美味しい、楽しい、天浜線
2013/10/21

名古屋までは近鉄特急、乗り換えて豊橋まで名鉄、その先二駅はJRだけど新所原で下車、ここから天竜浜名湖鉄道に乗る。愛称は天浜線というらしい。もとはと言えば国鉄二俣線、新所原から浜名湖の北側を回り掛川までの路線だ。東京へ行くのにJRをあまり使わず、乗ったことのない路線を制覇という乗りテツのんびり旅となる。

長い編成の東海道線の電車を降りて、乗り換えはいったん外に、隣接の小さな駅舎に向かう。何だ、これは、蒲焼きの匂いが漂ってくる。ちょうどお昼時、お腹がくうっと鳴る。何と、駅舎がうなぎ屋だ。改札口の横のディスプレイに白焼きがずらっと並んでいる。ちょうど折り返しの掛川行きの1両のディーゼルカーが入線してくる。「これを鰻重にして」と頼むと、焼きあがったら車内まで届けてくれるそうな。えっと驚く、こんなサービスは初めてだ。
 空いた車内のボックスシートで待つこと暫し、店のおばちゃんが「はい、おまちどおさま」と美味そうな香りとともに。早速、賞味、表面がカリッとしてふわっとした食感、焼きたて出来たて、持ち帰り用のプラケースはともかく、これは絶品。うなぎ高騰の折柄、それなりの値段はするが余所の店で食べることを思えばずいぶんと安い。さすが本場、最近食べたなかでは一二の逸品だ。

幸先の良い天浜線の旅、右手に浜名湖を眺めながら、東海道線とは大違いのスピードでのんびりと進む。この路線の駅は登録有形文化財がゴロゴロしている。列車の遅れで行き違いの長めの停車となった三ヶ日駅も本屋が指定されていて、登録有形文化財を示すプレートが建っている。
 ここはみかんの名産地なのだが、駅員さんは「今は、これですよ、お土産に」とこれまた駅舎併設のカフェの店先に置かれたキウイを薦める。それは赤いキウイらしい。6個300円の袋を手に取る。カフェの営業までするとは大したものだ。 ラーメン屋、レストランなど、天浜線の駅には併設の食べ物屋が目立つ。文化財の駅に特色あるグルメというコンセプトと見た。

浜名湖と間違いそうな広い川幅の天竜川を渡り、天竜二俣駅に到着。ここで途中下車。新所原駅にあったチラシの見学ツアーにドンピシャの時刻なのだ。文化財だらけのこの駅、見学ツアーが毎日催行されている。

呼び物は何と言っても転車台、京都の梅小路で観たことはあるが、実際に動くところが見学できるということでテッちゃんは興奮気味、月曜日にもかかわらず老若男女のテツが二十数名。いまどきのコンピュータ制御ではない、操作ボックスの職員が経験と勘で位置合わせをするとは驚き、一発でレールを接合するのはまさに職人芸だ。フリーきっぷを買った人は割引料金の200円、この小一時間のツアーはお値打ちだ。

何ともレトロな駅の風情、ここ天竜二俣駅は転車台と機関車扇型車庫はもとより、駅舎本屋、プラットホーム、駅舎から少し離れた運転区の休憩所、高架貯水槽、事務室、浴場なども現役の登録有形文化財なのだ。展示室の中には往年の道具がいっぱい並んでいる。硬券きっぷのフォルダーがずらりと並んだ、あれは何という名前なんだろう。見事にタイムスリップ、何とも懐かしい。

国鉄二俣線は東海道線のバイパスとして建設された路線で歴史は古い。天竜川下流に広がる沖積平野に散在する町を繋ぐとともに、浜名湖の南側を渡る橋梁が破壊される事態も想定というから、軍事施設の色合いもあった路線なのだ。いつも新幹線で走り抜ける海沿いの風景とはだいぶ違った眺めがここにあった。そして掛川からはいつもの高速移動、スピードだけでなく、周りの空気も違うような気にさせる天竜浜名湖鉄道、2時間あまりの旅。なんだ、東京・新大阪間の時間と大差ないぞ。

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