京阪奈ヒルウォーク ~ 三国境を探して
2012/4/17

仕事を辞めてから歩くことを心がけている。在職中は意識しなくても職場への往復だけでそれなりの運動量になったが、家にいるとメタボ昂進になりかねない。今のところは、かえって歩く時間が増えている。これはスマートフォンのおかげだ。

デザインが気に入って使っているinfobar、スマートフォンタイプも機種変更無料になったため手に入れたはいいが、通信代が無駄なのでSIMカードは抜いている。あまり使い途がないなあと思っていたら、こんな使い方があった。それが万歩計。ワンセグで野球を観る以外でも役に立つことが判ったぞ。電話というよりもミニパソコンだから詳しい履歴が残る。NHKの番組で測るだけダイエットというのが大反響を呼んだことがあるが、それと同じ理屈かな。

さて、陽気につられて出かけたのは近場、NPO法人やましろ里山の会のホームページで見つけた京田辺尾根筋ハイキングコースを歩いてみようということで、近鉄電車に乗る。このコースを忠実に辿るなら三山木駅からスタートとなるが、大和西大寺の乗換でちょうど京都行き普通列車が出たところ。次に来るのは急行、これは三山木には停車しない。ならば代替案、同NPOのホームページからダウンロードしたマップの他に25000分の1「田辺」の地図も持っているのがもっけの幸い、急行が停まる新祝園から歩くことにした。普賢寺小学校のあたりでこのコースに合流できるだろう。丘を二つほど越えなければいけないが、もとより歩くことが目的、ノープロブレム。

近鉄の新祝園駅はJRの祝園駅とホームが並んでいるのに名前が違う。京都市内のバス停にはもっとひどい例があるが、余所者が戸惑うことなど頓着しないのが京都の流儀。ここも京都、相楽郡精華町である。駅前は新開地だが少し歩くと長閑な田舎の風景、田んぼの向こうには丘の縁に沿って古い集落が連なっている。これは木津川が氾濫した場合の安全ゾーンのラインなんだろう。

谷という集落から緩い登りでひとつ目の丘を越える。筍の名産地だけあって、ずっと竹林の中を行く。軽自動車なら通れなくもないが対向はまず困難、ご丁寧にそんな看板もある。丘を下ったところが京奈和自動車道の精華下狛インター、高速道路の下をくぐって煤谷川を渡ったところが旭という集落だ。ここからもうひとつ丘を越えて水取という集落に下りれば、そこが普賢寺小学校だ。ところが…

「この道は行き止まりですよ」と、近所のおばちゃんに呼び止められる。
 「普賢寺のほうに行くんですけど、この道じゃないんですか」と、問う。
 「それなら、この先の今ダンプが走ってくるとこ、あっちを行けばいいですよ」
 「山道を行くつもりなんですけどねえ」と私。

あまりに自信たっぷりに言われるとおばちゃんの迫力に負けてしまう。あっちは車道なんだけどなあ。まあ、丘越えの山道が地図にはあっても藪に埋もれて通行困難ということもあるし、おばちゃんに逆らうのもいかんかな。ということで、ほんとにダンプが頻繁に通る気分の良くない道を辿る羽目に。ここらが山登りの人間と地元の人との意思疎通が難しいところ。国土地理院の地図をおばちゃんに見せても埒があかないだろうし。

この道なら車で走ったことがある。京都フラワーパークという施設があり、家族で来たことがあるが、すでに閉園、今は京都府農林水産技術センターということになっている。京都府立大学の施設もある。公営テーマパークの挫折ということなんだろう。ちょっと不便なところだし、あまり集客も伸びなかったのか。まさか、隣接するのが陸上自衛隊祝園弾薬支処ということが理由でもないだろう。近年、弾薬庫の周りにはけいはんなのニュータウンが出来ている訳だし、ここがどういう場所か知らずに住んでいる人も多いはずだ。

ようやく京田辺尾根筋ハイキングコースに合流する。ここは富雄から京都方面に車で出かけるときに通る渋滞なしの抜け道だ。普賢寺小学校の横から分かれる道は農業専用道路らしい。車で来たら路肩に駐めるのにちょうどいいと思っていた場所だ。この道をしばらく行くと登山道の標識があった。やましろ里山の会の人たちが設けたものだ。まさに里山、山に分け入る道はいっぱいあっても、大概は山仕事用であり山登り用ではないから、地元の人たちが整備してくれるおかげでハイキングも出来るというものだ。いかにもそれらしい新たに切り開いたという感じの小径が尾根を目指している。夏ともなれば草生い茂りということになるだろうし、メンテナンスが大変だろう。ごくろうさま。

