焼岳に登る ~ 1年経って
2012/8/20

4:30にガバッと起きる。目覚ましはないけど、最近は5:00頃に起きることが普通なので大して変わらない。急いで身支度、レンタカーを走らせる。これなら7:00前には登山口に着くだろう。いつも交通量の多い国道158号だけど、この時間なら対向車は少ない。これだと山間部のカーブやトンネルも運転が楽だ。釜トンネルの手前で左に折れ、旧道のヘアピンカーブで高度を稼ぐ。中ノ湯を過ぎ10号カーブの表示を見てしばらく進んだところが焼岳登山口、まだ駐車スペースは充分にある。お盆休みも終わった月曜日ということもある。谷越しに臨むスカイラインは前穂高岳から明神岳の稜線のようだ。昨年は雨で断念した焼岳、今回は好天に恵まれそう。

1時間ほどは樹林帯の登りだ。手許の地図では中ノ湯からの登山道と合流するはずなのに、気づかなかった。踏み跡らしきものはあったけど、ほとんどの人たちが最短ルートを通るようになって忘れられた道になってしまったのか。

無理をせずに4ピッチでいいかなと思っていたが、展望が開けてきてからは思いのほかペースが上がる。3ピッチで焼岳北峰に到着だ。学生時代に盛んに北アルプスに通っていた頃は噴火活動が盛んで入山禁止だったはず。それで登り残したのか、近くに3000mクラスが並ぶ中での後回しが今に至ったということか。ここにめでたく登頂である。

頂上直下にはお決まりの火山湖、二つのピークの鞍部近くのガスの噴出が目立つが、他にも登山道の近くに噴出口があって岩が変色している。あまり気分のいいものじゃない。

上高地から登って来る人が多い。頂上はそれなりの賑わい。風も弱く晴天、と言っても標高2700mぐらいを境に雲が覆っている。西から東に流れる雲がときどき薄くはなっても奥穂高岳や笠ヶ岳のピークは隠れたままだ。周りを眺め、昼食を摂り、地図を眺め、写真を撮り、登山者の尻が長くなる。こちらも気がつけば1時間以上は滞在してしまった。まだ時刻も早い、あとは上高地に下りるだけ、先を急がないのんびりとした山登りもいい。

梓川の向かい側、霞沢岳だけはずっと姿を見せてくれているのに、山頂の登山者にとっては関心の外だろう。名前すら知らない人も多いはず。あちらは2600mは優に超える山なのに、ちょっと背丈が足りないばかりに不遇を託つのは気の毒な気もする。焼岳はさらに低くて2455m、もっとも日本百名山に名を連ねているし、日本アルプス唯一の活火山という付加価値もあるので得をしている。なんだか人間の社会にも似たようなことがいっぱいありそう。

上高地への道、上部にはほぼ垂直に取り付けられた梯子もあってスリリングな部分もある。こちらの道は中ノ湯側の登りに比べると緩やか、そのぶん距離があるので時間はそれなりにかかる。姿を見せている霞沢岳や明神岳、谷間を流れる梓川を眺めながら高度を下げてゆく。ほぼ平坦路になって梓川右岸の歩道に合流する頃、道端でゴソゴソと音がするので振り向いてみたらヤマカガシが大きな蛙の捕食の真っ最中だ。国立公園内で餌には困らないのか蛇も蛙も立派なサイズだ。ヤマカガシにすればとんだ邪魔者、それでもくわえ込んだ餌は離さない。

河童橋に近づくと、休日でもないのに都会の雑踏並みの人出、お馴染みの景色はここでも下部だけだ。まあ私にすればいつものこと。ここからはタクシーでレンタカーを置いた焼岳登山口に戻る。上高地からだと方向は違うが沢渡の駐車場と同じぐらいの距離、もっとも沢渡のように定額運賃ではなくメーター料金なので若干高めの3800円、国道158号の登り直しを歩く気もしないので楽々の選択。その分、無料化社会実験が終了した安房トンネルは通らず、旧道の峠越えで平湯温泉を経て福地温泉に至る。山登りのあとの温泉とお酒は格別。

ロープウエイ頂上駅からの槍・穂高方面の眺望 (ダブルクリックすると拡大しスクロール、クリックでもとに戻る)

そして翌日、快晴、前日ような雲がない。数日前には槍ヶ岳で落雷による死者まで出たのに、このところ大気は安定状態に入っている。予定はなかったが新穂高温泉に寄り道、鍋平に車を置いてロープウェイに乗ってみた。おかしいほど山が見える。前日には姿を隠していた稜線も遮るものがない。むかし登った山々がずらりと並ぶ。手前の稜線の向こうにちょこっと頭だけ出しているのは鷲羽岳、近いところではジャンダルムだ。ただここからだと奥穂高岳の姿は西穂高岳に隠れて望めない。ロープウェイ降り場から連なる西穂高の独立標高点はかつて地元の高校生が多数遭難したところだ。これも突然の落雷、私も山での雷は何度が遭遇しているが、いちおう避難はするにしても、何か起これば運が悪いと諦めるしかないのが事実。それだけ怖いということ。

レンタカーで名古屋に戻る途中、もう一つの寄り道は飛騨古川。わざわざ高山を避けてというのも偏屈だけど、こういうときぐらいしか寄れないところだ。ミニ高山という感じか。こちらのほうは観光客の姿も少なく落ち着いた町歩きができる。でも暑い。盆地のこの暑さは半端じゃない、下手をすれば熱中症、飛騨古川まつり会館に逃げ込む。今回の信州飛州行は古い街並み歩きで始まり終わったことになる。

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