二上山の麓 ~ 歩くてっちゃん
2014/3/16

"60階建て、高さ300m、日本一の超高層ビル、あべのハルカスがオープン"、このところ近鉄電車の車内放送で毎日耳にする。遠くの友だちから「登ってみましたか?」と訊かれて、「そんなん、あほらし。何でお金払ろてまで」と答えたのだが、てっぺんの展望階は結構賑わっているらしい。おかしいなあ、大阪の人間だったらパスするはずなのに。

近鉄阿部野橋駅、地下鉄御堂筋線が通るあびこ筋を挟んだ向かい側はJR天王寺駅、こうしてみると大ターミナルなのだが、キタの梅田やミナミの難波に比べると、余所からわざわざ訪れる人も少なく、いまひとつ影が薄い。首都圏で言えば東京や新宿に対する池袋、あるいは上野という感じか。そばに大きな公園があり、日雇い労働者の人たちが集まる地区もあるあたり、後者とイメージが重なる。

近鉄の本社は上六、つまり近鉄大阪線大阪上本町駅の近くだが、近鉄百貨店の本店は阿倍野、こちらは近鉄南大阪線のターミナル、今は同じ経営の私鉄でも出自が異なる。近鉄の幹線は標準軌なのに、阿部野橋と吉野を結ぶ南大阪線はJRと同じ狭軌。橿原神宮前駅で京都から直通運転している橿原線と接続するが、ゲージが異なるため相互乗入はできない。例えば京都、難波、名古屋から吉野方面に向かうには、橿原神宮前駅、大和八木駅での乗り換えを余儀なくされる。難波、名古屋からだと2回の乗り換えになる(近鉄の特急系統図参照、同社ホームページより)。

社運をかけてあべのハルカスを建てるぐらいなら、親会社の鉄道も阿部野橋駅のパラダイムシフトに舵取りすればいいのにと思う。いちど株主総会に出て意見開陳してもいいかも。

つまり、第1案として、南大阪線の改軌。これを行うと大阪線との相互乗入れが出来るようになる。両線が最も接近するのは二上山の麓、直線でわずか500mぐらいの距離である。ここで大阪線二上駅と南大阪線二上山駅を移設合体させる。そうすると、大阪難波発吉野行とか、阿部野橋発名古屋行・賢島行とかを走らせることができる。いま走っている大阪難波発名古屋行や阿部野橋発吉野行とかと交互に運転し、新二上山駅で同時刻の着発とすればクロスの乗り換えが同じホームで可能になる。となると、駅名も「まほろば二上」ぐらいのほうがいいかも。

例えば阿部野橋(天王寺)から名古屋に行こうとすると、新幹線利用なら新大阪まで乗り換え時間を含め40分程度見込む必要がある。近鉄の新ルートの所要時間と大差ない。天王寺ということは、その先のJR阪和線方面からの需要も見込める。

第2案は、設備投資が膨大になるので改軌を見送り、新駅ルートを現在の標準軌・狭軌のままホーム両側での乗り換えとする案。これでコストは下がる。

第3案は、今も橿原線の新ノ口・大和八木間にあるような特急専用の迂回ルートを敷くという方法、国道165号のバイパスが分かれる穴虫から谷筋沿いに大阪線二上駅に至る支線を敷く。大和八木まで秋田新幹線のような三線軌条にして特急を乗り入れてもよい。

第4案では、二上山あたりで合流するよりも、ちょっと距離は長いが大和八木で合流するようにするというアイディア。南大阪線の高田市駅から東進して葛城川沿いに北上し、大阪線松塚駅付近で合流する線路を敷くという方法。松塚から大和八木を経て橿原神宮前までを三線軌条とする。大阪線から橿原線への連絡線は今はほとんど使われていないが残っていて、大和八木の西側から橿原線の八木西口に通じている。これを復活させるという訳だ。南大阪線の阿倍野橋と吉野間の特急は現在よりも少し迂回になるのが、大和八木で各方面との連絡が可能になるというメリットは大きい。

とまあ、あべのハルカス開業からてっちゃんの妄想に発展したわけで、ついに現地踏査に赴くことになった。と言っても、これは恒例の「酒蔵みてある記」。

問題の近鉄大阪線の二上駅がスタート、田舎の長閑な駅だ。歩き出してすぐに大坂山口神社、ここから丘陵を抜ける緩やかな山道となり抜けたところは南大阪線の二上山駅だ。本当に近い。丘陵を通らず農地を横切ればもっと近い。土地買収が大変だが線路の敷設自体は全く問題ないだろう。やれないことはない。

次のスポットは二上山ふるさと公園(ふたかみパーク)、二上山の麓、道の駅に隣接する公園で盆地を見おろす眺めがよい。ちょうど梅の時期、紅白の梅と金色の蝋梅、広い芝生は目土を入れたばかりのようで、もうすぐ桜が咲く。この日は気温も上昇し、野外でのお弁当も心地よい。

お昼の後は中将姫の墓を経て当麻寺へ向かう。香芝市から葛城市となる。このあたりの軒先にある注連縄は独特の形だ。隅田川沿いのアサヒビールのビル屋上のモニュメントを連想させる。

當麻寺から近鉄当麻寺駅に下る参道沿いに葛城市相撲館けはや座がある。ご当地、當麻蹶速を顕彰するという施設で、館内には本場所と同サイズの土俵がある。入場料が必要なので外からちょっと覗いただけ。前に兵庫県たつの市近郊の山に登った折、野見宿禰の墓に立ち寄ったから、これで対戦相手の両者の墓所に詣ったことになる。もっと相撲館の横の當麻蹶速塚は真偽不明のようだが。

そして大倉本家「金鼓」の酒蔵。今シーズンの近鉄「酒蔵みてある記」、試飲が少なく参加者には不評だが、今回の「金鼓」は粕汁の振舞いにはじまり4種の試飲となかなか好感が持てる。しぶちんだった「黄桜」とは大違い。もっと注いでくれというオッサンにも愛想よくなみなみと。これでなくてはね。おっと、私のことではない。

ゴールは近鉄大阪線の五位堂駅ということになっているが、コースマップには記載されていないJR五位堂駅のほうが近い。そちらに逸れたハイキング客もちらほらと。最近できた駅で田圃の中、溜池の横という田舎を絵に描いたようなロケーションだ。大倉本家のある昔ながらの村と新しい住宅地の混在、五条から快速JR難波行が走っているから、これから住宅も増えていくだろう。てっちゃんは未乗区間のJR和歌山線五位堂駅から王寺駅の区間をクリアし、王寺からは近鉄生駒線で帰路につく。

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