我が家から山登り ~ 矢田丘陵ハイキング
2012/1/9

三連休、次男のセンター試験が目前に迫っているのでカミサンは出かける気にならないようだが、こっちが試験を受けるわけじゃなし、気分転換も必要と我が家からのハイキングを敢行することにした。自宅から歩き出す山登りなんて始めてのこと。一度やってみなくちゃと思っていた。新しい世界測地系の1:25000地形図、近所の図葉をつい最近買い直したばかりだ。

普段は車で行く近くのスーパーでお弁当を買って、山裾の住宅地を抜けていく。駅からは自宅と反対方向なので通ったこともない道だ。このあたりは1:10000地形図の領域。市街地は1:25000ではちと厳しい。すぐに住宅地を抜けて矢田丘陵の一角に入る。家の墓がある四天王寺大和霊園越しに富雄の市街と自宅マンションが見える。主稜線まで自宅から1時間とかからない。ここで立派なハイキングコースに合流する。ところが…

ハイキングコースの案内板の横に「迂回路」を示す看板が立っている。この先、矢田丘陵の主稜線を辿る道の途中に通行禁止区間があり、いったん生駒側に下りて登り直すのだという。なんてこと。でも、通行禁止区間のほうから走ってくるオジサンもいるから、突っ込んでも大丈夫そうではあるが、大したアップダウンでもなし、ここは素直に迂回路をとる。

東生駒のさつき台住宅まで下り、そこから登り直しとなる。第二阪奈道路のトンネルの上あたりで主稜線に戻る。予定外の回り道でお腹も空いた。ここで、腹ごしらえ。ゆずジャムを熱湯で溶かし魔法瓶に入れてきたので、それで暖まる。

周りを見渡して見ると、ここにも件の迂回路看板がある。樹木に何かプレートがついているので、そばに行ってみると、柿の木の生態観察をしているので半径5m以内には立ち入らないようにとの注意書き、でもね、5m以内に近づかないと読めないという間抜けさ。と、そのそばには三角点みたいだが、ちと違う石標、よく見ると「近大」の文字が。これで何となく合点がいった。土地所有者の意向により通行止とかの説明だったが、その該当箇所は近畿大学の裏手、富雄のキャンパスは近大農学部だから裏山は演習林になっているのか。それでハイキングコースが一部通行止なのか。土地の所有者名は看板では明らかにされていなかったが、私の推測が当たっているのではなかろうか。

合流点からわずかで国道308号が越える榁木峠、何度か車で通ったことがある名にし負う酷道だ。枚岡から暗峠を越え、竜田川を渡り、平城宮に至るまでにもう一山越える。二つの峠越えはいずれも対向困難な幅員、峠付近はローギアでないと危ない傾斜だ。行き違いに難渋する車を横目に国道を横断し矢田丘陵のハイキングコースは続く。

目立ったピークなどないが、いちおう山塊の名前となっている矢田山(343m)に足跡を印す。ハイキングコースのルート上にはないのできっと見落とす人が多いだろう。この最高点の近くに展望櫓があるので、そちらが実質的な頂上ということになる。もちろん眺めはこちらのほうがいい。

次男が通っていた中学・高校はこの矢田丘陵の麓にある。大和郡山市だ。毎年、極寒期に矢田山縦走という学校行事があり、学校をスタートして矢田丘陵を回遊して戻る山岳マラソンをやっている。高校生になってからは毎日の自転車通学が功を奏し、タイムは年々改善したらしい。裏山とはいいながら山道を走らせるのだから学校側も準備や安全確保が大変なことだろう。

走る人がいれば漕ぐ人もいる。自転車でハイキングコースを行く人の数が多い。矢田丘陵はマウンテンバイクの人気スポットでもあるようだ。MTB Field Codeなる看板があちこちにあり、自然や登山者との共存を促しているようだ。山仲間にMTBに転じた人がいるが、平坦路はいいけど、登りや急な下りは大変だろうなあ。

もうひとつの名前のあるピーク、松尾山(315m)が矢田丘陵の南端、最終目的地になる。頂上にはテレビ塔が立っていて、脇に三角点が遠慮がちに笹に埋もれている。最後の登りは少し急だ。頂上の放送施設の周りを一周して三角点を探したり、稜線伝いの踏跡の有無などを確かめていたら、すぐ後から来ているはずのカミサンが現れない。あれ、登りの一本道なのに。私の到着後、1分足らずで着いているはずなのに。

私がぐるっと回っている間に姿を見失い、変な方向に迷い込むということは考えにくいが、いないものはいない。後から登ってきた人に、こうこうの格好の女性を見なかったかと聞いても知らない。また山頂付近を一周して大声で呼びかけるも応答なし。どういうこと、こんな里山で。時刻は午後3時、日暮れまであと2時間、ここで見つからないと最悪は行方不明者、警察に届出だ。油断、なんということ。

携帯電話はありがいものだ。カミサンが持ち歩いているかどうか不明だが、とにかくコールしてみる。応答なし。二度、三度。しばらく経って着信のバイブ、おお、連絡が取れた。なんと、頂上に私の姿が見えなかったので、松尾寺まで下っているとのこと。ちょうど放送施設の裏手に回り込んでいるときだったのか。一人で先に下りるなんてことをするわけがないだろうと、呆れるやら腹立たしいやら。これだから素人はと思うが、後続の確認を怠った私のミスである。こちらの常識で判断することがそもそも間違いなのだ。

松尾寺は厄除けで有名なところ。矢田寺は紫陽花で名高いが、こちらも花の寺の一つだったはず。いちおう私も後厄のようだが、小銭を賽銭箱に放り込んで一波乱の無事収束を御礼。ここの厄払いはお金を払って申し込むと朱い襷を首に掛ける。そのまま別院に行くとそこで祈祷、改めて厄除祈願料を収受するというシステムになっている。これは以前にカミサンが長男の厄払いに来たときに知ったことだ。鷹揚な奈良の寺にしてはがめついやり方、まるで京都のようだ。

参拝者が多い寺なのでJR大和路線方面へのバスが発着している。それに乗ると遠回りになるので、近鉄生駒線の平群駅まで歩く。これがなかなかワイルドな道だ。松尾寺から法隆寺方面への道をすぐに右にそれ、山腹の巻き道を登り、山間の白石畑という集落に出る。そこから車道を下れば平群町椿井を経て近鉄生駒線の竜田川駅だが、平群駅への最短ルート、西に一直線に下る山道をとる。落葉が積もり、茅のトンネルのようになった急な坂道である。徒歩ならではのショートカットだが、あまり利用はされていないようだ。そりゃそうだろう。松尾寺まで辿り着いたら、それで終わりというのが普通だろうし。

生駒の山に日も傾くころ、ようやく里に下りる。普段は車で通る平群バイパス、新鮮野菜を買いに来る道の駅にも近い。バイパスを渡るところの正面は最近出来た丸亀製麺の店。ちょうど小腹も空いたし、素通りは出来そうもない。帰路、富雄まで290円、これはずいぶん安上がりのハイキングである。

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