吉野川散策 ~ 木と醤油とお酒
2012/11/11

近鉄奈良線・橿原線・吉野線を乗り継いで吉野神宮駅に到着、吉野線開通100年のイベントの一つ、駅長お薦めフリーハイキングに参加する。コースマップの配布が9:30~11:00、我々はほぼ最終の受付だ。橿原神宮前から先の吉野線は阿部野橋発の急行も各駅停車、しかもカーブの多い単線なので時間がかかる。雨の天気予報のせいか、同じ電車のハイキング客は10人もいない。

マップを見ると駅から吉野川左岸を辿り、妹背大橋を渡って右岸を折り返し六田駅まで歩くというコースになっている。さっそく傘をさして出発。このあたり、古くから木材の集散地だから材木工場がとても多い。
 と、いきなり最初のスポット、吉野サロンだ。地元の木材をふんだんに使ったモデルハウスということ、阪口製材所の敷地内に二棟、和風、洋風の建物がある。中に入ると薪ストーブが焚かれていて心地よい暖かさだ。コーヒーもいただく。ハイキングの人が次々と訪れ賑わったようだ。こちら、最終組、ゆっくりと説明を聴く。熱心に説明してくれたのは製材所の息子さんか、きっと建築家なんだろう、随所にこだわりのあるデザインを逐一解説だ。木の暖かみが何とも贅沢な感じ。面白くてついつい長居してしまう。製材から建築までの一貫提案ということになるのだろうか。興味ぶかい取組だと思う。

次に向かったのは本善寺、吉野川に架かる桜橋の南詰にある。川岸の白い花の付いた木はどう見ても桜、コスモスならぬ秋の桜もあるのか。さすが吉野(?)。桜橋の袂には柿の葉寿司の平宗の本店もある。隣の本善寺は蓮如の開基ということで、往時は焼き討ちにもあったらしい。ということは僧兵の根城でもあったということか。人気のないのんびりした境内の様子からは想像もつかないことである。

さらに上流に向かう。次に吉野川に架かる橋が妹背大橋だ。日本橋の国立文楽劇場で「妹背山婦女庭訓」を観たことがある。舞台では、背山妹山の両岸を隔てる吉野川の書き割りがぐるぐる回って急流を表しているが、今の吉野川は川幅も広くゆっくり流れている。左岸を上流に向かうときは背山がのっぺりとしていて形がつかめなかったが、右岸に渡ると川を挟んで対になっている様子が見て取れる。妹山の麓にあるのが大名持神社、ここも閑散としている。おそらくもう少し早い時間ならハイキングの人たちがお弁当を食べていたのだろう。紅葉も色づいている。

妹山一帯は妹山樹叢ということで天然記念物になっているらしい。暖地性植物の群落といっても、どれがどれなのかよく判らない。標高249m、ちょいと登ってみたい気もしたが、どうも登山道がなさそうだ。神社の裏手から藪漕ぎ15分ぐらいで到達するとは思うが、雨で足許も悪いし、カミサンが付き合ってくれそうもないので断念。

さて次は醤油とお酒だ。我々はハイキングのしんがり、本隊から随分遅れて到着のようで、もう見学は終了ということらしい。門口を入るとおっちゃんが、「横から裏に回ってや」ということで、特別講義となる。
 「ここは、日本一小さい醤油屋ですねん」と話が始まる。醤油の製造過程や種類などはそこそこに、百均で買ってきた道具を改造したものや、近くの鉄工所で作ってもらったものなど、オリジナルの小道具についての蘊蓄が続く。極め付けは車庫の原付だ。荷台にビールケースを固定、前部には日本酒のケースを斜めにカットしたものが固定されている。「こないしたら、瓶をそのまま入れて配達できまっしゃろ。何でみんなこういう風にせえへんのかねえ」と。いやはや。熱の入った説明を聴かせていただいて、御礼ではないが店舗で2種類の醤油を購入。店の中には古いポスターが掲げられていて目を引く。

どうも懇切な説明を伺うハイキングとなってしまったようで、行程8kmほどの短いコースなのに時間がかかること。上市の川沿いの細長い街を行くとお目当ての北岡本店、やたがらすの新酒祭だ。生憎の天候で人の姿は少ない。本日絞りたての新酒の量り売りをやっている。ひととおり銘柄を試飲した後、新酒と古酒の2本を購入、一升瓶が2本入るとリュックが一気に重くなる。奈良の街中での春鹿のイベントがとてつもなく賑わっていたことを思えば、吉野まで出向く人の数は高が知れているということか。

本当なら大和上市からさらに下流、一駅ぶん歩いて六田駅の吉野軽便鉄道遺構が最後なのだが、雨も降るしこの先の国道歩きもいまいちということで、大和上市から電車に乗る。てっちゃんとしては少々残念ではあるが、まあよしとしよう。六田駅は昔の吉野駅、その後の変遷を経て、吉野駅はさらに先となる。六田、大和上市、吉野神宮、吉野と続くから、3つ先になったということか。六田駅が吉野駅という名で開業してから100年、記念ハイキングなのにゆかりのスポット割愛という結果となる。

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