ちょっと登ると204mの三角点に達する。関西電力の送電線がこの尾根を走っている。三角点の脇の切り開きに鉄塔が立っている。ハイキングマップには送電線が載っているが、今の国土地理院の地図からは消えている(復活するしないの議論があるようだ)。ここに辿り着くまで2時間ほど休みなしに歩いたので、お昼にする。残りご飯のおにぎりと卵焼きのシンプルな弁当が美味しいなあ。

三角点から先は尾根筋となりずいぶん歩きやすくなる。ガイドマップでは、高船集落に通じる車道を横切り、二月堂礼拝所を経由して高船集落に下りるとなっているが、ここで道が判らなくなった。山道と集落の境というのはいつも難しい。パーキンソンの法則ではないが、本当に道標の必要な処には、ない。結局、尾根筋を忠実に辿ることにした。関電の巡視路を登り、このあたりと目星を付けたところで北側へちょっとした藪漕ぎを敢行、見事に千鉾山の南側の鞍部にドンピシャで出る。いったいどこでコースを外れたんだろう。

千鉾山が本日の最高峰、311mという標高だ。大きな石碑の横に三角点はあっても眺望はない。測量の頃には櫓でもあったか、それとも永年を経て樹木が生い茂ったか。やましろ里山の会の説明板には、ここが堂島の米相場を京都に伝達する中継所だったとの記述がある。と言うことは、100年前にはずいぶん見通しがきいたということだ。

千鉾山を少し下るとそこはもう神社の境内、笠上神社という。しかし下り道で最初に出会うのは不動明王、昔の神仏混淆のまま残っているということか。なかなか立派な石像だが山中に無造作に置かれている印象だ。見晴らしがきかなかった山頂と違って、神社からは田辺方面の眺望が広がる。このあたりだと桜もまだ散ってはいない。

さらに北へ三国境を目指す。三国境といっても甲武信岳や三俣蓮華岳のような名だたる山でも何でもない。大阪・京都・奈良の府県境は標高300m足らず、尾根と言うにはあまりにのっぺりした起伏、灌木の中に標識の杭が打たれている。これとて信憑性がどこまであるやら。スマートフォンのGPS機能は殺しているので確認のしようもない。

このあとハイキングコースはさらに続き、朱智神社、天王集落を経て出発点の普賢寺小学校のところに戻るのだが、気が変わって西に下りることにした。奈良県生駒市の方向、富雄川の最上流、地図だと奈良県が一番北に食い込んでいるところだ。富雄駅までのバスが走っているから、歩き疲れたら適当なところで乗車すればよい。結局のところ、行き当たりばったりのハイキングで、案内のコースを辿ったのは半分ぐらいか。

そして最後に、またもあらぬ方向に進んでしまう。美しい棚田の中を緩やかに下って行くものと思った道は西の方向に続いており、どうも南に向かっていない。挙げ句の果てが車両も通行できそうな道が畦道のようになるし、もう使われていない大きビニールハウスのそばでは通行禁止のバリケード様のものさえ。委細構わず突き進むと京阪奈墓地公園、ここは大阪府枚方市、富雄から枚方方面への抜け道としてよく使う道だ。近くには興国高校枚方グランド、人生の春と墓場が隣同士というのも可笑しい。

そこそこ通行量のある車道歩きは面白くも何ともないので、折良く来合わせたバスに乗車、傍示から富雄駅に向かう1時間に一本程度のバスだ。バス代はずいぶんと高い。これならコースどおり京田辺側に下りて近鉄電車で戻ったほうが安くついたなあ。まあいいか。で、バスが富雄川沿いに走る途中、信号で停まったときに交差点の左から来るグリーンのデミオに目がとまる。ウチの車と同じ車種、どころか、運転しているのはカミサンではないか。何という偶然、宝くじでも買ったほうがいいかも。こんなことなら電話をかけて傍示まで迎えにきてもらえば良かったなあ。

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