MacBookAirを開ける
2012/2/12

MacBookAirに一目惚れで購入してからもうすぐ一年、最廉価モデルで充分と思っていたらストレージ不足が深刻になってきた。中古のデジタル一眼レフを格安で買ったことが拍車をかけた。クラウドのサービスを使って写真は放り出せば済むことだけど、それも面倒。とどめは地図ソフトの買い換えだった。やはりローカルで使えるほうがいいのでずっとプロアトラスを愛用しているが、そろそろ新しいものにということで 最新のSV7を購入した。思ったとおり、全部の地図データが収容できない。私のSSDは64GB、SV7では詳細図がずいぶん増えてとても無理とわかる。まあ、使いそうな範囲に限定してインストールする手もあるが、と、あちこち地図を眺めていて驚いた。とんでもない間違いを発見、なんだこりゃ。

山登りにこの地図を使うことはないにしても、これは無茶苦茶だ。北アルプス槍ヶ岳がとんでもない場所に表示されている。3180mの鋭鋒が槍沢カールの中ということはないだろう。うーん、これはいかん。その後、販売元とのやりとりがいろいろあって、結局は返品対応ということになった。
 私が買ったのは製品版、1年間の更新パッケージ付のものを買わない限りミスの修正も対応されないということだった。そんなことどこにも書いていない。土地利用の変化や行政区画の変更なら判るが、バグ修正が有償なんて聞いたことがない。私とてソフトウエア会社を虐めることは本意ではないにしても、アンフェアな対応に黙っているわけにもいかず、アドレナリン噴出で返品に漕ぎ着けた。そのままインストールしたソフトを使い続けることもできたが、それじゃヤクザと変わらない。改めて更新パッケージ付を買い直して一件落着。早速、更新データを当てたらあるべき位置に槍ヶ岳が表示された。きっと他にも誤りはあったと思うが、そのリストは開示されていないので何とも言えない。せっかくの優れたソフトウエアが低レベルのユーザー対応では台無しになる。

それでMacBookAirのストレージ問題はそのまま。このプロアトラスSV7をフルインストールするには容量拡張しか方法がなさそうだ。しかし、世の中よくしたもので、ちゃんとそういうツールがあった。メモリー増設どころかアップルのマシンは改造を許さない設計思想だと思っていたら、アメリカで換装用SSDが商品化されている。OWCというベンダーでアップルに特化してメモリーや周辺機器を出しているようだ。怪しいのではないかと半信半疑だったが同社のサイトには換装手順のビデオクリップまであるし、日本国内でも換装に成功したユーザーの報告がいくつもある。輸入販売もされているようだが、当然のことながら値段は高め、思い切って個人輸入に踏み切る。今後巨大なソフトを入れるつもりもないから180GBのもので大丈夫だろう。これでも今までの3倍の容量だ。もともとのSSDの外付けユニットとセットで購入し送料込$337.27、円高の恩恵、26,619円で済んだ。配達時に関税を支払うのかと思ったらそれもなし。

製品に付属する突端が星形のドライバーで裏蓋を外しSSDを取り出すまでは良かった。ところが、ここで問題が発生。SSDの装着がビデオのようには行かない。もともとのSSDよりも少し厚みがあるのと微妙に長さも違う。SSDのスペースに収まらず固定用のネジが着けられない。これは困った。個人輸入は失敗か。力任せに嵌め込んで壊してしまったら元も子もない。しばらく悪戦苦闘したが匙を投げた。あーあ、元通りに戻すしかないかと諦めかけたとき、どうしてこのSSDには表面にウレタンのバッドが付いているんだろう。蓋さえ閉まればこのまま使えるのではと、蓋をのっけてみたら何のことはない浮き上がることもなくピタリと収まる。元通りにネジをはめて、リカバリーUSBで起動すればちゃんと180GBのSSDを認識したではないか。これで使ってみて問題が出なければそれで良し。

ハードウェアとソフトウエアは一体のもの、徹底的に拘りをもって完成度の高いプロダクトを提供するというアップルの思想は熱狂的な信奉者が多い。このMacBookAirもそうだし、iPod、iPhone、iPadも言わずもがな。でも、これらの画期的な製品で市場を席巻してきたスティーブ・ジョブズは死んだ。
 iPodで初めてアップルの世界に足を踏み入れた私がとうとうアップルのPCを使うようになってそろそろ一年、結局のところMac一色にはならず、Macの上で相変わらずWindowsのソフトウエアを使っている。天国のジョブスは怒るだろうが、エミュレーターや換装用SSDを提供したメーカーはえらい。いかに天才といえど、一人で何から何までやろうとするのはどだい無理だ。プラウザはSafariの鈍重さを嫌って最近Chromeに乗り換えた。BS放送を録画したDVDだってWindowsアプリでないと再生できない。件の地図ソフトにしてもMac用のめぼしいものはない。MacBookAirに装備されたソフトウエア群で辛うじて使っているのはメーラーぐらいなものだ。いろいろの分野のアプリケーションでMac陣営がトップのものと言ったらiTunesぐらいかも。それでもMacを使うのは洗練されたハードウエアの魅力と、Windowsが逆立ちしても及ばないフォントの美しさだろうか。

iPhoneを筆頭に、世の中はスマートフォンが全盛になりつつあるし、最近はうちの役員会も資料はiPadでということになっているらしい。そんな流れに私は違和感を覚えるし、自身がiPhoneやiPadを使うことはたぶんないだろう。ベストセラーになったジョブズの伝記を人に借りて読んだとき、その答のようなことが書かれていた。
 それはiPad、iPhone、iPadという立て続けのヒット商品とMacとは根本的に違うところがあるということだ。つまりMacを造る側や使う側にあるクリエイティブな精神が、iXXXの製品群では希薄になってしまったということだ。聴く、見る、読むに偏ったツール、ユーザー側は与えられるものを受け容れるだけに成り下がったという批判でもある。今は亡きジョブズがかつて嫌悪したビッグブラザーになろうとしている(いた)のではないかというパラドックスである。これはジョブズにも堪えた批判のようで、製品開発面での試行も始まっていたようだが、もはや彼はいない。どんな世界が数年後に出現するんだろう。

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