九度山から高野山へ ~ 登山鉄道に乗る
2013/6/16

テレビの旅番組で箱根登山鉄道が映っていたのを見たカミサン、「これ、乗ってみたいわ」と。「そんなん、南海高野線かて、ええ勝負しとるで。橋本から先はがあーっと登るからなあ。50‰ぐらいいってんのとちゃうかなあ」

パーミルがどうたらこうたら言っても始まらない。「ほんじゃ、乗りに行こか」と、私も乗車したことのない南海高野線の登山区間を乗りにいく。中百舌鳥が実家最寄り駅だったカミサンも乗ったことがないようだ。私は高野山は初めてではないが、義父の納骨に行ったことは車だった。

南海電車は運賃が高いし、大阪経由で遠回りすることもない。無料の京奈和道を乗り継いで高野口インターまで。橿原から御所まで供用開始となっていて、どんどん繋がってくると有料化の日も近づくので痛し痒しだ。

紀ノ川を渡って九度山町に入り、真田庵の前の無料駐車場に車を置く。古い街並みを訪ねる観光客のために設けられたらしく、ネット検索して見つけた。ここからなら九度山駅は10分あまりの歩きだ。

真田庵、正式には善名称院という寺で、関ヶ原の戦いで敗れた西軍の将、真田昌幸・幸村父子が起居したのがここだとのこと。本来は高野山蓮華定院に蟄居のはずが、麓の九度山に移ったのは、山の上があまりに寒かったからだという。それがありなら、処分としては緩いものだったのかも。もともと信州上田の城主なのだから寒さには慣れていると思うのに、高野山の冷え込みは格別だったのか。それに、山の上だと別所温泉が湧いているわけでもないし。真田庵は門扉に大きな六文銭、まちなかのあちこちにこの旗印が描かれているし、観光案内所では真田紐を売っている。

さあ、乗りテツのはじまり、九度山駅は街はずれ、山腹を少し上ったところにある。1時間に2本のダイヤ、駅は無人だけど綺麗に整備されている。赤い塗装の二両編成の各駅停車がやって来る。橋本・極楽橋間の運行だ。なるほど、難波の駅ではお目に掛からないはずだ。テッちゃん好みのボックスシート、ローカル区間は古い車両を使っているのかと思ったのに、その逆だ。これも世界遺産効果なのか、それぞれの駅には花壇が設けられていたりして南海も地元も力を入れているようだ。

九度山の一駅先、高野下から極楽橋までが箱根登山鉄道並みの山岳区間で、電車のスピードは格段に落ちる。箱根のようなスイッチバックはないものの、傾斜やカーブはなかなかのものだ。高野下駅では列車行き違いで長めの停車時間があり、ホームにある展示物を眺める。溝付きレールといった珍しいもの、昔懐かしい車輪に羽が生えた南海の古い社章もあるぞ。

トロトロと登って行くのは登山電車ならでは、難波から直通の特急こうや号だってこの区間は減速運転に違いない。紀伊神谷駅での行き違いでホーム向い側に停まっていたのは「天空」だ。緑色の車体に赤いラインが鮮やかだ。この観光列車は橋本・極楽橋間の運行で学文路駅と九度山駅にしか停車しないはずだが、単線だからこういうこともある。

終着極楽橋駅でケーブルカーに乗り換えとなる。降りたホームの反対側には難波行きの特急こうや号が停まっている。箱根登山鉄道の強羅駅にロマンスカーが停まっているようなものだ。もっともあっちは湯本止、山岳区間は走らない。

ずいぶんと急坂のケーブルカーだ。階段状の車内の傾斜がきつい。件の真田父子ではないが、この季節でも極楽橋駅構内は日陰、沢沿いということもあってかなり涼しい。そこから300mあまり登った山上からはバスとなる。寺が建ち並ぶ山上都市、納骨をしたのは奥の院、今回は金剛峯寺を訪れる。中に入るのは初めてで、こんなに広いとは思わなかった。多数の部屋を繋ぐ回廊から眺める石庭は見事なものだ。それと、台所の規模が半端じゃない。宿坊を賄うにはこれぐらいの規模になるのだろう。

他にも観るところはあるが、時間のこともあるので下山とする。あの駐車場は夕方5時に閉めるとか書いてあったような気がする。案の定、ちょうど5時に戻ったら既にロープが張られていて終了していた。まあ、それを外して、また元どおりにするだけだから、何も問題はない。かくして、都心から直通の山岳鉄道を安上がりで堪能した一日となった。

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