室生古道を歩く ~ ハイキングと言うには…
2014/11/29

3週連続でウォーキング、山登りのトレーニングは山登りに限る。2月から5月まで花粉が飛ぶと山登りどころじゃないし、今のうちという気持ち。まだ近鉄の株主優待乗車証が11月末までの分が1枚残っているし、12月末期限のものもある。榛原から室生古道を歩くことにする。

この駅長お薦めハイキングは駅からスタートする。室生古道の入口の高井までバスの便もあるが、昔を偲んで歩く。今は宇陀市ということになっているが、かつては宇陀郡榛原町、ここが私の生れ故郷。宇陀川を渡ったところの墨坂神社の裏の森に、父親と一緒に竈の焚付けを拾いに行った幼年時代を思い出す。土間の鴨居にはときどき青大将が姿を見せるという古い家だった。今は、もうない。

国道369号線を小一時間歩く。途中の檜牧で御井神社にお参り。墨坂神社は朱色が目立つ鮮やかさなのに、こちらはずいぶん地味な社だ。空模様は降ったりやんだりと相変わらずの雨男ぶり、随時出発なのでよく判らないが、ハイキングの人の数も大したことはなさそうだ。

国道369号線は昔の伊勢本街道、今の近鉄大阪線と並行する初瀬街道とは榛原で分かれる。さらに、高井の集落で伊勢本街道から室生古道が分かれる。榛原の街にも古い宿場の名残があるが、高井の集落も同様の佇まいである。

旧街道筋を離れて少し登ったところに高井の千本杉、名前は大袈裟だけど、10本近くの杉が根本で合体している奇木。推定樹齢600年との由。旧街道筋でもちょっと村はずれ、あまり立ち寄る人もなさそうだ。この巨木と対面しながらお昼ごはんとする。

千本杉に回遊したので本来の室生古道からは少し回り道となった。佛隆寺を目指して丘陵を越える。ひとしきり雨が激しくなったかと思うと、すぐにやむ。どうも妙な天気だ。こんな山間にも棚田が拓かれている。日本の農村の原風景といったところ。緩い登りで民家が尽きたところに佛隆寺の長い石段がある。その石段脇には桜の巨木、花の季節はさぞ素晴らしいことだろう。生れ故郷なのに知らない場所がいっぱいある。今は紅葉真っ盛り。境内の外れ、室生古道沿いに見事な楓。ここから、一気の急登で峠越えの道を辿る。ゆっくりと息が切れないスピードで歩く。もうすぐ峠という頃、後ろから速いペースで登ってくるグループがいる。ここでちょっと意地悪、ギアチェンジしてみる。やはり、マラソンも同じ、追いつくと思ったときに離されるとドッと疲れが出るもの、後ろの声が聞こえなくなった。山は息せき切って登るものではないよ。

あとは室生寺に向けてどんどん下るだけだ。途中の西光寺は枝垂れ桜が本堂に寄り添い、なかなか良い雰囲気だ。さらに下って室生寺は宇陀川の支流の室生川の右岸にある。室生の集落は左岸に広がる。北東に向かって下る途中に地滑り対策の施設が設けられている。確かに、25000分の1地形図で見ると典型的な地滑り地形だ。そもそも室生の集落は昔に崩れ落ちた地盤の上にあるようなもの、山腹をスプーンで掬ってずり下げた感じが地形図から読み取れる。次の災害を防止するために、地盤の境界を流れる地下水を抜く設備が必要なのがよく判る。

さすがに室生寺ともなると全国区、お天気もいまひとつ、午後も遅い時間なのに観光客が溢れている。ここには何度も来ているので、拝観はせず門前から引き返す。これで今回の駅長お薦めハイキングはゴールで、室口大野駅までバスで出ることになっている。でも、30分近く次のバスを待つのもつまらない。東海自然歩道を経由して駅まで歩くことにする。まだ日も暮れないだろう。

室生山上公園芸術の森というのが、集落の西山の中腹にある。ここも地滑り対策の施設を兼ねた公園ということのよう。猪避けのネットフェンスのゲートからしばらく登れば門森峠に達する。登りも下りも石畳の道になっており、日中の雨もあって下りが滑りやすくて難儀する。ようやく室生寺から川沿いに続く車道に出ると、そこから駅まではあと少し、元気を出して歩を進める。こちらも枝垂れ桜が有名な大野寺、対岸の磨崖仏に西日が当たると見事なところだが生憎の曇り空、輪郭がはっきりしない。

予定以上の行程で30km近いロングウォークとなった。最近の山歩きはあまり無理はしないのが習いになっていたのに少し頑張りすぎた。そして、それが思わぬことに。翌日の日曜日に血尿が出たのには吃驚、生まれて初めてのこと。過激な運動が引鉄となって症状が出ることがあるとは聞いていたが、まさかという感じ。そう言えば、天候のせいもあって行程での水分補給も僅かだった。二日後にはこれまた初めて、泌尿器科の門をたたくことになる。やはり、もう若くない。自戒あるのみ。

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