大ヒット、生駒山麓酒蔵ハイキング
2012/2/12

ご近所ウォーキングが続いている。寒い時期に早起きして山登りするのもおっくうだし、準備も手間がかかる。それで安易に近鉄沿線駅長おすすめハイキングに乗っかる。これは面倒がないので助かるのだ。お仕着せのコースだけど、地元にこんなものがあったのかと、初めて知るメリットもある。そして何より、今回の企画には酒蔵見学、新酒の試飲が組み込まれているのだ。これは行かない手はない。

スタートは生駒駅、自宅最寄りから二駅、カミサンは切符だが私は通勤ルートだから定期券でよい。駅前からケープルカーの駅を横目に宝山寺参道を登り始める。これはいきなりの階段なので結構きつい。初詣には何度か来ているが、そのときはケープルカーに乗っている。10時から11時がハイキングの受付時間、その時間に行けばマップをもらえるというわけで、参道の登山者が途切れることはない。ときならぬ参詣ラッシュという風情だ。いつもに比べてオヤジ率が高いのは最後に酒蔵が待っているからかな。

宝山寺は長男の大学受験のときに合格祈願で来た。見事現役合格を果たしたが、二匹目の泥鰌を狙った次男のときは空振りだった。もとより神頼みのつもりなどないし、浪人受験中だけど絵馬も買わず僅かな賽銭だけで済ます。勉強するのは本人だし、傍がバタバタしても始まらない。
 さすがに初詣時期よりも人は少ないし、ハイキングの人たちは早々に先を急いでいるのか、本殿に上がって内陣を見学する余裕がある。先を急ぐわけでもなし、のんびりと境内を回る。
 宝山寺は生駒山の中腹、奥の院の裏手には瘤のような小山がオーバーハングとなって、そこに弥勒菩薩が祭られている。落石の危険があるからだろう、鉄柵とネットフェンスで立入禁止になっている。となると入ってみたくなるのだが、それもならじ、我々も予定のコースを辿る。

ここから南へ中腹を捲くように車道が付いている。こんなところに人家が点在する。別荘のようなものもあるし、常時居留の大邸宅もある。かと思えば老朽化した家屋が古家付き土地という形で売りに出たりしている。人家の途切れるあたりではゴミの不法投棄が目立つ。古タイヤに始まり、果ては冷蔵庫や車両まで。生駒市も困り果てていることだろう。捨てるのはたやすいが、谷から回収となれば大変なコストがかかる。こういう輩は捕まえて腕の一本も落とすぐらいが相当だ。

しばらく山腹の水平道を進むと、斜面が開けて地名も鬼取町となるあたり、こんなところにレストランがあるから不思議だ。ほとんど最奥の人家である。名前をラッキーガーデンという。この店の存在はカミサンから聞いて知っていた。スリランカ料理のレストランだという。カミサンは友だちとランチに一度来たことがあるらしい。半信半疑で麓から細い急坂を車で登ったそうな。店主がスリランカの人、奥さんは日本人で、スリランカのカレーなどを出すらしい。物珍しさもあってメディアは取り上げるだろうが、わざわざここまで来るリピーターがどれほどいるのか、ちょっと謎である。レストランの裏手には羊が飼われている。ひょっとして、食材になるのだろうか。これまた謎。今回は生駒駅で買ったサンドイッチと柿の葉寿司があるので、レストランには入らず、一気に下る。

棚田と農家、典型的な里山の風景の中を下ればやがて住宅地の端になる。そこは青山台という名前で、大阪に通勤するサラリーマン世帯の戸建てである。昔からの村と、新興住宅地がコントラストを見せる。その住宅地から細い道を登ると今度は墓地となる。往生院、平安時代の僧、行基を火葬したところとのこと。南北朝時代のものという五輪塔が残っている。

ハイキングマップでは次にむかうのは竹林寺、墓地から適当に下れば着くと思ったのが間違い、168号線バイパスに出てしまった。これは違うと引き返し、方向を確認して北へ向かう。住宅地のはずれが一番迷いやすいのは何度も経験していることだ。我ながら全然学習効果がない。まあ、ご同輩もいて、住宅地の中をウロウロするハイカーがいっぱいだ。

往生院は廃寺のような趣きだったのに比べると、竹林寺はずいぶん立派だ。小さな本堂は綺麗だし、ログハウスふうの社務所まである。寺の脇には行基の墓ということで、碑の奥にこぢんまりとした盛り土がある。何となく古墳を思わせるものがある。この時代(奈良時代)の僧で墓所がはっきりしているのは珍しいそうだ。そして本物の古墳もある。前方後円墳の後円だけが残る小山だ。この類のものは奈良にはあまりにも多くて、いちいち気にもならない。

第二名阪の壱分ランプの下をくぐって次のポイントの往馬大社。ここも何年か前に初詣に来たことがある。そして、いよいよ。バイパス、竜田川、近鉄生駒線の踏切を続いて渡り、狭い路地を進むと、目指す上田酒造の看板が見える。ここがいちおうのゴールである。ハイキングマップを見せると籤引き一回、やはり外れでカップ酒は当たらず。隣では振る舞いの甘酒、寒い季節にはこれが美味しい。レモン汁を垂らすと美味しいと言われてやってみる。これはなかなか良いかも。今日のハイキング、参加者は1472名との表示がある。生駒駅で渡したマップの枚数がそれということだろう。それだけの左党がゾロゾロと歩いたわけだ。

上田酒造の銘柄は「生長」と「嬉長」、どちらも名前ぐらいは知っているが飲んだことはない。こんなに近くで造っているんだ。試飲のテープルが並んでいて、気前よく注いでくれる。何だかんだといいながら次から次へといただく。私の前に並んだオバハンもガンガンという風情である。おかげでこちらも遠慮なく。

酒蔵の中には巨大な釜、発酵中の樽も覗ける。酒粕の薫りが充満していて下戸ならこれだけで酔っぱらってしまいそうだ。そして最後には直売コーナーがあって列をなしている。並んでいるのは四合瓶だが、試飲で気に入った無濾過純米生原酒の一升瓶を求める。酒造総動員のようだがラベル貼りが追いつかないようす。しばらく待って重いお土産を入手だ。ふうふういっているレジのおねえさんに、「よう売れてますなあ」「はい、おかげさまで」ということで、きっと今日は日曜出勤の特別手当ぐらいは出るのかも。上田酒造にしてみれば大変な売り上げ、毎週近鉄にハイキングを開催してほしいぐらいだろう。実際、このシーズン、毎週末には酒蔵を変えてこのハイキング企画があるのだ。それこそ、暇な酒飲みは皆勤賞を目指してスタンプを集めるのだろう(ちなみに、そのような皆勤賞もスタンプもないので念のため)。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system