雁多尾畑を歩く
2012/4/7

最近ほとんど我が家の定番となった駅長お薦めフリーハイキング、安上がり、健康的、カミサンとの会話復活と、定年でとりあえず失業の身としては、暇つぶしと運動不足防止には格好のイベントだ。残念ながら今回は酒蔵見学や試飲はついていないが、そろそろ桜も咲いているはず。河内から大和へ、古い道を辿るハイキングに参加した。

近鉄大阪線安堂駅からJR関西線の三郷駅まで、電車を使ってほしいという主催者の思惑だろうが、もったいないので車で向かう。JR柏原駅前の駐車場に入れて、コースの出発地点である安堂駅まで1kmほど歩く。いつものように駅でA3判両面刷りのマップをもらったら出発、電車の到着時刻ではなかったので人の姿は多くない。花見どきだというのに、奈良から柏原まで信貴山腹の広域農道を走ったときには雪が舞っていた。桜はぼちぼちというところだし、人出も鈍ろうというものだ。

ずいぶん田舎だ。大阪市内まで電車で1時間もかからないのに。駅から急な坂を10分も登れば山の中、この大阪側の斜面は葡萄畑が続く。ビニールハウスの内からは生暖かい風が吹き出してくる。覗き込んだら、余分な花芽を切り落とす作業のよ、これは重労働だ。斜面だし、手はずっと上がったままだし、おまけに細かな仕事とくる。定年後は農業をすると言う人も周りにいるが、何十年もオフィスワークで過ごした後では相当の覚悟がいるかも知れないなあ。

横尾という集落を過ぎる。ここはどの家も横尾姓なのにびっくりする。竹内街道沿いの集落が三浦姓ばかりだったことを思い出す。昔なら郵便配達泣かせ、今なら宅配便泣かせとでも言えようか。まあ配達するのも地元の人であればあまり問題はないのかも。

横尾を過ぎると、どんどの滝。滝といっても小さなもの、山道を辿ってちょっと一休みという場所だし、昔はここで喉を潤したのかも。滝の脇には不動明王が祭られている。石が摩耗していて、説明を見ない限りは不動明王と判らない。もっとも滝と不動明王は梅に鶯のようなものだけど。

そこからしばらく先が雁多尾畑(かりんどおばた)の集落だ。この場合、「お」はサイレントに近いから、「かりんどばた」のほうが実際の音に近いのではなかろうか。ともかく、この地名は昔から気になっていたものだ。珍しい四文字の地名ということもあるし、他に何もない山中だから地図にも余裕があって地名が記載されることが多いからだ。

ちょっと辺鄙な場所だけど、大きな家も多い立派な集落である。山村というにはだいぶ開けている感じだ。市街地からは離れていると言っても遠いほどではない、山が険阻なわけではなく車でのアクセスもできる。そんなところがここに最終処分場を建設した理由だろうか。柏羽藤環境事業組合の雁多尾畑最終処分場というのが雁多尾畑1750番地外にある。柏原市、羽曳野市、藤井寺市のゴミの墓場がここということだろう。もちろんハイキングのコースには含まれていない。とは言っても、ところどころに廃家電なとが不法投棄されている場所がある。里山ハイキングでは珍しくない光景だ。奈良の鹿を殺す、天領の檜を切る、昔なら死罪なのだから、今どき環境を傷つける行為にはそれぐらいの厳罰をもって臨んで当然ではと、歳をとると我ながら過激な見解である。

雁多尾畑を過ぎて少し登った広い尾根上が里山公園になる。造成が現在進行中だ。ここで「さくらまつり」が開催され、このハイキングもそれに合わせたものだ。ところが生憎の天候、桜は二分咲きがいいところだ。そして、イベント会場では何とフラダンス、この寒いのに諸肌出して裸足とは気の毒。まだ次の演し物の河内音頭のほうが衣装的には寒くないだろう。しかし、盆踊り季節でもないのに河内音頭とはねえ。それでも流石に地元、見物のおっちゃん、おばちゃんも、踊り出す人、一人や二人ではない。

さて、河内から大和に向かって下る。麓に開けた街は王寺あたりだが、道は亀の瀬の地滑り地帯を抜けていく。生駒山地の南端が大和川に落ち込むところ、大和川の右岸がそれだ。ここは人の住めない場所、国土交通省の対策工事が行われている。昔は右岸を走っていたJR関西線も、この地帯だけは左岸に線路を付け替えている。斜面にはいくつもの深い井戸が掘られて水を抜いているようだ。地下に排水設備があるらしい。

このあたりの地名は峠という。地滑り地帯の中心、河内と大和の境でもある。八幡神社があり、地蔵堂もある。ここは、暗峠、十三峠と並ぶ、大和・河内を結ぶ古来の幹線道路だった。在原業平が高安(私は小学生の頃に住んでいた)の女の許に通った道は十三峠越えだと言われているが、少し遠回りでも上り下りが少ないこの道だった可能性もありそう。いずれにせよ、いにしえの遠距離恋愛、足繁く通うにしてはその距離と時間は大変なものだ。現代の東京・大阪のほうが、まだ楽と思ったりもする。

あまり山登り要素のないハイキングで、アップダウンも緩い。最後の下りで龍田大社に向かう。山から里に下りると桜もだいぶ開いている。型どおりにお参りを済ませ、境内でお弁当をひろげる。参道の裏手に回ったら、何でこんなものがというのが、大砲と砲弾、忠魂碑も境内にあったし、神社と戦争の結びつきを感じさせるモニュメントである。

土曜日なのに神社で花見をする人もいない。同じ近鉄のハイキングでも酒蔵シリーズとは雲泥の差と言ってもいい。今年の花の遅さ、長引く寒さも影響しているのだろう。昔にはなかった三郷(さんごう)駅からJRに乗り、車を置いている柏原駅まで戻る。

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