祝!世界遺産、薩摩の富士に登る
2013/7/22

テッちゃん三昧の次は山登りだ。月曜日に一日夏休みを取って開聞岳に登る。昨日は鈍行列車、今日はレンタカー、やはり機動性では車が勝る。乗客が減ってローカル線が廃止になるのはやむを得ないところか。

指宿駅前から、海風が抜けるいかにも南国という道を進む。開聞岳の登山口までは近い。2合目まで車路があり、そこが自然公園となっている。こんな真夏に1000mに満たない山に登る人がそれほどいるとは思わなかったが、駐車場には車がちらほら。登山名簿には先客10組ほどの名前が並んでいる。さすがに日本百名山、地元鹿児島県以外の住所も目立つ。当方も奈良県の住所を記入。時刻は9時を回ったあたり、暑い時期だし午前中には山頂に立ちたい。

どこどこ富士というのには、ええっと思うようなものも多いが、この山は薩摩富士の名に恥じない。綺麗な円錐形、まさにミニチュアだ。駿河湾から迫り上がる御本家と同様、と言うか、こちらは三方が海で、周りに余計なものがないからその形が際だつ。標高924m、海抜0mからの登りではないにしても、それなりの高度差になる。

本州の山とは植生がずいぶん違う。懸念した直射日光も南国の林が防いでくれる。SPF50の日焼け止めで完全防備の体制を整えたのは取り越し苦労かも。山道は先ずは南へ山腹を斜めに登っていく。時計回りの螺旋の道だから、見下ろす景色で現在位置が概ね判断できる。足許の軽めで黒ずんだ砂礫は火山性の特徴が顕著、頂上に近づくにつれゴロゴロとした岩が多くなる。こういう道は歩きにくいものだ。随所に展望が開ける箇所があり、どちらかと言えば単調な登りのアクセントとなる。南方海上、屋久島ははっきりと視認できるが、隣の種子島はのっぺりしているので海に溶け込んでいるようだ。汗は滴り落ちるが照らされていないので凌げる範囲だ。中腹では蜂がうるさく纏わり付くのが気になる。蜂どもにすれば縄張りへの侵入者を威嚇しているだけだけど。

四合目、六合目、八合目と規則正しく短い休憩を取り山頂に至る。さほど広くない三角点の周りに何組かの登山者が憩う。三角点より少し高くなった岩が本当の山頂、ここに立つと風が気持ちよく通り抜ける。山頂にかかったり消えたりする雲の流れが相当に速い。

頂上の標柱の脇には「皇太子殿下登山御立所」と刻された扁平な石が埋め込まれている。登山の日付を見ると昭和63年7月20日、ほぼ同じ季節にここに足跡を記されたことになる。ところでこの石、建立が平成2年2月2日とあるから、実際の登山から1年あまり経過して設置されたことになる。すると、ここで言う皇太子とは誰なのか。登山日を基準とすると今上天皇だが、建立日で判断するなら現皇太子ということになる。きっと日本百名山の相当数を踏破されている山好きの徳仁親王だと思われる。そもそも、昭和63年のその時期だと、明仁親王が東京を何日も離れることは叶わなかったはず。それに、真夏のややハードな山登り、敢えて自分の足で山頂に立つというのは徳仁親王としか考えられない。

殿下と同じ場所に立ち、雲に隠れては現れる四囲の景色を眺める。枕崎方面の弓なりの海岸線、北の薩摩半島の丘陵地帯の向こうは知覧の町になる。池田湖の水面から東に目を転ずれは錦江湾、大隅半島。桜島はぼんやりしている。軽い昼食のあと、下山にかかる。火山岩が不規則に並ぶ道は下りといえどスピードがあがらない。岩が砂礫に変わって歩きやすくなるかと思えば、それらが浮いた状態にあるので滑る。何度か転びそうになるし、実際に手をついたときに擦り傷。膝のサポーターは着けたのに、リュックに入れていた軍手も使うべきだったか。

下りもそれなりに時間がかかる。八合目、五合目で休憩して3ピッチで登山口に戻る。多めに持って行ったペットボトルもすっかり空だ。冷たい炭酸、コーラの一気飲みが爽快だ。大汗をかいて体が軽くなったような気がする。

さて、列車には乗らないがテツの名所、西大山駅に向かう。指宿枕崎線の途中駅だが、ここが日本最南端の駅。JRのという修飾語が付くのは沖縄モノレールが出来たから。一日数本のディーゼルカーが走るだけの路線だから長閑なものである。馬糞の臭いが漂って来るのもご愛敬だ。韓国からの家族連れが記念撮影をしている。開聞岳をバックに向日葵畑、そして無人駅。絵になる景色、それにしても韓国岳じゃなくて開聞岳なのか。

帰りは20:00過ぎのピーチなので時間はゆったりだ。次に玉手箱温泉、ここで汗を流す。割引クーポンを持参したので400円、それで日本一の展望露天風呂を満喫できる。ほんとに呆れるほどの眺めだ。思わず笑い声が出るほど。すぐそばの竹山という断崖の岩山、もちろん開聞岳、その間に大きく海原が広がり佐多岬や屋久島の遠望。なるほど、ランキングNo.1というのも頷ける。

すっきりしたところで、池田湖への道すがら、唐船峡へ。流し素麺というのは初めて、ここの名物のようで、テーブルの上にたらいのようなプールがあり、ここの谷間の名水がぐるぐる回っている。そこに笊で運ばれてくる素麺を入れると、割り箸を突っ込むだけでよいという優れもの。よく出来たマシンである。面白い。ここが市営というのも可笑しい。

指宿スカイラインから九州自動車道で鹿児島空港に到着。関西空港行きの便は到着便遅れのため、出発がずるずると延びて帰宅は終電近くとなる。まあこういうところが格安航空会社らしいところだ。

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