旧生駒トンネル見学ツアー ~ もったいないなあ
2012/7/29

新聞に載っていた小さな記事に目がとまり、大和西大寺駅の営業所で申し込んだ旧生駒トンネル見学ツアー、人気のイベントですぐに満員御礼となったらしい。今日はいよいよその日、炎暑のさなかトンネルはさぞ涼しいことだろう。

近鉄奈良線石切駅10:00集合、30分前に到着したら改札口付近には既に参加者が何人もたむろしている。中高年ばかりかと思ったら、親子連れやカップルもいて、まさに老若男女というところ。受付では1枚ものの参考資料とビニールのレインコートに黄色いヘルメットが渡される。交通費別で1500円ほどの参加費、レインコートは持ち帰りにしても、さすがにヘルメットは返却、残念。

石切駅の改札口からは生駒トンネルを行き交う電車が見下ろせる。現在の生駒トンネルは近鉄電車だけじゃなく黄色い塗装の阪神電車も走る。てっちゃんたちは見学前に写真撮影に余念がない。定刻には参加者全員が集合しているというのはすごい。有料イベントということもあるが、鉄道ファンの意気込み、早々に定員に達しただけのことはある。瓢箪山駅の助役さんの先導で旧生駒トンネルに向かう。

新生駒トンネルの上を渡り、旧線の孔舎衙坂(くさえざか)駅跡に至る。太宰治の「パンドラの匣」ゆかりの地を訪ねたときに一度来たことがある。もちろん、そのときはトンネル入口の鉄扉は閉ざされていて中に入ることは叶わなかった。今日はそれが大きく開かれている。鉄扉には往年の写真の展示、子どもの頃に乗った幅の狭い特急電車が懐かしい。油阪あたりでは路面を走っていたはずだ。

真夏日の猛暑、ところがトンネルの前に立つと、中からひんやりとした風が吹き出している。これは入る前から涼しいぞ。そうだ、奥多摩の日原鍾乳洞の入口に立ったときと同じだ。内部は10℃台の気温ということ。トンネルの内壁は煉瓦で覆われていて、薄いところでも厚さ50cm、全長3388mのトンネルには3000万個ほど使われているらしい。会社が傾きかねないほどの事業費を費やして完成したときから100年近い年月が経過している。苔どころか鍾乳石が煉瓦の表面を覆っている箇所もある。電車こそ走っていないが、このトンネルはまだ現役である。

南側には7箇所の横坑があり新生駒トンネルと連絡しているのだそうだ。点検や非常時用の通路になっているとのこと。さらに北側に向けて分岐したトンネルがあり、緩やかに下っている。分岐点には石切開閉所という看板がある。こちらは近鉄けいはんな線の生駒トンネルに繋がっているそうだ。建設時の輸送路に使ったとか。つまり、生駒山の下をくぐる三つの鉄道トンネルは中で繋がっている。そして旧生駒トンネル自体も生駒側の末端部分はけいはんな線に転用されている。なので、トンネルの中をずっと進むと大阪地下鉄中央線の電車が走っているはずだが、見学ツアーはそこまでは行かない。石切側から500mぐらいのところで引き返す。

涼しいトンネルの中にいると外に出るのが嫌になるほどだけど、見学ツアーはおしまい。トンネルの入口で涼みながら、てっちゃんたちが助役さんに質問を繰り出す。なかなかマニアックなものも多くて大変だ。かく言う私も、「こんな立派なトンネルを放っておくのはもったいないですね。九州の日之影線のトンネルは焼酎の貯蔵庫として使われていますけど、ここもワインセラーなんかにしたらいいかも知れませんね」とか。いちおう保線のために使われていることもあり、近鉄にそういう発想はなさそうだ。

そして、「私の母方の祖父からトンネル事故の電車に乗り合わせたと聞いたことがありますが、それはどのあたりなんでしょう」と、そっと聞いてみたが、戦後間もない頃の話、現役の助役さんにしてみれば「事故があったことは知っていますが、詳しいことは…」ということ。トンネル竣工と同様、遠いむかしのことになったということだろう。

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