大聖院コ-スを降りる。山頂から北に一直線に尾根伝いに紅葉谷に降りることも考えたが、どうも降り口が不明、仕方なしにごく普通のルートとなる。パンフレットなどにも案内がないから通行止にでもなっているのかも。

大雨の被害があったらしい。大聖院に下る谷筋は土石流で崩壊した後、道が付け直されている。これも六甲山と同じ、標高は高くはなくても川は海まで一気に駆け下るということだろう。下りの途中から俯瞰する厳島神社はだいぶ潮が引いてきている。干潮は午後4時過ぎとのこと、遅いお昼を食べた頃には鳥居まで歩けるようになるだろう。

さあ、昼ご飯、土産物屋や食事処が立ち並ぶ商店街は昼時を過ぎてもごった返している。店頭で焼く穴子につられて暫し順番待ち、注文は定番、穴子飯と焼き牡蠣だ。観光地価格のような気もするが、もちろん味は悪くない。山登りのあとのビールが喉に染みる。何だかこの楽しみのために山に登った感じもするのである。

朝から2mは潮位が下がっているだろう。鳥居の根本まで露出していて歩いて行ける。厳島神社だけの観光だったら干満の差を目にすることもないだろう。これも半日以上の滞在、弥山登山の御利益かな。さすがに帰りは速いJRで、西広島からは一日券の広電、妖しくライトアップされた原爆ドームに寄り道、近くのデパートでカミサンに土産の熊野化粧筆を買う。なでしこジャパンのメンバーがご褒美に貰って一躍有名になったあれである。週末は留守ばかりの秋、これで機嫌を取り結ぼうという姑息な算段なのだ。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system