赤沢森林鉄道に乗る
2012/6/18

諏訪から木曽に向かう。白樺湖から霧ヶ峰を経てちょっと遠回りのルートを走る。梅雨どきなのに昨日の午後から天候は安定しアルプスの遠望が効く。北も中央も南も、槍、穂高、乗鞍、御岳、木曽駒、千丈、北岳、甲斐駒、鳳凰、八ヶ岳…。ここは中部山岳の大展望台だ。この時季の天候も考えて、荷物になるので一眼レフとズームレンズを持ってこなかったことが悔やまれる。

霧ヶ峰の自然保護センターに立ち寄る。むかし家族で来たときに、ここの職員の方に色々と説明していただいて礼状を出したところ、「霧ヶ峰交友録」という本に収録していただいたことがあった。センターでその本を見せてもらって自分の書いたものがどこに載っているのか探したがすぐには見つからなかった。家の本棚にもあるはずだから、帰ってからゆっくり探すことにしよう。霧ヶ峰でそんなことを思い出した。

八島ヶ原湿原はそのときに訪れていたので、今回は南の踊場湿原のレンゲツツジを観て諏訪に下る。五分咲きぐらいだろうか。諏訪から岡谷、長野自動車道と中央自動車道を少し走り、伊那から権兵衛峠を越えて木曽に出る。新しくトンネルができてから伊那・木曽の短絡ルートとなった道だ。カーナビもこちらを案内するから、塩尻を回るよりも近くて速いのだろう。中央アルプスの峠越えを連想するが、さほど高度を上げずベーストンネルに近い立派な道路なのが意外だ。

途中、木曽福島駅にほど近い「くるまや本店」で蕎麦の昼食、結構太めの麺で柔らかさと堅さが混交したような食感がかわっている。もりそば大盛りだと三枚、信州では蕎麦のハズレはないので安心だ。ここは特色のある店だから、きっと休日だと待ち行列ができるのだろう。店に入ったときはすぐに案内されたが出るときには店先に並ぶ人の姿があった。

上松から御岳の麓に分け入る森林鉄道、最盛期は全長80kmもあったというから、ちょっとしたJRのローカル線並みだ。阪神電車や京阪電車なんかよりも長い。首都圏で言えば京王電鉄や京浜急行あたりに匹敵する。
 今は軒並み廃線となって古い地図に名残りをとどめるだけになっているが、動いていて乗れるのが赤沢森林鉄道だ。御岳の南麓を流れる王滝川の南、上松から西に入る木曽川の支流、一帯は国有林で自然休養林となっている。そこに観光用に復活させたのが赤沢森林鉄道、てっちゃん垂涎の地だ。最近では京阪神の小学校が修学旅行でよく出かけているらしい。てっちゃんとしては子どもに負けてはおれない、行かねばならぬ。

くるまや本店で聞いたら車で40分ほどで行けるという。国道19号も赤沢自然休養林へのアクセス道路も良くなっているのだ。随所に立派な案内板があるということは観光客がそれだけやって来るということなんだろう。この季節、1時間毎の運行、最終便の一つ前14:00の便に間に合う。奈良の林道に比べれば高速道路並みの立派な道を山奥に分け入る。月曜日なので訪れる人は少ない。修学旅行生の姿もないからトロッコ列車はガラガラの模様だ。

きっぷを買って発車まで駅構内の見学。静態保存の蒸気機関車、お召列車、古い鉄道路線図やダイヤグラム、制服や工具類、駅舎の一部が博物館になっている。14:00になっていよいよ発車、まるで遊園地の列車みたいな感じで、周りは檜の森と渓流、森林鉄道ならではのところ。ゆっりと自転車並みのスピードで上流に向かう。終点の丸山渡停車場まで片道1kmあまり、往復しても30分もかからない距離だ。川沿いには遊歩道が設けられていて、片道だけ乗車して戻りは徒歩ということも可能。もちろんてっちゃんとしては往復してから徒歩で散策、すなわち乗りテツと撮りテツの合わせ技となるのが当然の成り行き。

往路、カーブに差しかかるときに大きく汽笛を鳴らす。曲がったところにはテレビカメラと集音マイクを持ったTBSのスタッフが待ち構えていた。番組で紹介するのか、「涼しさの別世界、森林鉄道に乗ろう」なんて感じかな。

終点の折り返しでは、機関車を先頭に付け替える作業を見物、こういうものに目がないのもてっちゃんの真骨頂。でも、付け替えはいいにしても転車台がないぞ。ただ前後に機関車の位置を替えるだけだ。そこで質問。

「機関車の付け替えはわかるんですが、そうすると往きは反対向きで走っていたんですか」
「いい質問ですねえ。森林鉄道の場合、登りと下りではどちらが重くなるかお判りですよね」
「あっ、そうか。下りは木材を満載するから遙かに重くなるんですね」
「そうなんです。重量のある列車ではブレーキなどの制御をより慎重に行う必要がありますから、正面を向いて運転する必要があるんです。登りは軽いですから後ろ向きに運転なんです。方向転換するにこしたことはないんですが、沢沿いでは転車台を設けるスペースがありませんからね」
「なるほど、そういうことでしたか。でも運転する人は首が凝っちゃいますね」

そんな珍問答、乗客も少ないから丁寧にお答えいただく。戻ったら駅の近くにオオヤマレンゲが咲いていますから観ていってくださいとのことだったので、散歩をかねてモクレンの一種、華やかでありかつ清楚な花を眺める。上松町の花にもなっているらしい。

川沿いに少し登って15:00の最終便の走行シーンを撮影する。もうTBSのクルーは引き揚げたらしい。映っていたかも知れないけど、いつ放映されるのやら。これから夏に向けて涼を求めて観光客がやって来るだろう。うちかなりの割合を占めるのがてっちゃんか。手許には記念乗車券が残る。檜のチップ、木製というのが憎い。そう、この森林鉄道に乗ったら、次に目指すのは立山カルデラの砂防鉄道しかないなあ。いつか行くぞお。

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