みたらい渓谷を歩く ~ 山登り転じて森林浴
2012/9/2

子どもがクラブの合宿に行くとかで、休みには珍しくカミサンが早く起きた。それで、涼しいところに出かけたいとのご下命、一人で稲村ヶ岳に行こうかと思っていたところなので、即座にみたらい渓谷を提案、どちらも天川村、まあ同じようなものだ。

昨年の水害がひどく、奈良県南部はまだ復旧していないところも多い。天川村へ至る道筋も山崩れの跡と見られる工事現場が散在している。雨が降るから木は育つのだが住民にとっては悩みの種でもある。渓谷美を愛でる登山者や観光客の来訪にしても、ある意味では雨の恵みでもあるし。

みたらい渓谷は以前に入口付近だけ歩いたことがある。今回は洞川までの全コースを歩くつもり。スタートは天川村川合、ここの天川村役場に車を置く。広い駐車場で無料。渓谷の核心部あたりでは駐車スペースは僅かだし有料なのは既知のこと、戻りは路線バスという算段。休日に渓谷歩きの人や釣り人が駐車することを想定しているのだろう。現地でもらった渓谷マップにはPマークがあるから、どうぞご自由にという村の姿勢が好ましい。目先の駐車料金に走ったりせず観光振興を優先させるということか。

村役場のところは弥山への登山道の起点でもある。弥山に登ったときは最短ルートの行者還トンネル入口からだったが、ここから登ったら一日での往復は困難だろう。深い山を味わうにはいいのだが。

天ノ川左岸の遊歩道を辿る。ところどころ崩落による付け替え箇所もあり雨の多さが窺える。曇りがちの天気でもあり充分に涼しい。しばらく行くと川迫川と山上川の合流地点、川迫川沿いは行者還トンネルに向かう酷道というほどでもない国道309号、みたらい渓谷は山上川沿いなので、ここで橋を渡る。川遊びのスポットになっており、大岩の上から若者が飛び込んでいる。冷たい水なのに元気なものだ。

出合から30分ほどが滝の連続する核心部分だ。吊り橋がかかる遊歩道だから沢登りのような危険はない。サンダル履きでも歩けなくはない。ハイキングの人がほとんどで、本格的な山登りの人は見かけない。山登りだと洞川まで車で入るからみたらい渓谷は素通りしてしまうのがその理由。

洞川に向かう県道にいったん合流してからは緩やかな登りとなり、吉野杉の中を小一時間ほど行く。ひっそりとした森林浴コースという風情。「あらっ、これ、ホトトギスかしら」とカミサン。「それは鳥とちゃうのん」と間抜けな応答。よく判らないが小さな花が足もとに。山中に咲く花のよう。暑い暑いと言っていてもアキアカネが乱舞しているから季節は確実に移ろっていく。

もうすぐ洞川というところで、何やら赤い鳥居、林の中に小さな祠がある。大きな栃の木、周りには実がいっぱい落ちている。村の氏神なのだろう。タダの土産を拾うと、すぐに洞川温泉だ。戻りのバスの時刻まで2時間近く、まずは一風呂、檜の浴槽と露天岩風呂、そんなに大きくはないが空いているからこれで充分だ。風呂上がり、洞川の街を散歩、古い旅館が立ち並ぶ。このあたりの宿は登山者ばかりか、林間学校の定番でもある。昔はなかった山上ヶ岳歴史博物館なんて施設もできている。入場料300円也。ここでざあっと雨が落ちてきた。やっぱり、出かけるといつも雨という習いは変わらない。

バス停に着いたら下山する人が三々五々集まってくる。営業所には大きさの異なるバスが3台、最終の一つ前の便なので、どのように配車しようかと奈良交通の人が思案中。バスに乗って来た人が何人で、あと何人ぐらい残っているか、最終便で乗りきれるかといったところのようだ。
 結局、小さめのバスを下市口直行便に当て、大型を定期路線バスに当てるということになった。その乗客は二人だけだ。天川川合で下車すると空っぽになるかと思ったら、みたらい渓谷ですれ違った夫婦のおとうちゃんが走ってきた。「乗る人がいるみたいですよ」と運転手に声をかけ、後を見ればおかあちゃんが悠然とこちらに向かってくる。おとうちゃん、ご苦労さまというところだが、このあたり自由乗降区間のはず、手を挙げたら止まってくれるのに地元民じゃないハイカーにはそこまで判らない。こちら、車に戻り、途中の道の駅で土地の野菜や果物を買い込んで帰還となる。秋の気配を感じた渓谷の散策だった。

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