稲村ヶ岳 ~ 一週間後の再訪
2012/9/9

土曜日が雨で日曜日に順延、一週間前にみたらい渓谷を歩き、今度はもともと行くつもりだった稲村ヶ岳に向かう。早起きしてバタバタと準備、5時過ぎに車で出発したはいいが、とんだ忘れ物だ。磁石は持っているのに地図がない。こんなことは初めて、まあ、地図がなくても歩ける山だが何となく気持ちが悪い。いざというときに備えて、登山口の大きな地図の看板をデジカメに収める。便利な世の中だ。

洞川のバス停からさらに奥に車を走らせる。本来の登山口より少し先、母公堂からの道が最短コースだ。お堂を200mほど過ぎたところに広い路肩があるのでここに駐車、早い時間だから無料の駐車スペースも空いている。

大峰山麓での林間学校は男子が山上ヶ岳、女子は稲村ヶ岳というのが昔からの定番、日本で唯一、未だ女人禁制の山だから、こういう具合になる。洞川からの距離も時間もほぼ同等、標高は僅かだが稲村ヶ岳が勝る。

登ってみて判ったのはこの道の付け方がすごい。麓の洞川から山頂まで縦軸に標高、横軸に距離でプロットすると見事にy=ax+bの直線になる。同じペースでひたすら歩けば3ピッチで山頂に至る。法力峠、山上辻と登山道が分岐する箇所が休憩スポットとなる。山腹を捲きながら高度を上げていく計算され尽くした道だ。こんなところにも登拝の歴史の長さが窺える。

みたらい渓谷に続く観音峰への道を分けるのが法力峠、ここまでは吉野杉のなか。間伐はされていてもそれが倒されたまま、搬出されずに残っているのが気になる。木材としての伐採まで放置しておくのだろうか。コストや効率性の問題もあるのだろうが、あまりいい眺めとは言えない。間伐材を使った吉野杉の割り箸なども売られているが、それは一部でしかないのだろう。林業の担い手不足ということもあろう。

法力峠から先は尾根の北側の捲き道となり、こちらはブナの自然林となる。大峰山脈らしい風情に変わる。沢筋を越えるところは桟橋が随所に設置されていて、ひたすら傾斜を一定に保つのが面白い。

二度目の休憩が山上辻、ここに稲村小屋がある。有人、宿泊可という小屋、ここに泊まって御来迎を拝み下山という人もいるのだろう。BS・CSのパラボラがあるあたりが今ふうか。中には入らず表の広場で昼ご飯。と、このあたりまでは辛うじて木の間越しに景色が眺められたのだが…

そこから先は、いつものこと、雲の中に入ってしまってただ歩くだけとなる。霧か小雨か、これまたいつものこと。大日山の岩峰を分けるキレットを過ぎれば稲村ヶ岳の山頂は近い。山伏姿で法螺貝を持つ人とすれ違うのも大峰ならでは。洞川では時あたかも日本山岳修験学会大峯山学術大会なるものが開催されているようで、その絡みもあるのだろうか。

稲村ヶ岳は三角点の横に展望台が設けられている。樹林の中だから、ここに登らないと周りの眺めが得られないのだが、そんなことは関係なしに何も見えない。後から辿り着いた人が異口同音に「何にも見えませんなあ」と話しかけるのがおかしい。「午後からは雨になると思いますよ」と、こちらは慣れたものだ。

分岐に荷物を置いて大日山には空身で登る。鎖や梯子の連続を10分、山頂は岩場でもなく樹林の中、少し行けばストンと落ちているのだけど。祠の中には立派な大日如来が鎮座している。暗くて判らなかったがフラッシュを焚いて撮すと御真影が現れた。

もう夏休みも終わっているから、登山者の数はごく少ない。稲村ヶ岳は花の百名山とか言われる山のようだが、もうその季節も過ぎた。紅葉までは間がある。そのくせ暑さは続いているから、山登りは閑散期ということだろう。下りも一定ペースで往路を戻る。そして、これまた二週連続の洞川温泉、前回は空いていたのにこの日は芋の子を洗うよう。微妙に時間帯の影響があるのか。予想に反して麓はいいお天気、夏の続きである。

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